第25話

「先生って、ガムは甘い味じゃないんですね」




差し出してくれたそれを丁重にお断りしながら、以前から思っていたことを口にする。


すると彼は嘲笑にも似た笑いを漏らした後。




「馬鹿か。ちょっとくらい気をつけなきゃ糖尿になるだろうが」




至極真面目な表情で、そんなことを言ってのけた。


残念ながら、ガムをレモン味にしても糖尿になることは免れない気がする。


飲み物も食べ物もあれだけ甘いんだから、ガムだけに気を使っても無駄だと思う。


言わないけど。




「……そうですか」



「なんだその可哀想なものを見る目は」



「いえ、別に」




この話題は危険だと察知し、視線を先生の机を囲んでいる問題児たちに移す。


わいわいと何を話しているのかと思えば。




「えー?机移動させるんじゃないのー?」



「だから、移動させる必要なんて無いっつってんだろーが」



「じゃあどこを調べようってんだよ~」




机を移動させるかさせないかについて。


私も机を移動させた方がいいんじゃないかと思うけれど、綾の考えはそれではないらしく。




「バカかオメーら。机調べるっつったら引き出ししかねーだろ」




………何故。


引き出しを調べてどうしようっていうんだ。


え、裏ルート探してるんじゃなかったの?


私が皐月先生と話している間に趣旨が変わったの?

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