第24話

もうそろそろ諦めてもいいんじゃないだろうか。


薄っすらとそんなことを思った時、「お!」と声を上げて綾がベッドからがばっと起き上がった。




「リョー君何か見つけたのー?」



「いや、肝心な場所を調べてねぇじゃねーか」




肝心な場所?


こてんと首を傾げていれば、ズカズカとある場所に向かって直進する綾。


そのある場所というのが。




「うおっ、急に寄ってくんな気持ち悪い」




皐月先生の机。


…何故?




「綾ちゃんよ~、それのどこが『肝心な場所』なんだよ~」




たるたると、全くヤル気の感じられない動きで奏もそこに近付いていく。


まぁもしかしたら本当に何かあるかもしれないし、と私と優斗も後を追うように皐月先生の机に近付いた。




「なんなんだお前らは」




ぎゅっと眉間に皺を寄せる皐月先生は心底迷惑そうだ。


それでも調べやすいようにイスから立ち上がって退いてくれるあたり、先生も人がいいと思う。


動いた時に彼の白衣がふわりと翻って、やっぱり甘い薫りがした。


薬品の匂いが一切しないことが不思議でならない。


というか、違和感を感じてならない。


白衣を見るとどうしても消毒液の匂いを思い出してしまう。




「言っとくけど、机の上の書類には触んなよ」




言いながら、ポケットからするりと取り出したのはいつかと同じレモンガム。


それをぱくっと口に入れて、私にも「食うか?」と勧めてくれた。

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