第9話

どこかにスイッチがあるんじゃないかとか、叩き方にコツがあるんじゃないかとか、色々と試してみるけれど。




「どこも開かないねー」




一向に隠し扉なるものが現れる気配は無い。




「なー、面倒クセーから生徒会室側から開かずの扉開けてみようぜ」




今まで誰一人としてドアノブにさえ触れてこなかったあの扉を、綾は開けてみようと提案する。


それで気が済むのなら試してみればいいと思うけど。




「へ、変なものとか入ってないわよね…?」




恐る恐る、誰にともなく聞いてみる。


それに口を開いたのは、私の隣で事を見守っていた昴で。




「怖いのか?」




首を僅かに傾げて、じっと私と視線を絡ませる。


その瞬間に自覚した恋情が顔を出して、ドクリと大きく心臓が跳ねた。




「だ、だって、ずっと誰も開けてなかったし…っ」




感情を押し込めようと、必死になって言葉を紡ぐ。


そんな私の背後で陽平のくすくす笑う声が聞こえて、たちが悪いと心の中で悪態を吐く。




「別に変なモンは入ってないと思うぞ。怖いなら瞳は近付かなければいいしな」




私の胸の内なんて知りもしないのであろう彼は、さらりと私の頭を撫でる。


ダメだ、色んな意味でもういっぱいいっぱいだ。


こくこくと懸命に頷いて、大丈夫だということをアピールする。


昴の手が離れたのと同時に、その場にへたり込みそうになってしまった。




「よし、じゃあいったん生徒会室に戻ろうか」




そう言って、陽平がみんなを促してくれる。


こういう時の彼のフォローには、本当に助けられる。


陽平とすれ違う時小さく「ありがとう」とお礼を言えば、彼も「どういたしまして」と返してくれた。

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