第3話 クラウン


「うぉーい、水汲んできたぞ!」

 とガイツよりも大きな人が森の中から出てきた。

「あ、ボイド!こっちにお願いね」

“ドスンッ”と二つの樽を肩から下ろす。

「ふぅ、ん?誰だ?」

 と私の方を見ていうので、

「レイと言います」

「訳あって1人らしいから森を抜けるまで一緒に行く事になったわ」

「そうか、ボイドだ。よろしくな」

 ボイドは傷だらけだが、笑っている。

「『ヒール』」

「うぉ、回復?凄いな」

「これしか出来ないですけど」

「ありがとう、レイ」

 お礼を言われると照れてしまう。


 するとスルリと木から降りてきた男。

「ヨッと、オイラはフェイトだね、よろしくレイちゃん」

 と木から降りてきたのはフェイト、帽子を被って荷物はカバンを肩からかけている、少し線の細い変わった男の人。

「フェイト、年上よ?聞こえてたんでしょ?」

「あはは、べつにイイじゃんかね」

「いいですよ、よろしくお願いします」

 とみんなに挨拶が出来た。


「バラしたぞー、これも食うのか?」

「あ、足りなかったらどうぞ」

「よし!食うぞ!」

 とガイツがバラしたファングボアを火にかける。

 牙や魔石?という綺麗な石は返してくれて、お金になるそうだからインベントリに入れておく。



 ご飯を食べながら話は私の話になる。

「へぇ、その男を追ってここまで来たのか?」

「はい、一発叩いてやりたくて」

「あはは、こんな可愛い子を置いて行くなんてな」

 とガイツが言うと肉を食っているみんなも頷き、少し恥ずかしくなる。

「見つけたらどうするの?よりを戻すの?」

「それはないです。引っ叩いて終わりです」

 とピシャリと言う。

「あはは、そりゃそうよね」

 とカヤが笑うとみんなも笑ってくれた。


 みんなは『クラウン』と言うパーティーで、ここで寝泊まりしながら狩りを続けていたらしい。

 そろそろ帰ろうと思っていたところに私が来たようで運が良かったらしい。


「んじゃ、出発するか!」

「はい」


 前衛にフェイトとボイド、真ん中に私とカヤ、最後尾にガイツで進んでいく。


「いやぁ、悪いね。俺らの荷物までアイテムボックスに入れてもらって」

「いいですよ、私は荷物持ちで」

「コレならまだ狩るコトが出来たね」

 と獲物を探すフェイト。

「フェイト、あまり調子に乗ると痛い目に遭うわよ?」

「ダイジョブ、大丈夫」

 フェイトは独特な喋り方だなぁ。


 森は続くが、みんながいるから安心していると、ファングボアが出て来る。

「あらヨット」

 フェイトが、目潰しを投げつけると目標を失ったファングボアは木に突進して倒れるのでそれをガイツが大剣で斬りさく。

「こ、こんな簡単に?」

「あはは、ファングボアは目さえ潰せばあとは簡単なのよ」

 カヤが言う。

 ガイツは早速血抜きをしている。


 タメになるなぁ。


 これなら私にも倒せそうだ。

 ボアをインベントリに入れてまだ先に進む。


 足が棒になるくらい歩いたが、

「ヨシ、森を出たぞ」

「や、やったぁ!」

 森を抜けると広がる草原に道が見える。

「今回も無事に帰って来れたわね」

「あんまり気を抜いてホーンラビットなんかにやられるなよ?」

「当たり前でしょ?」

 ガイツとカヤが喋っている。


 道に出るとようやく一安心出来た。

 そして右に向かって歩き出すと壁が見える。

「あそこが街よ。イオラの街」

「イオラの街ね。どんなところか楽しみね」

 街に近づくと堀があり、橋になっている。


「あら、今日はちゃんと仕事してるわね」

「ん?あぁ、『クラウン』か、あと誰だ?」

 と兵士の格好をしたおじさんが門に立っている。

「あ、レイと言います」

「冒険者証はあるか?」

 そんなものは持っていない。

「ないですね」

「他に証明書は?」

 そんなものも持ってるわけがない。

「ありません」

「私達がギルドに連れてくわよ」

 カヤが言うと、

「それならさっさと行って作ってこい。特別だ」

 と門を通してくれるらしい。


「あ、ありがとうございます」

「いいさ、何かあったら『クラウン』が責任とればいいだけだからな」

「はぁ、分かってるよ」

 ガイツもそう言ってくれ、門をくぐるとそこは中世のような街並みで石畳に馬車が通っている。人も多いわね。

「レイ、ギルドに行きましょう?先に身分証を作った方がいいわ」

「はい」

 石畳の道を真っ直ぐに進むと、冒険者ギルドと書いてある看板が見える。


 ようやく人のいる街に着いた私は疲れてしまっていたが、あと一踏ん張りね。

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