激安通販サイトで異世界に行くチケットを買ったら
あに
第1話 異世界チケット
「異世界に行くから別れてくれ」
そう言われたのは結婚も考えていた最中の出来事だ。
「はぁ?」
唐突な申し出に変な声が出る。
「いや、だから俺に取って異世界に行く事は夢だったんだ!それが叶うんだよ!」
“パンッ!”
「貴方がそんなに考え無しの人だとは思わなかったわ」
と席を立つと水を掛ける。
「頭冷やしなさい?」
「ふん、これくらい『GEMU』で買ったチケットがあるから我慢できる」
『GEMU』?
あの激安通販サイトのこと?
どこまでも呆れて私はその場を後にした。
それから数日で全てが本当だと言うことがわかった。
行方不明の人が何名かテレビのニュースになり、その中に私の恋人もいた。
「は?うそ……」
私は思い出していた。
『『GEMU』で買ったチケットがある』
確かにそう言っていた。
「『GEMU』ね……信用出来ないけど」
これしか手掛かりがないのだ。
私は激安通販サイト『GEMU』を開いて『異世界』を検索する。
ヒカルキノコの置物やコスプレ道具が出て来るがスマホを下にスクロールして行くと、
『異世界チケット』
とだけ書いたものが売っている。
激安通販サイトにしては高い一万円だが、『残り一つ』だったのでPayで買う。
そうするとその品物はサイトから消えてしまったようだ。
まさか本当に?
私は半信半疑でチケットの到着を待つ。
その間に警察が来て事情を知らないかと聞かれたが、私は答えられなかった。
だって馬鹿げた話だから話しても一緒だもの。
家族は地元に住んでいるので月に一度電話で話すくらいだ。
まぁ、今の彼氏と結婚するつもりだったので安心していたが、こんな事になるなんて。
私はそれから出来るだけサバイバルの道具を揃えてみたが本当に『異世界』?なんてあるのか分からない。
もしかしたら無人の孤島にご招待かも知れない。
「これであいつの言ってたように異世界に行けるとしたら」
私はあいつを追いかけて何がしたいのだろう?
好きはとうに過ぎて、情に変わっていた。
結婚して子供を産み、母親になるんだとばかり思っていた矢先にこんなことになった。
もう、あんな男に未練はないが、もう一度顔を引っ叩いてやりたくなった。
私達の5年間は何だったのかと。
私は普通の思考じゃ無くなっていた。
2人で貯めた結婚資金に手を出して、いろんな物を大量に買って行く。
だって異世界にいったら何があるか分からないでしょ?
貯金も下ろし、サバイバルに特化した服装に着替え、大量のバッグに詰めるだけ詰め込んだ。
その数七袋の大容量バッグだ。
そして、その日、私は異世界のチケットを手にした。
「こんなピラピラのチケット?」
虹色に輝くチケット、プリントアウトされた紛い物に違いない。
「あ、あぁ……」
私は1人全てを無くし、そのチケットを見つめ、何てバカなことをしたのだと後悔したが、もう取り返しはつかない。
それもこれもあの男のせいだが、これじゃ見つけることもできない。
チケットを持つと破り捨てようと力を入れるが何故か破けないチケット。
「チケットまでバカにしてる!」
私は点線のある場所を破る。
いきなり眩暈がしたかと思うと、
「……こ、ここ、どこ?」
私がいた場所はアパートの部屋の中だったはずだが、周りを見渡すと石造りの部屋?の中に私はいた。
私は立ち上がるとテーブルの上に手紙があることに気づく。
『この度は異世界チケットにて異世界に来ていただき感謝しています。虹色のチケットのアナタにだけ、特別なスキルをご用意しておりますので『ステータスオープン』と言って確認をお願いします。それでは良き旅を』
周りを見渡す。
私が揃えたバッグは全部持って来れたようだ。
「す、『ステータスオープン』」
ーーー
レベル0
ジョブ 聖女
スキル 聖魔法(ヒール、ハイヒール)
ユニーク インベントリ
スキル取得値増加
ーーー
「私の名前……歳まで……昔やってたゲームと同じ?」
私も小さな頃はゲームくらいやったことはある。
久しぶりに思い出したが、ヒールは回復よね?インベントリは?
「インベントリ」
目の前に穴が空いている。
恐る恐る手を入れてみるが、中に入るだけのようだ。
「あぁ、インベントリね」
保管されている物のリストや明細って意味だとここに保管出来るってことね。
私のバッグを入れると頭の中にリストが出て来る。
へぇ、使い勝手がいいわね。
「よし!全部荷物入れたし、異世界ってのが、どんなところか見てやろうじゃないの!」
と階段があるので登ろうとするが、紙が貼ってあり、
『この世界の地図と服や武器も用意してありますのでお使いください』
周りを見渡すと、クローゼットのような物があったので近寄って開く。
杖のような物と着るものが二着。どちらもサバイバルには向いてないような気がする。
あとは地図が入っていたので確認すると今いる場所が光っている。
「へぇ、森の中にいるのね。北に行けば抜けられそう」
ありがたく地図と服や杖をインベントリにしまい、サバイバルナイフや剣鉈を取り出して振ってみる。
やはりこちらの方が性に合ってる。
「さて、行きますか」
私は異世界に来てしまったのだ。
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