Over & Over -時を超え、選び直す-
うしご
プロローグ〜誰かの終わり、誰かの始まり〜
「もし、やり直せるとしたら――あなたは、過去を選びなおしますか?」
???「……もう、この星は死んでいる」
ぼそりと呟いた虎獣人の足元には、荒れ果てた大地が広がっていた。
地平線の果てまで干上がった土が続き、かつて命が謳歌していた景色はどこにもなかった。
街の賑わいも、新緑の香りも、澄み渡る青空さえも――すべては過去のものとなった。
今はただ、生暖かい風が砂塵を巻き上げ、静かに吹き続けている。
虎獣人「……俺は、どこで間違えちまったんだろうな」
彼の囁くような小さな声に返事をするものはもういない。
無気力に立ち尽くす虎獣人の瞳に光はなく、ただ虚無だけが宿っている。だらりと垂れた右手からは、鈍く銀色に輝く、傷だらけの懐中時計が今にも落ちそうになっていた。
突如、強い風が吹き荒れ、砂嵐により彼の輪郭がかき消される。視界は奪われ、世界は音を失ったかのように思えた。
やがて風が止み、再び姿を現した時――彼の瞳には、微かに光が宿っていた。
虎獣人「……やり直せるのか?」
その言葉と共に、冷え切っていた心にわずかな熱が宿り始め、心臓が力強く脈を打つ音が聞こえた。
彼は落ちかけていた懐中時計を今度は強く握りしめた。
虎獣人「可能性があるなら代償なんて何でもくれてやる!俺を過去に戻してくれ!」
その叫びに応えるかのように懐中時計が激しく輝きだした。
秒針が狂ったように逆回転を始め、周囲の景色がぐにゃりと歪む。
やがて、世界そのものが静止したかのように時の流れが極端に遅くなった。
次の瞬間――
爆発したかのようなまばゆい光が荒れ果てた大地を一気に包み込んだ。
光が収まると、先ほどの虎獣人の姿はなく、乾いた風の音だけが痩せた大地に空しく吹き抜けていた。
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