第16話 真実は一つ を、空間ベクトルで

真実は一つだ!

 ちょっと、ドラマ風に言ってみました。その趣旨は、こうです。


 三次元空間のどこかにある、ひとつの点。

 それを「真実」と仮定します。明らかに、一点に絞られますね。

 さあ、問題はここから。あなたに問題です。

「空間上の点につき、矢印を一つ「だけ」使って、それを示してください。

 なお、ここはあえて二次元の座標で表しておくので、それにどうぞ。


 はい、それで結構です。別に間違いでは、ありません。

 でも、平面に直した状態で矢印をつけましたね。私が言ったからだけど。

 ま、そこはいいや。では私も、矢印をつけましょう。あなたの向い側から。

 ほら。


 どうでしょうか?

 あなたの矢印、間違っています。

 私はあなたに、そう言いました。

 でもあなただって言いたくもなるし、間違いなくおっしゃることでしょう。

「あなたの矢印こそ、間違っているのではないか!」


 そこへ、別の人がやってきました。

「あなたたちねぇ、何処にでも矢印すればいいってものではありませんよ」

 その人は、この方向に矢印をつけました。

 もう一人の方は、「それでも間違いではないが、こうでしょうが!」 ってことで、

 こんなん、つきましたけど。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


Q 同じ点を示すだけなのに、なんでこんなにいくつも矢印が?

A そんなの簡単じゃないですか。

 同じ点でも、見る方向で違って見えるってことですよ。

 この点はたまたま同じ形かもしれないけど、その点を4つに色分けされていたらどうなるかなって、ちょっと考えてみれば、わかるでしょう。

 あなたは、その点を赤だといった。私は、白だといった。そこであなたは私に、あんたは政府の犬かという。私はあなたに、なにを言うかこの「アカ」がと。

 何だか20世紀前半の体制派と反体制派みたいなやりとりになりましたね。


Q ところで、真実、というか、点はひとつじゃなかったでしたっけ?

 何で、そんな争いが生まれるのかなぁ?

A それも簡単な話ですよ。

 同じものでも、視点が違えば別のものに見える、ってこと。

 ただそれだけのこと。それが原因で、そのようなやり取りが生まれてしまうのですよ。こういう争い、何処でもよくあるじゃないですか。みんなが同じ地点からその点に矢印を打つなら、それはそれで争いがない状態かもしれませんけど、そういう世の中がいいかと言われたら、どうかな?

 何だか、危険な世の中の話だと思うの、私だけかなぁ?


 ついでに申し上げておきましょうか。このことを通して、矢印は、決して万能ではないってことの証明にもなりましたよね。

 物事を一面から、同じ方向からだけ見ることが、いかに危険か、ってこと。


 ←って、確かに効果的な記号です。

 でもそれゆえの怖さも、この演習で御理解いただけたと思います。

 おいかがでしょうか?

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