矢印はすでに、独り歩きをしているのです。
第2話 矢印は独り歩きする。否、すでにしている。
以前地元の出版社から書籍を出版していただいたことがありましたが、それに先立つこと数年前、その出版社、岡山の吉備人(きびと)出版の山川隆之代表から言われた言葉を御紹介しましょう。
「本は、(出版された後)著者の手を離れて独り歩きしていきます」
この言葉の真意は、書かれたものは書いた者の意思や意図を超えて人々の間に入っていくという趣旨です。それを言うなら、切取られた言葉なんかもそうだろうということになりましょう。そうですね、ちょくちょく出る報道を見ていればそのことが肌身でご理解いただけるかと。
さて、いちいち誰かが切取ることもなく、必死こいて本に仕立て上げなくても、否、必死に書きまとめたりしなくても!
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は、独り歩きをしていきます。否、既に独り歩きしているのです。
我々は、その独り歩きしている矢印を形にすることによって、その役割を明らかにしているだけなのですよ。
先だって私はそのようなことを書きましたが、矢印というものには目に見えるものばかりではなく見えないものもあると書きましたが、ではなぜ、見えるものと見えないものがあるのかという疑問に挑んでみましょうか。
その答えは、こう。
本来目に見えない動きも見える動きも、そのすべてを示す行為の方向を、場合によっては長さをも含めて、簡かつ明に示す役割を追う記号であるから。
もっと言うなら、その行為というのは目に見えるものばかりではない。また、正面切って向きを書いた(描いた)ものとして存在してないものであっても、そこの関係性を見るからに、実は矢印が潜み隠れているような事例もまたあるのである。
あるのであると言ったら、あるのである。
↑ なんだか国鉄時代の労組のスト権ストみたいだけど、そうなのだ。
うん、これで、いいのだ。
だんだんまた昭和の50年前後になってきましたな。もう半世紀も経っていますからねぇ。いつぞやのプリキュアのオシマイダー・猛オシマイダーどころか、もうとっくにオワッテルダーなお話だけど、あえてここで、マブくも復活の巻。
いまをさかのぼること数万年の昔、現在の欧州におられた我が人類の御先祖様であるところのクロマニヨン人は、ラスコーやアルタミラの洞窟に壁画を残しておいでであります。その頃矢印って概念は、なかったでしょうな。であるから、絵というものを遺した。絵は絵として、芸術の世界では尊ばれて今に至っておりますが、何でもかんでもタイガース、もとい、何でもかんでも絵でえ~わと、そんなわけにもいかない。そこで登場したのが、文字。文字だけではということでさらに抽象化したものが記号。
その記号の中でも、飛び抜けてのユーティリティープレイヤー。それが矢印。
野球でもプロ=職業ともなれば、そんな選手はまずいません。
複数ポジションを守れる選手がいれば、9ないし10全部のポジションを守れなくてもユーティリティー扱です(わざわざ1試合で全部やった人もいるけどね)。 福岡にあった西鉄ライオンズの河野昭修選手や、同じく福岡のライオンズから後に阪神に移った真弓昭信選手もそのクチですね。だけど、この矢印という記号は、河野選手や真弓選手など足元にも及ばぬユーティリティープレイヤーなのです。
真弓選手のようにミッキーマウスのマーチに合せて外野席の阪神応援団に真弓ダンスを踊ってもらえるような熱狂的な人気を持っているわけではないが、西鉄の河野選手など足元にも及ばぬシブいいぶし銀の活躍を、矢印は見せてくれています。
いつでも、だれにでも、どこにでも!
およそ人のいるところ、どこにも潜み、そしていざとなったら出て来る記号。
矢印はもう、独り歩きしているのです。あなたが書いたその矢印、実は、独り歩きしているどこかの矢印にお出まし願ったってことになるのですぞ。
そしてこの矢印、大きさ長さ太さその他、変幻自在と来ております。
次回は、そこについて述べてみますね。
へびのあし
この作品群、当面、丑三つ時の午前2時30分に毎日更新で参ります。
~ 別にお化けに向けて退散を求めているわけでもないよ。
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