第24話 ヨーヨー

甲高い音を発しながらこちらに襲いかかる丸鋸。

銀之助はなんとか回避するもまるで反撃の余地が無い。

ヨーベイガーの腕は鞭のようにしなるだけでなく、腕のワイヤーが固まり直角にもどんな角度にも曲がるため予測が困難である。

こんなんやってられへんで。

こんなんだけに。


〚銀之助選手!!!ヨーベイガー選手の丸鋸を避けるので精一杯かぁー!!??!〛


(やかましいんじゃボケ!!!こっちの立場になったら絶対そんなふざけた事言われへんからな!!!)


「避けるだけかよ地球人ッッッ!!!ネズミみたいにちょこまかウザったらしいぞッッッ!!!」


より一層激しくなる丸鋸鞭。

少しずつ髪の毛や服が刻まれていく。


「クソッッッ!!!スピードが増して来やがった!!!」


「や…やべぇぞ銀之助…!!!あのままじゃ真っ二つになっちまう!!!」


「アレを避け続けるのは難しいだろうな。体力もそう無限にある訳じゃねぇ。魔力を集中させても限界がある。エリートの僕でさえどこまで対応できるか…。」


「………なんかお前随分と丸くなったよなぁ。この前までなら「ま!エリートの僕なら余裕だけどね。フンガフンガ」て言ってただろうに。」


「うるせぇよ!!!じゃあなんだ!?前みたいな切れるナイフと呼ばれたボーナ様がご所望かコラオイッッッ!???!」


そう叫びながら追加注文したクランベリーパイを頬張る。これで18個目。食いすぎ。

ていうか切れたナイフて普通じゃねぇか。

やはりどこか抜けているボーナ様であった。

クエスチョナーとボーナが心配する矢先、銀之助は何か戦いの中で違和感を覚え始めていた。


(なんか…なんかおかしい…。なんか引っかかる…。なんや…?この違和感…。)


「どうだぁぁぁ!!!俺様は強いんだ!!!決して弱小異星人なんかじゃねぇんだよッッッ!!!」


ヨーベイガーが縦一文字に切り裂こうとしたのか垂直に丸鋸を振りかざす。

銀之助は対応できないのかそれを眺めるのみ。

観客がこれから起こるであろう惨劇に口を覆った。

しかしその時。


ガァァァァァァァァァァンッッッ!!!!!!


「なっ………!!!!!!テ、テメェ!!!」


「やっぱりな…。なぁ〜んかおかしいて思ったんや。お前これ…丸鋸ちゃうやんけッッッッッッ!!!!!!」


ヨーベイガーの腕は横から蹴り飛ばされそのままリングに突き刺さった。

そう、先程から猛スピードで回転し連撃をお見舞いすることで遠くから見ていた観客は気付かなかった。

しかし目の前で戦っていた銀之助は気づいたのだ。

これは丸鋸ではない。

【ヨーヨー】であると。

丸鋸はそれ自体が回転しているので例え横から打撃を加えてもこちらにダメージが返って来る。

しかりヨーヨーであれば、回転さているのは真ん中の刃の部分だけ。

まるでハンバーガーのようにサンドされた上下自体はそのままである。

なのでその蓋部分を蹴り飛ばしたところで返って来るダメージは知れている。

ヨーベイガーは突き刺さったヨーヨーをどうにか引っ張ろうとするも完全に刃がリングに食い込み言う事が効かない。

もう片方の腕で銀之助に向けるも先程の二本腕と比べ回避はまだしやすい。

一気に後ろに回り込まれたヨーベイガー。

銀之助は何をするつもりなのか。


「持ち上げんのが無理やったら…!!!押し倒したらええんじゃッッッ!!!」


ヨーベイガーの足に発勁をかけた後、後頭部を腕と右膝を突き立てる。

そして相手の体重を利用し完成する技を繰り出した!


「カーフ・ブランディングッッッッッッ!!!」


「ウオオォッッッ!??!!」


ドザァァァッッッ!!!


ヨーベイガーは軽く1tある自身の体重をもろにリングにぶつけた。

砂煙が舞う中、銀之助は次の技に移行する。

ヨーベイガーの足に跨りそのまま膝を折り曲げた。


「これぞ銀之助式!!!逆エビ固めよッッッ!!!」


グギィィィッッッ!!!


「ウガッッッ!!!」


逆エビ固め。

またの名をボストンクラブ。

ヨーベイガーは痛いのか顔に脂汗が流れ始めた。

機械みたいな見た目してんのにね。


「どないじゃ!!!どうやらお前足は腕みたいに曲がらんみたいやの!!!」


「グゥゥゥ…!!!な、なめてんじゃねぇぞクソ地球…人がよぉ…!!!」


「オラァァァッッッ!!!」


「ガァァァァァッッッッッ!!!」


一気に仕掛けるつもりだ。

徐々にではなくいっぺんに負荷をかける。

このままでは足が壊れこの先の人生に影響が出てしまう。本来ならばここでギブアップするのが正しいのだが…。


「さっさとギブアップしろ!!!ホンマに足壊れてまうぞ!!!そんなんしたないんや!!!」


「なめ…てんじゃねぇよ…!!!地球人ごときにここまでコケにされて…タダで負けてたまるかクソが…!!!俺は…強ぇ…、弱くねぇ!!!強いんだクソッタレがぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!」


「なんでお前そんなに強さにこだわっとるんや…。………ウワッッッッッッッッッ!!!!!」


力任せにリングの一部ごと引き抜いた腕と片方の腕で銀之助に狙いを定めるヨーベイガー。

レンガのようなリングの一部に殴られるか、それともヨーヨーで切り刻まれるか。なんにせよたまったものではない。

もう少しで勝負を決められそうであるがそんな事言ってられずすぐさまその場から離れる銀之助。


「ハァ…ハァ…!!!バカにしやがって〜!!!」


ボガンッッッ!!!


ヨーヨーをぶつけ、片手にくっついていたリングをぶっ壊す。

そしてまた腕を構えたと思いきや、お次は足を変形させコマのような姿に。

そして体ごと思いっきり回転させ始めた!!!


「なっ………なんちゅうスピード…。」


「喰らえやッッッッッッッッッ!!!ヨーベイガー奥義!!!ブレードベイタイフーンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ゴオオオオオオオオオォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ザシュバァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


銀之助は胸を横一文字に切り裂かれ、竜巻のような渦で空高く弾き飛ばされた。


「ゴブッッッッッッ」


「ぎ、銀之助ーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」

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