20「ある雨の日に」
その日は朝から大雨が振り続いていた。
俺は山荘のバルコニーに出て空を見上げる。
「こんな日もあるか……」
すぐに天候は回復しそうにない。
小川は荒れ狂っているだろう。天気が悪くなりそうだったので、昨日のうちに採取の皿は全て回収していた。
「金の生産もお休みだな」
軒下のベーコンとハムも収納済みだ。
こんな時だから前から考えていた作業を進めることにした。
「洗濯用の水車を作るか」
現状は川で手洗いや、風呂を使っての水元素渦巻き法で洗っている。もっと手軽に少量洗える楽な方法はないかと考えていた。
開拓地や村などでイモ洗いなどにも利用されている、洗濯洗浄水車を見たことがある。
山荘の軒下バルコニーで作業を開始する。
まずは先日収集した竹を何本か出し、適当な長さに切る。内部を貫通し、切り口に切れ目を入れ接続できるようした。
これで水を洗濯
続いて収納していた植物
薄い板を何枚も作り上下に穴を開け、そこに細い竹ひごを通して円錐形に組み
俺は小川のどこに設置するかをイメージしながら制作した。初めてにしては上出来な完成度だ。強度も十分だろう。
「ぴったりだな。サイズも一人暮らしにはちょうどいい」
上流に取水口を作って一メートルほどの落差まで流れを誘導する。この籠の中に入れて水流を作り、そこに汚れ物を入れとけば自動で洗濯ができる。
「パイプが少し足りないかな。もう少し作っておくか」
午後は地下の図書スペースで、農村でよく利用される錬金術やら道具の書物を読んだ。
水車は粉ヒキや揚水など様々な用途に利用されている。
制作は水車職人と大工等が行い、錬金術師は魔石をエネルギーとした補助動力装置などの分野で参加する。水が少ない場合でも水車に力を加えて作動させるのだ。
生活の便利雑貨は錬金術の力よりアイディアが重要なのはよくわかる。
この洗濯洗浄水車の制作に、錬金術は素材収納の
開拓地での生活ぶりや、様々な農機具の紹介。どのような作物をどのように植えていくか。保存食の作り方などが詳しく書かれている。
その中の一つに養蜂の記述があった。
「そうだ……。なんで今まで気がつかなかったんだ。蜂蜜だ」
夕刻、小雨になってきたので小川を見に行く。思ったとおり水かさが一メートルは増し、激流となっていた。
「明日は掃除しなくちゃ。今日は、風呂はだめだ」
風呂も泥水の流れに飲み込まれている。
「洗濯水車を置く場所は要検討だな」
明日になれば、河原の地形が変わっているかもしれない。
山荘に戻って、本日はシャワーとする。
夕食はよく知らない料理、【お好き焼き】を作ることにした。
レシピはフーゴから記録を再生し、確認してから調理に入る。
具材は何でもいいなどと、かなりいいかげんなので、こちらもいいかげんに色々と用意した。
千切りベーコン、葉物野菜とタケノコを千切りに。すりおろしたイモにキノコも入れる。
小麦粉を水でといて具を全てぶち込み、油をひいたフライパンで焼くだけだ。それに専用ソースをたっぷりとかける。
「うん。美味いじゃないか」
ワインが切れたので二枚目を焼きながら、地下のワインセラーに補給に行く。
俺はぞんざいに高級ワインを一本抜いた。
「帝都に戻ったらワインを仕入れて、空いた棚を塞ぐか。百年後にここに来た客人に、百年物のワインも用意したいしな」
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