第202話 とある未来
♦♢♦♢数百年後のとあるシーン♦♢♦♢
ヤマトが今いる時代から、ずっと先の世界。
かつて、その世界はヤマトが死亡した後、地上界に攻めてきた”はじまりの精霊”によって破壊の限りを尽くされ、そしてヤマトの子供達が必死の抵抗を続けている世界線だった。
しかし、今は違う。
地上にある各国は依然として健在であり、各国は滅びることなく大量の生産と消費を繰り返していた。そのサイクルは、国全体を大きくすることは間違いなく、見た目 何も心配がないように見えた。
その中でも、龍人族であり建国を成し遂げた”とある王国”があった。それは新王国でもあり、世界の王国を従える覇王国家であった。
世界最大の王国……。さぞかし、絢爛と栄華を相手にダンスをしている王国かと思われたが……。
その中にいる国民は、すべて悲壮な表情を浮かべていた。
王都の中心にある酒場では、愚痴を言い合う住人が溜息を吐く。
まるで、お通夜のような雰囲気だ。
酒場は満席であり、その奥にある5人がけテーブルには男たちが一日の疲れを酒で洗いながしていた。
一人の男が呟く。
「ヤマト王は変った。」
それに同調するように、もう一人の男が頷く。
「あのような善王が、なぜ……。」
「聞いたか?また、王国内にある美女数十人がヤマト王へ献上されたらしいぞ。」
「まじかよ……。これじゃ、この王国内の女がすべて居なくなるぞ。」
「全員孕まされるって話だぜ。色欲の塊だぜ。」
「しかも、税金は稼ぎの半分以上だ……。これじゃ、この酒も月に一回がやっとだ。」
「これじゃ、魔王に支配されているのと同じだぞ。」
「し!誰かに聞こえたら、不敬罪で殺されるぞ……。」
栄華を極めたヤマトの王国は、今や悪王と成り下がったヤマト王によって搾取されるだけの存在に成り下がっていた。
ヤマト王は、すべての敵を排除して。魔王や”はじまりの精霊”を倒した。
すべてのコアを吸収したヤマトは、最強の力を手に入れた。
こうなると、神や悪魔達はヤマトに手を出すことを諦めてた。
地上界不介入の原則にそって、神界・魔界は地上界へ降り立つことは無くなったのだ。
世界の平和は守られた。
人々は、救世主の誕生に歓喜した。
ヤマト王は、自国の王国を良くするために寝る間を惜しんで働いた。
ヤマト王が目指す王国は、”差別のない。誰もが平等に生きられる王国”だった。
その理念は、世界に受け入れられ、ヤマト王が建国した王国には、大勢の人々が集まった。その種族はさまざまで、多種多様な種族で構成された。
この地上界において種族差別、人権が保護された最高の国家となったのだ。
エルフ族王国、人族の王国、ドワーフ王国、龍王国は、ヤマトの王国に従った。
強力な王によって治められた世界は、各国の戦争を撲滅した。
それは強制や暴力によるものではない、ヤマトというリーダーを得た地上界が自然と各国が平和を愛するムードになったのだ。
世界平和と、慈愛に満ちた世界が構築されていくかに見えた。
しかし、とある事件を皮切りに全てが変わった。
ヤマト王が、病に倒れたのだ。
風の噂によると、ヤマト王は膨大な魔力とコアを吸収したことによりに肉体が崩壊しかかっているとのことだった。
1年後。ヤマト王が復活した。
人々は安堵した。
「これで世界の平和が持続する。」と……。
しかし、ヤマト王は以前の優しい善王ではなくなっていた。
まず行ったのは、ヤマト王の妻への”粛清”である。王妃をすべて「王への反逆罪」として牢獄に入れて、すべて死刑に処した。
この事件に、世界が驚いた。
ヤマト王は王妃を大事にする妻想いの一面で知られていたからだ。それを死刑にまで追い込むなど有り得ないことだったからだ。
その後から、ヤマト王の暴虐王としての政治がはじまった。
まず、税は例年の10倍。
不作や凶作であっても容赦なく税を取り立てていくやり方は、以前のヤマト王とは違った。
すべての法や規則は、ヤマト王に都合の良いものに改定された。
まず、各領地は5割以上が王領としての強制没収。他国からの輸入税は50%という異常な税率。そして、エルフ王国などの他国からは”平和安全経費”として、法外な金額を納めさせた。
これには他国の王も黙ってはいない。
このヤマト王には、数十人の王子と王女たちがいたが、これらヤマトの子供達と結託してヤマト王へ向けて一斉に蜂起した。
ヤマトの王国と、世界の全面戦争になったのだ。
しかし、戦争をしかけたが、神や悪魔……ましてや”はじまりの精霊”をも倒せるヤマト王に敵うはずがない。
ヤマトの子供達は、すさまじい戦闘能力とスキル持ちが多かったが、すべて殺された。結果として、数年に及ぶ戦争の結果、すべての国は敗北。ヤマトの王国へ属国として組み入れられることとなった。
ヤマトは世界を力によって征服したのだった。
征服したヤマト王の悪逆はすさまじかった。すべての言論や思想は、押さえつけられ。富はすべてヤマト王によって奪われた。
「ヤマト王は悪魔に憑りつかれたのでは?いや……悪魔のほうがもっと優しい。」と、思われるほどだ。
贅の限りを尽くした王宮、酒池肉林を体現したような生活。そのために世界中の美女を、自らの性奴隷として集め。そして弄んだ。
当然、ヤマトの子を孕む女が大勢いたが、「反逆の芽を摘む」として、すべての子や女が”粛清”された。
世界は、ヤマトによって徐々に衰退していく。
もはや、世界は絶望の未来以外を見ることが出来なくなっていた。
ただ一人の女性を除いて……。
ヤマトの子供達はすべて殺されたが、一人だけ生き残っている王女が居た。
その名は、”イハマト王女”。
イハネ王女との間にもうけられた、青い髪の王女である。
そのイハマト王女は、世界の果てに身を隠していた。
ヤマト王……つまり父に見つからないように、慎重に隠れており、生き延びていたのだ。イハマト王女は、すべての兄妹たちが殺されるのを歯噛みをしながら生き延びていたのだ。
そして、世界を慮って行動を起こすときを待っていた。
「変えなきゃ……。過去に戻って、世界を変えなきゃ……。パパを止めなきゃ……。」
♦♢♦♢シーンを現在に戻す♦♢♦♢
城門内にある歩道、街道、その道にズラリと並ぶ王都民。
当たり前の話だが、ほとんどが龍族だ。
ヤマトは王都の正門をくぐった瞬間に、割れんばかりの歓声に迎えられた。
「うわぁぁぁ!あのかたがヤマト様か!」
「英雄ヤマト様!ヤマト様が戻られたぞ!」
「きゃああ!かっこいい!」
「ヤマト様!バンザイ!」
まるで凱旋パレードのようである。
歓声と歓声が共鳴し合い。ヤマトは本気で鼓膜が破れるかと思った。
「うわわわ……。こ、これは?」
聖龍の横を歩きながら、ヤマトはビビっていた。
「これは……ヤマト様の名前が王都民に知れ渡っている?」
聖龍も、やや意外そうな顔をしていた。すると、白髭偉丈夫のオフラ軍団長が意見を述べた。
「聖龍様。おそらく、城壁内からの戦闘参加者がもどって詳細を伝えたのでしょう。」
「なるほどのぅ……。それは良いことじゃ、ヤマト様の功績を知らしめる一歩じゃし。」
「そ、それはそうと。こんなに大勢の人が……。」
慌てるヤマトを見ながら、リーランが呟いた。
「これ……、たしかエルフの王都でもなかったっけ?」
そうなのだ。
ヤマトがこのように歓迎されるのは、エルフの王都ブルーサファイアで体験済みだ。
リーランのその言葉に、すぐ後ろを歩いているグランドフが首を傾げた。
「そうなのか?ヤマト殿?」
「ああ……。ブルーサファイアでも同様の歓迎を受けたことがあるんだ。あのときも凄かった。」
イハネ王女が、それを聞いて笑った。
「ヤマト様。あのときは貧民街の救済から戻ってきたときに、我が国の民達が歓迎していましたね。」
ルシナも笑った。
「デジャブだね。ヤマト1」
「ミャーン!」
ヤマトの肩の上で、サキルイスが周囲の人の数に目を見開きながら鳴いた。
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