第132話 女王とお食事

※ヤマト目線でストーリーが進行します。※


クロロさんは、仕事のもの凄くできる人だった……。


その後、風呂と夕食の時間。明日のスケジュールと内容についてクロロさんから説明を受けた。テキパキとこなすし、俺が質問をすると想定していたのか資料まで提出してくる始末。


出来る男……クロロさん。


いろいろあって疲れてしまった俺は、部屋に用意されていた果実ドリンクを堪能して少し休憩。


「はぁ……いろいろあったな。」


エルフの転移門をくぐって、ブルーサファイア王都に入って。女王様と謁見。


そのあと、いきなり魔法師団長と決闘だ。


そりゃあ、疲れる。


窓を見てみると、すでに夜だ。


今何時なんだろう……。部屋に設置された時計に目を通すと、そろそろ風呂の時間のようだ。


この国賓専用の建物には、専用の風呂とダイニングルームが設置されているので、他エルフ達に会わないのが助かる。決闘後に、王宮の塔を横切ったけど、かなり目立っていたので、気恥しさがあったから……。


そのあたりも配慮されているのだろう。


国賓用に別棟の建物を作ってしまうあたりが、凄い。


チリンチリン……。


俺の部屋の呼び鈴が鳴る。


部屋が大きいせいなので、ノックでは間に合わないそうな。


「はーい。今いきます。」


俺が入り口ドアを開けると、そこには3人のメイドの恰好をしたエルフが居た。


「……え!?」


思わず顔の筋肉が緩んでしまうのを感じる。メイドだ!メイド!こんなのメイド喫茶でしかお目にかかれない。行ったことないけど……。


金髪メイドは、皆10代後半のように見える。


しかし、エルフは長命種族である。見た目が10代でも100歳を超えていることもあるので年齢は判らない。


真ん中に立っているメイドエルフが、両手で印を組みながら一礼をする。エルフ流の挨拶だ。


「あ……。」


俺も慌てて、同じように挨拶をする。


それを見て、3人のエルフは「ふふふ。」と笑った。何だか好感度が上がったようだ。


「あの……?」


「龍人族のヤマト様。お風呂の時間でございます。私達は国賓館専属のメイドでございます。」


「そ、そうですか。お風呂の時間ですね。」


「はい。すでに奥方様がたは終えておられます。」


リリス達は先にお風呂を済ませていたらしい。


「わかりました。場所はクロロさんに聞いていますので、すぐに向かいます。」


「え……。」


「……?」


何か戸惑っているメイドエルフ達。


(俺、なにか変なこと言った?文化が違うから、ちょっとしたニュアンスで失礼したりとか……。)


「あの?」


「ヤマト様。それでは私達が困ります。」


「こ、困る?」


「はい。お風呂までご案内して、お背中を流すのがお仕事なので……。」


「ええ!?」


俺は丁重にお断りをさせていただいた。


しかし、どうしても!と聞かないので……。


「背中を流すのはいいですから。案内までしてください。」と言って何とか納得してもらった。


浴室エリアに入った俺は入り口にも兵士が立っているのに驚いた。


「へ、兵士がお風呂を守っているの!?」


すると、メイドさんが教えてくれた。


「一番無防備になりやすい場所なので、国賓に何かあってはエルフ王国の責任になります。そのため、厳重に警備させていただいております。」


「な、なるほど……。」


浴室の手前にある脱衣部屋に入ると、そこは大空間だった。大理石の床に大きな鏡と椅子。さらにお香が炊いてあるのか、何とも言えない良い匂いがしている。


「す、すごい……。こんなの独り占めしていいの?」


「はい。ゆっくりお入りください。ささ……、お着換えをお手伝いします。」


「え!?」


メイドエルフさんは約束と違って、着替えを手伝おうとしてくれたが、さすがに断った。


「だ、大丈夫ですから。本当に大丈夫です。」


「そ、そうですか……。」


残念そうなエルフメイドさん達。すごすごと脱衣所から退散していった。


(貴族ってそんなこともメイドにやらせるの!?ちょっとカルチャーショックだ。)


浴室に入ると、そこはそこで大空間だ。だだ広い浴槽はおそらく10坪以上はあった。泳げるレベルだ。浴槽に横には、石像が設置されており。それはそれは素晴らしい芸術作品だった。


何だか、夢のような空間だ。長旅で風呂なんて入れなかったから、とても気持ち良い。

お風呂を堪能した後は、夕食の時間だ。


夕食時には、リリス、オステリア、リーランと合流。


しかし、度肝が抜かれたのだが、そこにレステール女王が現れたのだ。


「レ、レステール女王様!?」


「ご一緒して良いか?ヤマト殿?それにリリス、オステリア、リーラン殿?」


「も、もももももちろんです。」


「ヤマト、口が回っておらんぞ。」


「ふふふ。ダーリンったら。食事するだけじゃない。」


いや……、そういうがな。相手は女王様だぞ?


リリスも元女王様だけど……、現職の女王様ともなると緊張もする。


30名は座れるんじゃないだろうかという大理石のテーブルに案内されると、大勢のメイドや執事たちがワラワラと出てきた。


すると、今回の料理の軽い説明を受ける。


(高級レストランのフルコースかよ。)


出てくる料理は、本当に高級レストランのものだった。前菜からはじまりメインディッシュ、デザートまで出てくる。


今回は女王様の前だったので、ちゃんと礼儀正しく食べた。


食事が終わると歓談がはじまる。


「あの……レステール女王様。ルシナとヴィールムは大丈夫でしたでしょうか?」


「ふふふ……、あの二人の暴走には本当に……。すまなかったな、いきなり結婚を迫るなんて私も予想していなかったのだ。まさか軍属の二人が、ヤマト殿と結婚を希望するなんての……。」


お淑やかに笑うレステール女王様は、本当に綺麗だった。口調は威厳に満ちているが、結構フランクに話せそうだ。


これで3500年以上長生きしているとは思えない。どっからどう見ても30代……いや20代後半にしか見えない。


「それで?レステールよ、まさか結婚を無効とか言わなかったじゃろうな?」


「まさか。私は女王である前に、一人の女。同じ女が決めた伴侶を取り上げたりしない。」


それを聞いて、一堂は安心した。


しかし、次のセリフで驚くハメになる。


「ただし……、順番を変えさせてもらう。」


チラリと俺を見るレステール女王。その表情は、少し緊張の色を含んでいた。


「じゅ、順番ですか?女王様。」


「そう。順番、今回何故だか判らないが……。リリス殿たちが現れた……。それは龍人族の復活を意味する。ヤマト殿の活躍で、国内に龍人族という証明も出来た。感謝するぞ、ヤマト殿。」


決闘のことを言っているのだろう。


「で、でも。あの決闘は王宮内のことで、エルフ国内にはまだ伝わっていないのでは?」


「ふふふふ。エルフ族のネットワークは、人族の比ではない。2ー3日で国内に、あなたがヴィールムを倒したことが伝わるだろう。」


まじか……、エルフって口が堅い種族のイメージだったけど。違うようだ。


「それで順番というのは?」


「そう。私には二人の娘がいる。そのどちらかと婚約してもらう。ルシナとヴィールムの婚約はその後だ。」


「「「!?」」」

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