第2話


 この「天界」では、陸人たちの事を『天使』と呼ばれ、地上で亡くなりこちらに来た人たちは『人間』という風に区別されている。


 ちなみに、陸人たちはそれぞれに「才能」と呼ばれる力があり、それは本当に人それぞれで、いわゆる「個性」とも別名で呼ばれている。


 ただ、実は『魔法』と呼ばれる様々な特殊能力を使える人の方が天使の中では「普通」で、それ故に仕事で使える魔法の特性と自分の魔法の特性が合う仕事を探すのが一般的。


 つまり、陸人たちの様に「使い魔」を使う天使はかなり珍しく、また「使い魔を使役出来る」という自体が才能の為、陸人に限らず是清先輩も課長も魔法に関しては実はからっきしだった。


「よしっ」


 仕分けの確認を終えると、次は受取人に配達する事になるのだが、そこで使い魔は大活躍する。


「そんじゃ、これ頼めるか?」

『了解しました』


 この世界にも一応「郵便」という制度は存在しているが、それはあくまで天使の仕事の為に使われる。その為、こうして「配達」をする際には使い魔が必須。


 一人一人の受取人に対して陸人が配達をしに行っては時間がかかり過ぎてしまう。それに、まだ仕事は終わっていない。


 そういえば……仕分けでミスをした先輩が移動になった先は「郵便」だったはずだ。


 それはやはり「使い魔がいる」というところが大きいのだろう。あちらの場合はこのどこまで続いているか分からない広大な天界に存在する「役所」に荷物を配達しなければいけないので、それはそれで大変だとは思うが。


『こちらの方は……よろしいのですか?』


 空が気にしたのは先程受取人の名前が書かれていなかった荷物だ。


 「ん? ああ、大丈夫だ。とりあえず先にそっちを運んでしまってくれ」

『了解しました。それでは行って参ります』


 天界にも様々な発明をする部署が存在し、その一つが「小さく出来る箱」という物がある。


 その箱自体は元々それなりに大きく、かなりの容量が入るのだが、特殊な魔法陣が施されており、箱の蓋を閉めるだけでかなり小さく出来、蓋を開ければ元の大きさに戻るという大変よく出来た代物だ。


 そして、この課で使っている箱は特殊仕様になっており、使い魔によってうまく運べる様に様々な工夫が施されていた。


 例えば、空であれば首輪に引っ掛けられるようなフックが付いている……などである。


「おう、気をつけてな」

『はい』


 首輪に付けられた箱の数はそれなりにあり、重量もかなりのものになるはずなのだが、空曰く「まだまだ平気」なのだそうだ。


 さすが使い魔といったところだと思わず感心してしまうところだが。


「さて」


 空を配達へと向かわせると、陸人はもう一度先程の資料に目を通した。


「……」


 そこには受取人の名前の欄は空白になっていたものの、すぐ上の表には少年と女性の名前が書いてあったのだが、別枠に「親子」の記載……が名前が空白になっているところにまで続いていた。

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