戯曲小説『灯の在り処 ―わたしがここにいた証―』

rinna

プロローグ

教室は静かだった。

放課後の光が、誰もいない椅子の列を斜めに照らす。埃の粒子が舞って、時が止まっているようだった。


舞台袖の奥から、ゆっくりと少女・澪が現れる。

彼女は制服の襟元をそっと整え、かすかに息を吸った。


(モノローグ)

ねえ、あなたは、覚えてる?

あの時――私は、ずっと黙ってた。

言葉にしたら壊れてしまいそうで、

だから、声を殺して、笑っていた。


でも、忘れてないの。

ここにある。

ちゃんと、まだ――灯ってる。


舞台の中央に、一脚の木製の椅子。

澪はそこに座り、静かに視線を上げる。

照明が一段階落ちる。


(モノローグ)

あれから、たくさんの時間が過ぎた。

でも、あの「教室」は、まだ私の中にある。

いくつもの声が交差して、

痛みと、ぬくもりが混ざっていた。


これは、私がここにいた証。


――だから、聞いて。

私が、ようやく言葉にできるようになった

「あの日」のことを。


(地明かり。教室のシルエットが浮かび上がる。スピーカーから、遠くでチャイムが鳴る音が響く。)

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