おまけ(小説家になろうでは六話、七話後書きにて) ヴィシェリアと姫の叔父が出会ったきっかけ
「思ったよりも空気がきれいなのね~……。」
私は魔王の妹ヴィシェリア。
今は敵の人間界に潜入一日目。
ヴィシェリアではなく十七歳の田舎娘、ヴィレナとして敵の弱みなんかを探しに来た。
もちろん危険は伴うが、魔王、ウィリアムの
かなりこう難易度な魔法だが、姿を変える魔法はある。
というか、作り出した。
私は魔法が好きだ。
どうとでもなるその未知の発見や、できないことができるようになる心が躍るような楽しさがたまらない。
その魔法で漆黒の長い髪は銀髪の髪に。
黒に近い赤色の瞳は青みがかった紫の目に。
角や牙はなくなる代わりに、魔物特有の特徴である毒々しい魔力を人間に寄せたから、完ぺきに人間だ。
今は草っぱらで人間界を楽しんでいる。
敵国とはいえ、空気は澄んでいて、綺麗な風が飛んでくるこの世界を楽しまなくてどうする。
「お姉ちゃん!一緒に遊ぼか!」
近くにいた四歳ぐらいの子供が話しかけてくる。
「いいよ~。」
(敵国の子供とは言えど可愛いなぁ~。見た目はリュジューより上ぐらいかな?)
「お名前は?」
「ココ。お姉さんは?」
「ヴィレナよ。よろしくね。」
「ヴィレナ?じゃあレーナやな。シロツメクサで冠をいっぱい作るから手伝って。」
「わかったわ。どうやって作るの?」
「そんなことも知らへんの?こうやって作るんやよ。」
+*+
「いっぱいできた!」
二時間ほど経ってできた数は十個。
「レーナ、作るのだんだん早よなって、しかも上手になって来とったね。」
「ありがとう。」
時間は二時ごろ。
お昼も食べていなかったので、お腹はペコペコだ。
途中でココちゃんのお腹が鳴っていたから、たぶんお昼を食べていない。
「ところでココちゃん。シロツメクサ探しでだいぶ遠くに来たけど、これはどっちに進めばココちゃんのおうちがあるの?」
「え?それはあっちにお城を守る城壁があるからあっちに……アレ?」
ココちゃんは言語的にサンシャ国の子だ。というか、遠くて見えないが、マナルート国の城壁はおそらく真反対。
このまま泊まるところがないと言ってサンシャ国に侵入してもいいが、目的はマナルート国。
かなり遠いから閉門する時間に間に合わせるために余裕も乗ってそろそろ出発しないとまずいだろう。
だけど、ココちゃんをここに置いていくわけにはいかないし、連れて行くわけにもいかない。
「うっ……うわぁ~ん!」
「ココちゃん……。」
「お家がわからんくなっちゃったよ~~~!」
迷子になったココちゃんは泣き出してしまった。
正直私の方向もあっているかは怪しい。
下手に歩いても変なところにつくだけ。
「ココちゃん。とりあえず、ココちゃんが住む国を教えて?」
「ヒック……サ……サンシャ……国。」
ビンゴ。
……いや、当たっていたとはいえ方角が分からなかったら帰れない。
いいや!弱気なこと言ってられるか!
「ココちゃん。今から私はマナルート国に行くの。こんな草っぱらにいるより、マナルート国に行って、そこからサンシャ国に向かう荷物とかと一緒に運んでもらおう。しばらく家族に会えなくなるかもしれないけどいい?」
「………うん。お家に帰れるんなら。」
「泣いていたら可愛い顔が台無しよ。」
ココちゃんをおんぶする。
「レーナ、あったかい。お母さんみたい。」
その言葉を聞いてヴィレナはリュジューを思い出す。
「歌うたっていい?」
「お歌?」
「そう。子守歌。知らない言語かもだけど、気にしないでね。>Н'е~бо ста~нови…ца я…рко-кр…асным.< Вс'е д…ет'и> и~дут д~ом~ой.< Д~авай…те> вс~е во~зь~м'ём~ся за ~рук~и… …и п~ойд…ём до~м~ой вп~е~рёд~ вм'ест'е.」
いつもリュジューと一緒に歌っていた曲。
言語は獣人の使う言語。
……最近は忙しくてリュジューと一緒に遊べてなかったっけ………。
ウイス(ヴィシェリアの旦那)にリュジューを預けっぱなしで大丈夫かな……。
「なあ、あの真っ白な馬車は何なん?」
「マナルート国の王様とかが乗ってる馬車ね。」
「なんか、馬車に乗っ取った人、こっちに向かって来とらん?」
確かに、王族っぽい恰好をしたヴィレナと同い年ぐらいの男性が早歩きで歩いてきているけど。
「だいぶ遠くだし、違うんじゃない?」
+十秒後+
「やっぱり近づいて来とらん?」
「まっさかぁ。」
+またまた十秒後+
「やっぱり近づいて来とるって!」
「うん…そんな感じするね。」
+さらに五秒後+
「結婚してください‼」
「「……………え?」」
その人は近づいて来ていた。
しかも私の目の前に立って。
二人そろって声をあげた後に二人であたりをキョロキョロする。
もちろんあたりにはその男性と私とココちゃんだけ。
「「……え?」」
それもあって二人で声を出す。
「失礼。」
するとその方は片膝ついて小さな箱を開ける。
「俺と、生涯を共にしていただきたい。」
その箱からは指輪が輝いている。
それに先ほどとはまた違った真面目さ真剣さが伝わるプロポーズ。
その瞳は
「……私?」
私の正体を知ってのプロポーズ?
どっからどう見ても人間だし、馬車は人間のだし、使えている方も人間。
というか、私の正体知っているなら相手がいるって知っているはず。
じゃあ初めましてって事?
単なるヤバいやつ⁉
ヤバそうな人なのでココちゃんを後ろに下がらせる。
「あなた以外に誰が。」
「…ココちゃん。」
「私が女児に手を出す変態に?」
「……失礼ながら。」
ガツンッ
「わたくしの主人が大ッ変ッご迷惑を‼‼‼」
この方の執事っぽいけど、どうも幼馴染っぽい態度で私に謝ってくる。
というか、主人に対して殴っている。
主人を殴っても立場が下がらないほど主人を信頼しているのか、私を思って殴っているのか。
どちらにせよ簡単にできる事ではない。
「いったいなぁ……エミリオ!人のプロポーズ中に邪魔するなよ‼」
「今から三日後に式をあげる婚約者に会いに行くあなたが‼初対面の相手にプロポーズなんてありえるか‼」
「リンドラに対してプロポーズもしてなければ、アイツはただの友達だから。お兄は好きな人出来たらその人と結婚していいって言ってたし。たとえそれが式上げる三日前と言っても有効だろ⁉」
(なんか……エミリオさん?は苦労人な感じがするわね。)
「それに相手は子持ちだろ⁉いい加減にしろよ‼」
「ウグッ。それは…その………。」
痛いとこ突かれたように口ごもる。
(良し!このままならこの人から逃れられるかも!)
「ウチはレーナの子供とちゃうで。レーナは友達や。」
ココちゃん⁉
ぱあっと顔が明るくなる。
「よしッ今から式だ‼」
「はあ⁉リンドラさまは⁉」
「はあ?そんなもの白紙白紙。」
この人について行けば、マナルート国には簡単に入れるだろう。
だが、ある日ポイッと捨てられそうな気が……。
とりあえず逃げようとココちゃんを持ち上げると、彼の手がスッと伸びてきて、ココちゃんがお腹に乗った状態でお姫様抱っこをされた。
「よしッ城に戻るのだ!今すぐ式の準備をしろ‼リンドラには白紙になったと伝えるのだぞ‼」
「オマッ…ヴァレリオ‼」
エミリオさんがヴァレリオさん?を止めに入る。
「今から式は無理だ。せめて明日になる。リンドラさまにはお前がアフェル家に直接謝りに行け。」
「……そうか。」
さっきのテンションの高さはなくなり、少し冷静になった。
「ハァ…………。」
私とココちゃんを下ろしてから
「名前は?」
と聞く。
「…………ヴィレナです。」
「ヴィレナか。いい名前だ。ヴィレナ。すまないが、リオと少し待っていてくれ。俺は婚約者に白紙になったことを謝りに行く。一時間後ぐらいに戻るから、城で待っていてくれ。」
そう言った後、エミリオさんに
「リオは二人を連れて城に戻ってろ~‼‼」
元気を取り戻したかのように走って馬車に乗り込みさっさと出発していった。
(いや、(プロポーズの)返事をした記憶はないが⁉)
「申し訳ありません。お時間あれば、城について来ていただければと………バカ主人の話を含めて話させていただきたいです。」
+*+
「「わぁ……」」
ココちゃんと二人でお城に感動する。
「こちらへどうぞ。」
エミリオさんに案内されて客室に行く。
もちろん豪華だ。
「もうすぐアリスリオさまとセフィーナさまがいらっしゃるので、少々お待ちください。」
アリスリオとは国王。セフィーナとは王妃。
あれ?
ヴァレリオさんって国王の弟だよね。
年子のはずなのに二人ってなんかよぼよぼお爺ちゃんの見た目だったような。
バンッ
と扉があいたと同時にヴァレリオさんと同い年ぐらいの男女が飛び込んできた。
「ヴァルがプロポーズしたっていう子はこの子⁉」
「や~んちょー可愛い‼妹ってメチャメチャ憧れてたのよ~‼」
(言い分的にはアリスリオとセフィーナ?でも知ってる見た目と違う。)
「アリス。セフィーナさま。」
エミリオさんの声がかかる。
アリスリオとエミリオさんも幼馴染みたいな関係?
「も~。弟と結婚する子を見てテンションが上がらないわけないだろ?リオはお堅いなぁ。」
「こっちの可愛い子はどこの子?」
ココちゃんを抱上げるセフィーナ。
「迷子です。サンシャ国の子だと本人から。」
「あら二人とも初めましてなの?姉妹かと思っちゃったわ。」
「………」
なかなか座らない二人に対してエミリオさんが怒りかかっている。
「アリス。セフィーナさま。とりあえず座りましょうか?」
「ひっ…。」「…ひゃい。」
エミリオさんの威圧に負けて二人は座った。
「ゴホン。改めまして。マナルート国、国王のアリスリオ・マナルートです。」
「マナルート国、王妃のマナルート・セフィーナです。」
(本当に二人が国王と王妃なんだ。)
「
名字がカタカナでないのはヴィレナがそういうところで生まれたという設定だからだ。
その村、
そんなうわさは何年も前に消え去り、人間にバレないように魔物と暮らす人間と魔物のハーフたち。
この世界で唯一の村。
ヴィレナはそこの村生まれ、そこの村育ちという設定だ。
ちなみにどこの国にも所属していないから小さな国ととらえてもいいかもしれない。
「キリサキ……ヴィレナちゃんは夜南村の住民の子かな?」
「はい。」
「リオ。二人の出会いはどんな感じか説明してくれるかな?」
「はい。ヴィレナさまとココさまはオーゲ草原にいらっしゃいました。ココさまが泣いておられるところにヴィレナさまが聞いたことない言語で歌っておられるのを聞き、リンドラ家に向かう途中にもかかわらず馬車を止めヴィレナさまに一直線でヴァレリオさまご自身で歩いて行かれました。」
「その後いきなりプロポーズ?ヴァルらしいね。」
「ですが、プロポーズのお返事はヴィレナさまから聞いておりません。ヴァレリオさまが勝手に仕切っております。」
「それはちょっとヴァルちゃんにお仕置きね。わかったわ。ヴィレナちゃんとお話がしたいからみんな席外してくれる?もちろんアリスも。」
そう言うと私の膝にいるココちゃんと目線を合わせて
「ココちゃん。私の姫と一緒に遊んでくれる?ココちゃんと同い年ぐらいだと思うんだ。お友達になってくれるかな?」
知らないところで緊張していたのか少し警戒心が出ていたのが引っ込んで
「お友達!」
と言って表情が明るくなった。
「そこのお兄さんについて行ってね。」
そう言ってエミリオさんを指名し、部屋には二人だけになった。
「さて。ヴィレナちゃん。」
セフィーナの鋭い目つきにヴィシェリアは生唾を飲み込む。
(まさか私が魔物だって気が付いている⁉)
「本当にこのままで大丈夫?話を聞く感じ強制されて結婚する感じになっていない?ヴァルちゃんの熱意が強すぎて戸惑ってない?何か不安なことはある?本当は結婚したくないとかない?今ならヴァルちゃんに直談判に行けるよ?本当に大丈夫?」
まさかの私を心配してのことだった。
「……私は大丈夫です。ヴァレリオさんの熱量には驚きましたが、こんなにも好いていただけるのがとてもうれしくて……。」
「そうなの?ならよかったわ。と言っても今日会ったばかりで、不安なことはあるでしょ?」
「そう……ですね。せめて明日式になるとエミリオさんがおっしゃってましたが、本当に明日やるんですか?」
「そうねぇ……ヴァルちゃんには悪いかもしれないけど、ヴィレナちゃんが嫌と言ったら式はやらない。もしくは小さなものにすることも可能よ?」
人間の王族の権力半端な。
「あ。でも、明日ならご家族が来れない?」
(ご家族……か。)
「父も母も居りませんし、兄弟姉妹もいないので。」
ヴィレナは家族がいない。
「そう………。失礼なこと聞いちゃったわね。式はこのままだと本当に明日やりかねないわよ?」
「どんなものかわかりませんが、式の規模とかは変更すると大変でしょうし、私は予定通りで避ければ予定通りで。式に来られるお客様の迷惑にならないように三日後でもよろしいですか?」
「全然大丈夫よ!お父様がおられないなら入場は二人でになるわね。そこの変更かしら。あと、ドレスね。代々マナルート家に嫁入りしてくる人が着てきたドレスよ。体系もリンドラちゃんとそんなに変わらなさそうだし、大丈夫よ。」
突然の新婦の変更で迷惑かけまくりだと思う。
でも、このまま王族の一因になれるなら情報も仕入れられるんじゃないか?
ヴィシェリアは既婚者だけど、ヴィレナは未婚者だもん。
大丈夫よねッ!
返ってきたヴァレリオさんは右頬をリンドラさんに叩かれて腫れあがっていたけど、リンドラさんの気持ちも分からなくない。
旦那と結婚する三日前に「やっぱり違う人と結婚します!」って言われたらメッタメタにするかも。
無事(?)に結婚式は終わり、後日ウィリアムに報告すると帰ってきた返事の最初は
「人間の所に侵入しろとは言ったが、そこまでじゃなくてもよかったぞ? というか、義兄さんに伝えて大丈夫か?」
だった。
「説得しといて?」が返事でいいよね。
コトノハの弟への扱いが雑なのは遺伝だった。
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