第1話 牢を抜け出すお姫様
「はあ……。」
魔王城の牢に来て一日目の人間の姫は溜息をついた。
「おい。アレ、人間の姫だよな。」
「俺らを怖がってる様子はないな……?」
「でもでっかいため息ついてるぞ…?」
「ふつうは助けを求める感じじゃないです?」
「さあな。前例がないもんだから」
「姫とは言え普通の
そんな魔物たちのとある牢の前でのひそひそ話
「……はあ……。」
人間の姫、マナルート・ソフィアが大きなため息を二度もついた理由は三つある。
一つ目 とにかく魔物の野次馬が多いことだ。ソフィアは「見世物じゃないんだから」と思っている。
二つ目 食事がまずいことだ。人間と魔物では食べ物が違うためまったく口に合わない。
三つ目 恋のため息だ。突然の
…というわけで解決するためにソフィアが思いついたこと。それは……
―――――牢を出ることだ!
一つ目は見られるの飽きたな~的な。
二つ目は(私の食べられる)食料ため込むか~的な。
三つ目は想い人を探すため…的な。
二つ目クリア出来たら上出来な方。
あと、せっかく敵地に来たんだ。色々情報も集めておきたい。
最悪死んだところで、ここ、魔王城には蘇生できるものがいるという報告が上がっていたようないなかったような。
……とりあえず、人間と魔物は長くにして争ってきている。
ただ、今まで人間側、魔物側どちらとしても人質を取った、取られたという前例はない。
だが魔王の考え方として
まあ何が何でも蘇生してくれるんじゃない?ってことで、魔王城を歩き回っている。
出た理由としては、食事を届けに来た者がカギを牢の外に落としていったからだ。
「あれ~?アレ人質の姫じゃない~?」
そう言うのは羽の生えた青年がだいぶ下の階から話す声が聞こえる。
(そろそろあの狭い牢に戻らなきゃいけない時間かな……)
それはそうだろう。
人質のはずなのに外を寝巻で、しかもそこそこキラキラしている服を着ていたら。
「んなわけねーよ幻覚でも見えてるんじゃね?」
とその姿を確認せずに先を歩いていく……犬みたいな耳が生えているのでおそらく狼男の奴。
(……そうなるだろうか?というか誤魔化せる…?)
「いや~最近視力悪くてさ~なんかキラキラしてるのが見えるんだよ~?」
と羽の青年
(この服だと目立ってしまってたか…視野が狭かった……)
「最近人魚さんが入りましたし、その鱗とかじゃないですか?」
エルフ…よりかは肌が黒いからおそらくダークエルフの青年が言う。
(…実物を見たことはないが、この寝間着はそんなに輝いてるの……?)
「ああ~一理あるね~」
そう言って納得したのか視線を前に戻す。
(納得しちゃったよ?視線戻しちゃった。バレなかった?……え?)
「人魚って謎が多いんだよなー。今年入ってきたばっかなのに、水中エリアボスサマが退職した次は新人の人魚だとかって噂も。俺らなんて五年下っ端やってんのにさ。」
と狼男
「君たち。うらやましいなんて思うならこんなところで油を売ってないで早く職場に戻りなさい?」
いつの間にかに三
「「「パ…パイア先輩……」」」
どうやらヴァンパイア
「に―――――ちゃん‼‼あんまりガミガミ怒んなよ!にーちゃんこそ七年やってるのに下っ端なんだろ‼」
ヴァンパイア弟(?)が出てきた。
「チスイ。下っ端と言ってもかなり上ですよ。…仕事が少ない割には給料は位が上がったのとほぼ同じ。なのにさぼっ……」
「大変だあああああ‼‼‼」
走ってやってきたのはゴブリンだ。似たよう見た目の者をよく周辺で見るので断定できる。
「何事ですか!」
「人間の姫がいないぞおおおおお‼‼‼‼‼」
「人間の姫が⁉至急魔王様とエリアボス様に報告‼手の空くものは魔王城と周辺の森を探しなさい!」
(そろそろ限界か。)
そう思った姫は隠れる…のではなく牢の場所に戻っていき、
目撃していた魔物たちは思考が一瞬停止したという。
「ま…魔王様に報告‼」
ソフィアは今日分かった情報を整理した。
一 人間と同じく職場や給料がある。
二 人間と同じく上司や下っ端などの制度がある。
三 人間と同じく兄弟がいることがある。
四 人間と同じく魔物の種類以外にも
………ほとんど…というか容姿や能力が違うだけで全部人間と同じ……?
ともかく、そうして珍事件はあったかもわからないような短い時間で終わったという。
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