押忍‼︎皆中です‼︎
ZEIN
第一話:押忍!
市民体育館の裏口前。春の風が、心地良く吹き抜ける。
そして、目の前を横切った女子達の袴がなびいた……。
「うっわ〜袴って可愛いな〜〜〜〜〜〜っ‼︎」
押忍!俺、八尋 主税(やひろ ちから)、北海道立恵北高等学校一年、空手初段の黒帯。
この日は市内の総合体育館に空手の稽古に来たんだけど、同じ体育館の一階にある弓道場に、ふらふらと吸い寄せられてしまった。
弓道部の女子が、ビシッと構えて、スッと弓を引いて、ズバァン!と放つ姿……
その一連の動作が、なぜか俺の脳内の「カワイイセンサー」にクリティカルヒットしてしまったのだ。
「やっば……俺、もう入っちゃおっかな……」
「よしっ!」
《ちょっとトラブってて稽古に遅れそう》送信完了。
――場面変わって、同じ体育館・格技場。
「主税先輩遅れるってよーッ‼︎」
中学三年の沖総司(おき そうし)が、ちょっと声デカめに道場生に叫んだ。
主税先輩が遅刻なんて珍しいな。
休憩時間、汗だくの道着のまま、スポーツドリンクを買いに階段を降りる。
「トラブルって、まさかケンカでもしてるのか?」
ふと弓道場の前を通ると――
「――あっ?主税先輩⁉︎」
道場の入り口から見えたのは、まさかの主税。
――制服のまま、初心者用のゴム弓をクイッ、クイッと引いていた。
「えっ……何してんの⁉︎え?えっ⁉︎」
思わず扉の向こうから覗いていた総司。
と、その耳に入ってきた女子部員の声。
「ねぇ、あの一年の子、結構カッコいくない?」
「え、うそ、どれ?あ、あのちょっと大きい子?弓持ってるのが新鮮〜♪」
「なーんか…いいかも〜♪」
(おっ?……まぁ見た目は、悪くねぇからなーあの人……!)
それを聞いてたのが――
「……はあ?」
二年の石田 剛(ごう)。イライラがMAXに達する。
(女子が…この一年を……カッコいいだとっ……⁉︎)
そのまま、ドカドカと近寄って、主税の目の前に立ちふさがる!
「オメェでけぇくせに貧弱かぁ?ゴム弓で右肘上がってんぞっ!
もっと胸開いて、肩甲骨合わせるように背筋で引けぇ!そんなんじゃ一生初心者だ!辞めるかぁ⁉︎」
ブッチーーーン‼︎
その罵声が響いた瞬間――
「――んだと、誰が貧弱だコラァァアアアア‼︎」
瞬間沸騰湯沸かし器こと沖総司、尊敬する先輩が侮辱されたと思い、ブチギレMAXモード!
ダダダダダダダダッ‼︎
「テメェ誰に向かって口きいてんだゴラァァァァ‼︎」
弓道場の空気が一瞬止まる。
そして――
「総司ィィィ‼︎やめ――っ‼︎」
主税が振り返った瞬間、
ちょうど宙を舞っていた総司の飛び蹴りに――
ヒュンッッ‼︎
主税が反射的に、後ろ回し蹴りッ‼︎
ガッ‼︎
「ぶぅわあああっっ⁉︎」
宙でぶつかる、2人の男達‼︎
女子部員A「えっ⁉︎」
女子部員B「えっ⁉︎えええぇぇぇ⁉︎空手⁉︎え、今、飛んだ⁉︎回った⁉︎イマナニガオコッタ⁉︎」
斉藤主将「え、キミ……なに者……?」
(……えーと、えーと、なんで蹴り合ってんの⁉︎)
一同、目が点。
宙に浮いた総司と、右足の後ろ回し蹴りで迎撃した主税。
総司はバランスを崩しながらも着地。
向かい合う2人。
弓道場の空気が、さっきの飛び蹴りの余韻でピリッとしていた。
斉藤(主将)は静かに、でも目は鋭く、俺を見ていた。
藤島綾子(副主将)は腕を組んで、ものすごーく困った顔。
石田は……遠巻きに「うわ、こっちくんな」って顔。
俺――八尋は、というと、額にちょっぴり汗をにじませながら、乾いた笑顔で言った。
「いや〰︎なんでもないんですよ、先輩たち〜!ホント、なんでもないっす!」
総司をグイッと片腕で引き寄せ、ガッチリホールド。
「この子がですね〜、ちょっと頭のネジが一本外れてると言いますか〜、こう、暴発型の人間といいますか〜……」
「何言ってんすか、主税先輩‼︎」
総司、唐突にマジ顔。
「オレ、見てましたからね!あんな奴にあんな事言われて、言い返さないとかありえないっすよ⁉︎悔しくないんすか⁉︎そんなんじゃ――」
「おい、ストップ。黙れ、総司。……おまえマジ黙れ」
「そんなんじゃ――フルコン空手全国2位の名が泣きますよ!!」
バカが!言いやがったー‼︎
俺、思わず顔を片手で覆った。
「この……バッ……」
「だぁ〰︎‼︎」
ビシィッ‼︎
総司の額にチョップ炸裂!
「言うんじゃねえよ!このタコが!」
「え、タコ⁉︎」
「オメェなぁ!オレが空手強いなんてバレたら、女子の方々が怖がるかもしれんだろ⁉︎怖がって仲良くなれなかったらどうすんだっ!
そうなったら、そうなったら…………爽やかな素敵な青春が送れなくなるだろうが‼︎」
「さ、爽やかな素敵な青春……?」
「そうだよ!オレはな!高校生活は!笑いと恋と汗と涙と、
なんかよく分かんねぇけど急に海辺で叫ぶような青春を送りたいんだよ‼︎」
総司「いや、え〰︎〰︎?この辺、海ねぇっすよ。」
「んな事、言ってんじゃねぇ!だから!空手の稽古の時はガッチリやっから!それ以外は余計なことすんな!黙ってろ!」
そこまで言って、俺ははたと気づいた。
……視線が、痛い。
ゴクリ。
ゆっくりと、振り返ると――
斉藤主将、そして弓道部一同が、全員こちらを凝視していた。
気まずっ‼︎
「……あっ、どーもー」
「てへっ」
「もしかして、聞こえました?」
――沈黙。からの、ざわ……
女子「えっ、なにこの人」
男子「後ろ回し蹴りから会話始めたんだけど……」
女子「なんかヤバイの入ってきた⁉︎」
男子「いや、マジなんなんだよコイツ〰︎」
斉藤「……おもしろい奴だな」
綾子「いや、面白さじゃなくて……部の空気が…」
???「……うち、ちょっとだけ…気になるかも」
ワチャワチャ〰︎〰︎
弓道場が騒がしくなる中、
俺はそっと総司を小突いた。
「な?だから余計なことすんなっつったろ、タコ!」
「すんませんでした!」
総司、深く反省中。
――そんなドタバタの中、八尋主税、高校生活のとある“ヒミツ”がバレた瞬間だった。
To Be Continued…
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