第5話 期待の新人

『おねがいしまーす!』

部長の掛け声で練習がスタート。

軽いランからのフットワーク、そして基礎打ち。

その後ノックの後、試合形式の練習に入る。

その後挨拶して終わり。

正直そこまできつくはない。

俺からしたらもう少しハードにしても良いと思う。

まあ、そんなに強くない高校ってこと考えたら、妥当なのかもしれない。

今の男子バドミントン部で俺以外に戦えるのは、同じく2年の林道 恭介ぐらいだろう。

こいつは、去年のIH予選シングルでベスト16に入っている。

技術に関してはそんなに高くはないが、相手の嫌なコースやドロップを的確にうってくる。

頭の良いバドミントンをしてくるやつだ。

それともう一人…

「中宮先輩、試合しません?」

一年の牧島 啓。

中学時代は全国の経験もある強者だ。

林道とも互角以上に戦う。

どうやら俺のことを意識しているらしく、よく練習後、試合を申し込む。

その心意気は良いなと思う。

「いいよ。」

俺は自分のラケットを持ちコートに入る。

そこに…

「あれ?今から試合?」

雪が声をかける。

「ああ。」

「凄いね、練習終わりに。」

「もうなれたよ。あいつ何回も試合申し込んでくるし。」

そう言うと雪は笑いながら

「頑張れ!」 

そう声をかけ去っていった。

女バスも練習が終わったのだろう。

よし頑張るか!






「ファーストゲームラブオールプレイ。」

自分でコールし試合を始める。

牧島は強いが、前の技術は弱い。

なので、俺はヘアピン、カットを多く用いて試合を有利に進める。

「っ!」

俺のカットをかろうじてあげる。

しかし体制が悪いせいで、上手くあげれていない。

俺はそこを見逃さずスマッシュを打つ。

シャトルは速いスピードを維持したまま、啓のコートに落ちた。

21ー14 .21ー12

今日も勝った。

まだ牧島には1セットも取られたこどがない。

ここまで弱点が見え見えだと試合もやりやすい。

「くそ、またか。」

牧島が悔しがる。

「とにかくお前は前だ。そこを磨けば恭介なら苦戦せずに勝てるだろうよ。」

「了解ですよ。」

そう言いながら、あいつは更衣室へ消えていった。








片付けを終わらせ、着替えた後に、鞄を持って外に出る。

外は既に暗い。星もよく見える。

俺が校門の前をすぎようとすると、

「あれ?」

「あ、終わった?」

雪がそこにたっていた。

「今日も待ってたのか。」

「もちろん!」

「さあ、帰ろ!」

そう言いながら雪はご機嫌そうに歩いていった。








「どうなんだ?女バスは?」

「まあまあ良い感じだよ。一年生に経験者いっぱいいるし。IHも十分狙える。」

「そっちは?」

「バドミントン部は?」

「…そうだな、強い一年も入ったし、俺の調子も悪くない。」

「一週間後だもんね。IH予選。」

「そうだな。まあ、先にダブルスだけどな。」

俺の本命はシングルだった。

ダブルスは、恭介と組む。

恭介も上手いが、上にいくと、単純な技術が浮き彫りになる。

そうなると恭介は少し厳しい。

「あの、一年生は?達也と試合してる子」

「ああ、牧島か。あいつは上手いし一年だろうが、試合には出れるだろうな。」

「凄いね。その子。」

「そうだな、あいつはまだまだ強くなるぞ。」






いつも部活終わりこんなかんじの他愛もない話をして帰る。

この時間なら同じ高校のやつもいないし、気にせず雪と喋れる。

この時間がいつも本当に楽しい。

まあ、あいつには、バレないように偽ってるけどな。





「じゃあ、また明日。」

「ああ、また明日。」

そういって、お互いに家に帰る。

いつも、寂しい気持ちになるのだけは嫌な所だな。

そう思いながら、俺は家のドアを閉めた。

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