駆け出し冒険者失踪事件
第4話 Sランク冒険者
2日後。クレイの元に早速エイデンから呼び出しがあったため、急いで冒険者ギルド東区支部に向かう。
面倒ではあるが冒険者ランクを落とされてはたまらない。渋々ながらクレイはエイデンの待つ部屋へと向かった。
2日前にエイデンと話したのと同じ部屋。そこに待っていたのはエイデンだけではなく、2人の男女であった。
「よう。遅かったなクレイ」
「バート?」
待っていたうちの1人は冒険者仲間のバートであった。
「なんでバートがここに?」
「お前と同じだよ。
「ああ、そういう事か」
友人のバートと少し話した後、待っていたうちのもう1人の女性に目を向ける。
「初めまして、だよな?」
「ええ! 初めまして!」
そう元気よく言い、女性は立ち上がる。
「私はヒオリ!よろしく!」
「クレイだ。よろしく」
ヒオリ。超有名な冒険者だ。なにせ下町の東区を拠点にするSランク冒険者であるからだ。
長くて赤い髪に170センチほどの女性にしては高い身長を持ち、スラリとしたモデル体型の女性だ。更にすれ違った人全員が振り向いてしまうほどの美人である。
「あんたの事は知ってる。というか、東区の冒険者で知らない奴は居ないだろうな。なんせ東区唯一のSランク冒険者なんだから」
「あ、知ってたんだ。でも、もうすぐ唯一じゃなくなるわ。だってすぐにバートがSランクになるんだし」
「だな。Sランクが2人も現役なんて珍しいこともあったもんだ」
クレイとヒオリが話しながらバートをニヤニヤと見やり、バートは照れ臭そうに頬を掻く。
実際、Sランクの冒険者がこんなにも結界外部に残っているのは珍しい。何故ならばたいていの冒険者は、高ランクになれば貴族に買われて結界内部に行ってしまうからだ。
常に死の危険と隣り合わせの外部より、結界に守られて安全な内部に住みたい。それが当たり前の人間の感情というものであろう。
「まだSランクになるって決まったわけじゃねえ。いいからさっさと座れ」
そんな冒険者三人の顔合わせを黙って見ていたエイデンが痺れを切らす。
クレイとヒオリは互いに肩をすくめ合いながらソファに座った。
「わかっていると思うが、お前たちを呼んだ理由は
「はいはーい!質問!」
本題に入ったエイデンの言葉に、ヒオリが元気よく水を差す。
「なんだ?」
「なんで私たち? 自分で言うのもなんだけど、ちょっと過剰じゃない?」
クレイが感じていた疑問をヒオリが代弁してくれる。翡翠の洞窟はかなり初心者向けの狩り場だ。クレイはともかく、SランクとSランク間近の冒険者では戦力が過剰すぎる気がする。
「ここ2日で事情が変わってな」
「事情?」
「ここ2日の行方不明者の数が10人を超えた」
「「なっ!?!?」」
クレイたち3人は同時に驚きの声を上げた。
2日前に話を聞いた時は一ヶ月に10人という話だったはずだ。なのに2日間でその数が倍になっているという。
「倍になってんじゃねえか!」
「そうだバート。だからお前たちを呼んだんだ。確実に原因を突き止めてくれ」
「そういう事かよ…………」
確かに翡翠の洞窟は初心者向けの場所だ。だが、2日で10人が行方不明となると話は変わってくる。現状の最高戦力を投資してでも、一刻も早く原因を突き止めたいのだ。
翡翠の洞窟は駆け出し冒険者に経験を積ませるのに最適な場所だ。だがこのままでは、その翡翠の洞窟が永遠に使えなくなってしまうのだ。原因がわからないうちに駆け出しの冒険者を派遣するわけにはいかないのである。
「エイデン。行方不明者のリストを頂戴」
「ああ。準備してある」
一気に真剣な表情に変わったヒオリの言葉に従い、エイデンが事前に用意していたリストを手渡す。
「みんなFかEランク。それに若い子ばかりね」
「このランク帯なら不思議はないが、これが意図的なものであるなら人攫いの線もあるな」
リストを見た感じ、行方不明者は全員18歳未満の若者であった。それもほとんどが15歳未満の子供である。これを見る限り何らかの意図を感じずにはいられない。
「とにかく急がないとね。早速今日調査に向かおうと思うけど2人は大丈夫?」
「「ああ」」
ヒオリが言いながら立ち上がりクレイとバートの2人に問う。
男性陣は大きく頷きながらヒオリに続いて立ち上がる。
「3人とも頼んだぞ」
「ええ!任せておいて!」
エイデンからの頼みにヒオリは元気よく返し、3人の冒険者はエイデンの部屋を後にした。
翡翠の洞窟調査隊の発足だ。
冒険者ギルドを出る途中のロビー内。
冒険者たちでごった返した中、クレイはとある冒険者とすれ違う。Dランクのごく普通の冒険者だ。
すれ違いざま、クレイは紙の切れ端をすれ違った冒険者の懐に忍ばせる。
「「…………」」
お互い目も合わせず、無言ですれ違った2人の冒険者。
すれ違った冒険者は人知れず冒険者ギルドを出た後、周りに人の目が無いことを確認して紙切れを手に取った。
『翡翠の洞窟』
完結にそう書かれた紙きれを確認した冒険者は、すぐにその紙切れを口に入れて飲み込む。
(探れって事っすね、了解。さっそくオルティスさんとアデラさんに報告だな)
そう言ってその冒険者は下町の裏に消えていった。
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