第7話
青木マリアは幼稚園の頃から、姉と一緒にアニメを見て育った。
そのまま小学生、中学校と進学し、気づけばオタクと言っても遜色ないくらいに色々なアニメを網羅していた。
姉は高校に入ってアニメを卒業したが、マリアは声優のライブに行ったり、入れ込み方に拍車がかかる。
ステージで推しが踊る姿は、マリアには神々しく映った。
物販で購入した7色に変化するライトを手にし、一心不乱に掛け声を合わせる。
汗が飛び散り、高揚感に包まれる会場。
ライブ中、マリアはいつも思った。
マリア(憧れで終わらせたくない。私もいつか、絶対、こんなアイドルになる。声優になる!)
そして、強い思いで新宿にある声優養成の専門学校へと進学した。
しかし、こういったエンタメ界隈の場合、入学して早々、「ガチ勢」のレベルに圧倒され、退学するものが後を絶たない。
マリアもどちらかと言えば、「にわか組」で、声優としてのレベルは素人だった。
しかし、それでも2年間、食らいついた。
そして、他の学生と同様に、今度は自分が所属すべき芸能事務所を探すこととなる。
その日は、ミホ、ユメという友達とマックに来ていた。
マリア「事務所見つかった?」
ミホ・ユメ「ぜんぜ〜ん」
2人は全く同じトーンで声を発し、テーブルに広げられたポテトを口にした。
マリア「厳しいよね。私も大手は全滅。個人のとこ、当たってみようかな」
ミホ「やめたほうがいいよ。何か、詐欺とかあるらしいよ?高額なレッスン代払わされたり」
ユメ「…私、就職諦めよっかな。とりあえず今のバイト続けて、その先どうするか決めるかも」
みな、トーンが重い。
やはり、声優への道のりは遠いと、現実を思い知らされる。
そもそも、声優になるには大手芸能事務所の養成所に入るのが王道で、それでも倍率はかなり高い。
専門学校から大手事務所、もしくはオーディションに合格という道のりは皆無に等しかった。
ユメ「遅かったんだよね。本気で声優目指すなら、親と二人三脚で子役にでもならなきゃ」
ミホ「そうね。私ら、そういうの知らなかったし。でも、ユメとマリアに知り合えたから良かったかな」
ミホは強張った表情で無理やりはにかんだ。
マリアは飲み干したコーラのストローをすこすこやり、次に何と言おうかと考えた。
何とか希望を口にしたいが、喉もとで落っこちてしまう。
手にはカップから氷の冷たさが伝わり、周りの喧騒がうざったく感じた。
マリア(夢、終わらせたくないな…)
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