第3章『王宮ポテチ旋風! 忠誠の女騎士はポテチに跪く』

パート1: ようこそ王宮へ(ただし強制)

あの後、俺は有無を言わさず王宮から来た馬車に乗せられた。

もちろん、セレスティアも「聖騎士様をおいていけません!」と当然のように乗り込んできた。使者の人は一瞬困った顔をしたが、聖女様相手に強くは出られなかったらしい。結果、俺とセレスティアは、王宮の使者と護衛兵に囲まれながら、王都の中心にある王宮へと護送…いや、連行されることになったのだ。


馬車を降りると、目の前には巨大な城門がそびえ立っていた。

門をくぐると、そこには手入れの行き届いた広大な庭園が広がっている。季節の花が咲き乱れ、噴水がきらめいていた。


「……すげぇ」


思わず声が漏れた。前世の記憶でも、ここまで規模の大きい庭園は見たことがない。

隣のセレスティアも「まあ…」と小さく息をのんでいる。


庭園を抜け、いよいよ王宮の建物本体へと足を踏み入れる。

ひんやりとした空気が肌を撫でた。床は大理石でピカピカに磨き上げられ、自分の汚れたブーツが場違いな染みをつけてしまいそうで気まずい。

天井はアホみたいに高く、そこからは見たこともないような豪華なシャンデリアがいくつも吊り下がっている。壁には肖像画やら風景画やらが飾られていた。


(うわー、キンキラキンだ…床、ツルツル滑りそう…)


俺たちは無言で使者の後について、長い長い廊下を進んでいく。

途中、すれ違う人々――きらびやかなドレスを着た侍女、パリッとした制服の騎士や文官――が、例外なく俺たちに視線を向けた。

好奇心、訝しむような目、中にはあからさまな侮蔑の色を浮かべる者もいる。


(めっちゃ見られてるし!完全に不審者扱いじゃねぇか…!)


まあ、仕方ない。見るからにみすぼらしい、旅慣れた冒険者の恰好をした俺と、そんな俺に寄り添うように歩く絶世の美少女(聖女)。どう考えても異様な組み合わせだ。


(ああもう、居心地悪い…帰りたい…全部ポテチのせいだ!あのポテチ野郎め!…って俺かよ!)

内心で悪態をつきながら、俯き加減に歩く。


「聖騎士様…」


隣から、セレスティアが不安そうな声で囁き、俺の古びた革鎧の袖をそっと掴んだ。


「なんだか、落ち着きませんわ…皆さんが、じろじろと…」


彼女も、この重苦しい空気と無遠慮な視線に気づいているらしい。


(俺だって落ち着かねぇよ…心臓バクバクだっつーの…)


「……大丈夫だ。多分」


気休めにもならない言葉を絞り出すのが精一杯だった。俺はただ、深くため息をついた。


どれくらい歩いただろうか。

ようやく使者が、ひときわ大きな、装飾過多な両開きの扉の前で立ち止まった。


「こちら、謁見の間でございます」


使者は抑揚のない声で告げる。


「エリザベス王女殿下、並びに国王陛下がお待ちです」


「……!」


俺は息を飲んだ。国王までいるのかよ!話がでかい!

隣のセレスティアも、ゴクリと唾を飲む音が聞こえた。彼女もさすがに緊張しているようだ。


扉の前には、槍を持った衛兵が二人、直立不動で立っている。

使者が衛兵に小さく合図すると、二人は頷き、ゆっくりと重々しい扉に手をかけた。


ギィィィ……。


古めかしい蝶番がきしむ音と共に、扉が左右に開かれていく。

隙間から、まばゆい光が廊下へと差し込んできた。謁見の間の中は、相当明るいらしい。

中の様子はまだ見えない。ただ、何人もの人の気配が感じられた。


(さあ、どうなる…。俺の運命やいかに…?)


心臓が早鐘のように打っている。


(せめて、いきなり打ち首とかはやめてくれよ…?ポテチ作っただけなんだから…!)


そんな俺の必死の願いを乗せて、謁見の間の扉は、ゆっくりと、しかし確実に、その全貌を現そうとしていた。

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