第5話

 こうして、毎日毎日、同じ時間に、みすぼらしい服装を着た状態で店を訪れては、煙草臭い口で無駄口を叩き、その度に大きな笑い声を出す。話の内容も昔話ばかりで、最近の話をしようとしない。よくこんな人に付き合っていられると思う。もういい加減にして欲しいし、邪魔しに来ないで欲しい。


実際、ノジさんは農業の仕事をサボってここへ来ている。ノジさんには家族が一応いるが、誰も相手にしていないのか、ある時刻に特定の人が迎えに来るまで、誰もノジさんの様子を見に来ることはない。もしノジさんがここではない所に行ってしまったら、どうするつもりなのだろうか。まあ他人の家のことなんて知ったこっちゃないけど。


「2人とも笑ってないで、ノジさん、今日も仕事サボってるんしょ。早く帰れば?」

「ばばば、そりやあないね」

「だろぉ? 菅野君よぉ、さすがにそれは言い過ぎじゃねぇか?」

「同感、同感」

「ガハハハハハハ」


老人特有の大きな話し声・笑い声にかき消される、僕の弱々しい声。耳元にすら届かない。諦めて古書の片付けでもするか……。

 

 そして今日もまた、十一時を過ぎた頃、ノジさんの孫、草太さんが面倒そうな顔を浮かべながら硝子戸を開けた。手には、新聞紙に包まれた、大量の菜の花を持っていた。

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