24
第31話
ふっと風が笑った気がした。
古びた古本と僅かなお香の香り。
本に囲まれたこの隠れ家で。
雨の降りしきっていた薄暗さの横たわった森のようなこの場所に。
本の物陰から僅かばかりの陽が差し込んだ。
それを横目にスンっとひとつ鼻を鳴らして肺を満たせばまるで陽を浴びて凛と携えた新緑の清々しさ。
一歩踏み出した君。
揺れ動く空気はふわりと木漏れ日の香りを燻らせて。
温かい掌が髪を梳いた。
ひとときも。
一瞬さえも逃さない様にと絡める視線は二度とほどくことは出来ないだろう。
木の葉を隠すなら森の中。
私たちを隠してくれるのは…。
わたしは。
ーーーーーーーもう迷ったりしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます