第28話 拳の戦い

 おかしい……

 何でこうなる。


 ドン!バシッ!

 ジンの強力な打撃が時々身体にあたる。


 冷静になって考えてみれば、こいつの身体は、ほぼミスリル製なのだ。

 打撃が重いのは、最初から分かっていたハズだ。


 右のストレートを左腕でブロックし、懐に入り込んで右拳でボディーブローを叩きこむ。

 1cm程の表皮の下にあるのは、これもミスリルのボディーなのだ。

 身体強化していなければ、確実に拳の骨が砕けているだろう。


 ボディーブローを受けて後ずさりながら放ってきた右の回し蹴りを飛び退いて避け、一旦間を開ける。

 クソっ、ちょっと考えれば、こうなる事は誰だって分かるだろ。

 何で肉弾戦なんかにしちまったんだよ……


 高速で走りこんでくるジンは一瞬右へ身体を傾け、それに反応した瞬間左にステップを踏む。

 フェイントかよ!

 左わき腹をめがけて放たれた拳をかろうじて肘でブロックした直後に、蹴り上げたつま先が俺の顎を掠める。

 1cmズレてたら顎か鼻がもげてたぞ、このやろう。


 後ろに倒れこみながら、苦し紛れに放った右足の蹴りがジンの腹にまともに入った。

 俺はそのまま床に手をついてバク転しながら着地。

 モロに入った蹴りでジンの身体は宙を舞い、ドンと床に叩きつけらた後でゆっくりと起き上がってくる。


 おかしい、ジンならばあの程度は身体を捻ってネコのように着地できるハズだ。

 だが、ジンはそのまま左手をあげた。

 右手は胴着の破れた腹を押さえている。


「どうした。」


「腹の皮が破れました。」


 俺は慌ててジンに駆け寄り、左手をジンの腹にあてて修復してやる。

 5分ほどの攻防だったが、観客は満足してくれたみたいで、俺たちには熱い声援が降り注いだ。


「何で自分で修復しなかったんだ。そうすりゃ、戦闘だって続けられただろう。」


「マスターに治療して欲しかったんです。それに、これ以上続けたら、マスターの明日の試合に影響しちゃうでしょ。」


「そっか……」


 エリサとレツは順当に勝ち上がっている。

 俺たちは町で買い物をして、途中で不動産屋に寄った。

 確認してもらうと、隣の家と逆側の家も売りに出ていた。

 2軒で1億6千万を即金で支払う。

 中心地から離れているとはいえ、庭もそれなりに広く、お手頃な物件といえる。


 両側の家屋を撤去した後、整地して十分に固めてから基礎部分にコンクリートを流して鉄筋を組み込んでから水分を抜く。

 4人の人形(ドール)たちに指示を出しながら鉄筋を編み上げ、コンクリを流し込んで2階までの外壁を作り上げ、2階と屋上を作っていく。

 最初の家も屋根を撤去して、長さ35m奥行12mという立派な屋上が完成した。

 内側に呑み込まれた最初の家の面影はどこにもない。

 外壁には、スライスした大理石をタイルのように貼り付け、一見すると石を積み上げて作ったように見せかけている。


「アキラ、これヘタな有力者の屋敷より大きいんじゃない……」


「こんだけのサイズなら、ブレディーもやりがいがあるだろ。庭も好きなようにしていいんだぞ。」


「う、うんありがとう……」


 結界の魔石も追加して、防犯体制はばっちりだ。

 翌日は1日休みとなっている。

 その間に内装を仕上げ、床を張り窓のサッシを取り付けて照明を設置していく。


 地下水を汲み揚げて魔導ポンプの給水タンクに取り込み、そこからトイレやキッチン・浴室に配水したので、使い勝手もいいだろう。

 十分な広さの浴室も造り、ガラス張りの温室も併設してやる。

 ここには幻影結界も付けてあるので、外から見られる事はない。


 ヤマトの城下町で、ベッドや寝具・家具を買い付け、ついでに暗黒物質ベースで5人のメイド型ドールも作った。

 ローズ・ジャスミン・スイレン・プリムラ・チコリという、主に花の名前の5人だ。

 メイドとはいえ基本能力はジンたちと変わらない。

 スキルにメイドマスターを付与してあるが、他にも一通りの戦闘スキルを持たせてあり、レーザーも普通に使える。

 外見はバンパイアにしてあり、色白の肌と深紅の瞳に切れ長の目は中々そそるものがある。

 髪色は花の色にしてあり、ローズは淡いピンクでジャスミンは薄紫。

 スイレンは白でプリムラはムラサキ、チコリは青だ。


「指示はブレディーが出してくれ。買い物はメイドのお前たちが行けばいい。まあ、その見た目なら人間の町でも大丈夫だろうから転移して出かけてもいい。両方のカネは渡しておくから、欲しいものがあったら好きに使っていいぞ。」


「「「承知いたしました、ご主人様。」」」


 この家には、アキラ名の表示がしてあり、郵便受けや魔道具の呼び鈴も備えつけて在る。

 

「いやあ、この家快適すぎるよな……」


「そうね。ペロ達がいなければ森の家も必要ないかもしれないわね。」


「狩りの拠点や薬草の収穫には必要だろ。」


「まあね。エクストラポーションはここでも作れるんだけど、ペロ達が走り回るには森の方がいいかな。」


「ああ、サーバルのミンミとルキはこっちでも平気かな。今度連れてきて、郊外で散歩でもさせてみるか。」


 1日あけた3回戦。

 俺の相手はバンパイア・ナイトとかいう魔族だった。

 スキルを見てみると、精神攻撃を中心とした魔法にあわせて、近接戦闘のスキルも多く持っている。


「ほう。俺の作ったアダマンタイトのロングソードか。どうだ使い勝手は?」


「なにっ、これはお前が作ったのか。」


「ああ。片手間に作ったヤツだから、そんなに品質はよくないがな。」


「面白い。では、魔王となった俺様専用の鍛冶師として採用してやろう。」


「ワリイ。俺様系は好きじゃねえし、鍛冶に専念する予定はねえんだな。」


「安心しろ。イヤだと感じないように、隷属させてやるからな。」


 ホイッスルと同時に、転移で後ろに現れる。

 一歩跳んで斬撃を躱し、腹に黒棒で突きを入れる。


「な、何故、転移に反応できる……」


「まあ、この程度の斬撃ならいくらでも避けられるぞ。」


 矢継ぎ早に繰り出す突きに、再度転移。次は頭上でそれに対応すると瞬時に裏へ回ってきた。

 その攻撃には黒棒で受けてやる。


「アイデアはいいんだが、どうせやるならこれくらい必要だな。」


 転移を瞬時に繰り返し、全方向から突いてやる。

 ドガガガガッ!

 連撃が全てヒットして、バンパイアはその場に倒れた。


 黒棒でツンツンしても動かないので、俺は右手をあげて勝利を宣言した。


 それ以降も、5人程が俺の作った武器を持って登場した。

 驚いたのはベリルって竜人の軍団長だ。

 俺が最初に暗黒物質で作った魔王の魔剣レプリカを使っている。

 しかも、魔剣の名称がアーレアリヒィスタⅡ……エリサの本名がつけられている。

 何でだよ……バレたら俺のせいに……


「アキラ君、何かなあの魔剣は?」


「いや、確かに作ったのは俺だが、命名は俺じゃない!きっと、軍団長だ。そうに決まってる。」


「レプリカを作ってほしいってのは聞いたけど、何であそこまで作りこむ必要があるのよ!」


「……お前の魔剣のレプリカだぞ。そんないい加減なもの造れるか!つい、本気になったら……ああなった。」


「あれ、マイナス要素がないし、オリジナルを超えてないかい?」


「だ、だから本気になっちゃったって……。だけど、今回渡したロングソードの性能には劣るだろ。破壊不能もつけてないし。」


「はあ……、何だか予測しなかった事態になってるけど、まあこれまで見てきた中でベリルくらいしかいないもんね。」


「そうそう。まあ、俺は性格とかしらないけど、今日対戦したバンパイアみたいに俺様系はイヤだしさ。」


「そうは言っても、ベリルはクソ真面目で融通がきかないんだよね。」



【あとがき】

 3回戦終了です。

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