黄昏学園狂想曲~青春は異能でホラーで悪女は溺愛中!~
mynameis愛
【第1話】俊輔入学編『規律破りのプロローグ』
風が校舎の窓を軽く叩き、窓辺に飾られた小さな鉢植えの緑がかすかに揺れた。陽射しは柔らかく、何も知らない者なら、ここが平穏で普通の学園だと誤解するだろう。しかし俊輔には、この黄昏学園の「普通」とはほど遠い、奇妙で刺激的な世界が見えていた。春の心地よさの中に潜む奇妙な予感が、胸の奥でうずき始めていた。
入学初日というのに、すでに彼は規律破りを決め込んでいた。黒板の前で教師が淡々と説明する校則を、俊輔はつまらなそうに聞き流す。綺麗な字でびっしりと書かれたルールの数々が目に映るが、それを守るつもりなど毛頭ない。俊輔の唇が微かに弧を描いた。
「じゃあ、自己紹介を順番にしてもらおうか」
教師の声に促され、生徒たちが順番に立ち上がる。どの顔も緊張や期待、不安が入り混じった初々しさに満ちている。そんな表情をよそに、俊輔はゆったりと椅子に座ったまま、窓の外に視線を流した。学園の正門には、『黄昏学園』と書かれた風変わりな古い門柱が立ち、その上を黒いカラスが数羽、何かを警告するかのように旋回している。
「じゃあ、次の生徒」
教師の声に我に返る。教室中の視線が一斉に俊輔に集まった。面倒臭そうに立ち上がった彼は、ゆっくりと周囲を見回す。真っ直ぐに自分を見つめる視線、興味なさげに目を逸らす者、どこか警戒したような顔つきの者――皆、異能者たちなのだろうか。俊輔は静かな笑みを浮かべて口を開いた。
「俺、俊輔。よろしく」
素っ気ない挨拶は教室を一瞬の沈黙で満たしたが、次の瞬間、教師の小言がその静寂を破った。
「もう少し詳しく頼む。ここは一般的な学校とは違う。異能の自己紹介もするように」
異能の自己紹介。俊輔はそれを鼻で笑った。まるで見世物小屋だな、と内心呟きながら、それでも楽しそうに指を軽く鳴らした。
「まあ、見た方が早いかもな」
俊輔がそう言った瞬間、教室の中がざわめき始めた。彼の足元から無数の銀色の蝶がふわりと現れ、優雅に舞い上がっていく。その蝶たちは透明感を帯びた翅を羽ばたかせ、光を浴びてきらきらと輝きながら、教室中を幻想的な世界へと変えていく。生徒たちは驚嘆の声を漏らし、ある者は手を伸ばして蝶に触れようと試みたが、その蝶は掴もうとすると霧のように消えてしまった。
「幻術……?」
教師が呟くと、俊輔は軽く肩をすくめる。
「まあ、似たようなものかな」
異能を明かすことを面倒がって曖昧に濁す彼を、教師は呆れ顔で見つめた。
「異能の具体的な説明がなければ指導が困難になる。協調性を身につけることも、この学園の重要な目的だぞ」
「俺、協調性には興味ないから」
さらりと言い切り、俊輔は再び椅子に座り込んだ。教室はどよめきに包まれたが、彼自身は平然としている。その横顔は、退屈な規律に抗うことで生きる実感を得ているかのようだった。
「じゃあ、次の生徒」
俊輔の挑発的な態度に呆れつつ、教師は諦めて次の自己紹介を促した。隣の席で立ち上がった少女――優花が、小さなため息をついて口を開く。
「優花。特に言うことなし」
俊輔以上に素っ気ない彼女の挨拶に、教室はまた微妙な空気に包まれた。そんな彼女を俊輔はちらりと見た。優花は無表情に彼を一瞥し、すぐに視線を逸らした。無関心を装うその態度が、逆に彼女の中に何かを隠していることを俊輔には教えていた。
自己紹介は続く。俊輔はぼんやりと耳を傾けつつも、次々と現れるクラスメートたちの異能に興味を引かれていった。自分の規律破りが、この学園でどんな騒動を巻き起こすのか、考えただけで胸が躍った。規則に従う平凡な日常など、俊輔には何の価値もない。異能を持つ生徒たちとの衝突や友情、そして新たな自分との出会いこそが、彼にとっての青春なのだ。
窓の外では黄昏がすでに忍び寄り、空は徐々に赤く染まり始めていた。それはまるで、この学園の生徒たちが持つ複雑で美しい秘密を象徴しているかのようだった。俊輔は密かに微笑みながら胸の奥で決意を新たにした。この場所で、思い切り自分を試してみよう。そして、誰もが抱える「悪夢」とやらの秘密も、いずれ暴いてやろう――と。
規律破りなプロローグはこうして始まった。これから彼らを待ち受けるのが青春なのか、それともホラーじみた悪夢なのか。俊輔自身もまだ知らない未知の未来に胸を躍らせながら、彼は静かに深呼吸をした。そうしてまた、退屈な規則など簡単に飛び越えていくことを誓ったのだった。
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