第四話 ある女の狂愛

「お金が必要なんです!」

「……うん、そっか。もしかして、受付嬢さんが俺に頼みたかったことって、りむさんのお金稼ぎの手伝いだったの? いや、あの人がそんなこと頼まないか……?」

「私は、強くなりたいんです。ダンジョンを利用して、のです。両親が残した借金が、あるので……」

「それって、どのくらい……?」


、です」



 ーーーーー



 ダンジョン第一階層。

 片桐は、いつも通りにコボルトやスライムの生態を観察しつつ、一人で頭を抱えていた。


(二十億なんて返せない……と言いたいが、配信者ならば、可能なのが、彼女を危険なダンジョンへ突き動かしてしまうのだろう)


 片桐は、過去の記憶を思い出した。十年前、ダンジョンが発生した当時のことを。


(りむが最短で二十億を稼ぐ現実的な案、やはり、第十三階層の希少アイテム"白銀結晶"を採掘することだろう……。しかし、今の彼女では、あまりにも危険……十三階層には"ヤツ"がいる)



 ーーーーー



 ダンジョン入口、受付にて。


 受付嬢は、日々の仕事に追われながらも、常に片桐とりむのことを考えていた。


(片桐さん、貴方なら分かるでしょう? 二十億を貴方が肩代わりしろ、なんて言うつもりはありません。片桐さんには、りむちゃんを一人で希少アイテムを入手できる程度に育てて欲しいのです。何よりも、貴方がなのですから)


 受付嬢は、期待を膨らませ、一つの"依頼"を作成した。


「頼みますよ、片桐さん……」



 ーーーーー



 米国、某所にて。


 一人の女が、不機嫌そうにため息を吐き、一枚の書類に目を通して、激昂した。書類を破り捨て、近くに居た屈強な黒服の男に叫ぶ。


「……おい、なんだこの依頼は! "コイツ"はボクが昔殺しただぞ。何故復活している!」


 黒服の男は、身を縮こませ、か細い声で答える。


「わ、わたしに言われましても……困ります、


 凛さんと呼ばれた女、日本一の配信者、一凛にのまえ りんの怒りは収まる気配が無かった。

 凛は男の腹部に膝蹴りを入れ、男が腹を抱え込み、うずくまる。


「ガハッ……」


 凛は崩れ落ちた男の側頭部に蹴りを入れると、あまりの衝撃に男は十メートル程吹き飛んだ。


「うぐぁぁっ!……」


 しかし、凛の怒りはまだ収まらず、歯を食いしばり、一言つぶやいた。


「早く……あの男に、会わせろ……」

 


 

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