第一話 底辺配信者
十年前、世界規模の地殻変動が発生した。大陸の形状は大きく変化し、世界を混乱させた出来事だった。
中でも注目されたのが、多数の遺跡の出現だ。突如として、世界各地に未発見の遺跡が十つ出現した。
人々はそれを、“ダンジョン”と呼んだ。
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一面に広がる草原。雲ひとつない青空。空気も澄んでいる。土地の狭い日本の様に、遠くの景色に山々の連なりが観測できない、広大な土地。
ダンジョン一階層である。
そこには一人の男がいた。
古びた服に安物のレザーを重ねた物を貼り付けただけの装備を着用、錆びついた片手剣、そして鉄製の小さな盾を持っている。
まるでゲームの雑魚兵士の様な格好が、男の低い身分を象徴している。
そして、何よりも男の疲れ切った顔だ。童顔であり、実年齢よりも若く見せていることが救いだろう。
男の名は、
元は田舎の工場で働いており、ひたすら同じ毎日を過ごしていた。
地殻変動の影響で、その会社が倒産。職を失った片桐は再就職せず、ダンジョンに潜ることを決めた。
しかし、大きく名を挙げることはなく、ダンジョンに生息する謎の生命体“モンスター”の中でも最弱の存在、“コボルト”をひたすら討伐する日々を送っている。
さっそく、片桐は前方に一匹のコボルトを発見した。コボルトは片桐に気づいていない。
すると、片桐はポケットからビー玉程度の大きさのゴツゴツした物体、“銅結晶”を取り出した。それを、持っている盾の中心にある窪みにセットする。
その瞬間、銅結晶は小さく鈍い、線香花火程度の光を放った。片桐はその光を確認すると、コボルト目掛けて静かに走り出す。
「……」
片桐は、コボルトが目線を移動させていることに気付く。
「……?」
コボルトが片桐に気づく。その時には、片桐はコボルトの目の前まで接近していた。
「はッ!」
片桐は片手剣をコボルトに振り下ろす。
コボルトは頭部が割れ、黒い液体を噴出させ、霧散した。
片桐は、すぐにポケットからメモ帳を取り出し、文章を書き込んだ。
[一回層、コボルト、約三十メートル前方、動作なし、目線移動なし、気づく様子なし。約十五メートル接近、目線移動開始、約十メートル接近、こちらに気付くが、片手剣の間合い。頭部に斬撃、一撃で霧散。ドロップアイテムなし。]
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「受付嬢さん、片桐です。本日の”配信”はコボルトでお願いします」
「かしこまりました。いつもお世話になっております」
ダンジョンの入り口にはダンジョン管理団体“ギルド”が運営している受付が存在している。役割は、役所と同じ様なモノだ。
「……何度も言っていますが、片桐さんの配信は、簡単に真似できるものではないんですよ? 自信を持ってくださいね!」
「……誰でもできる仕事です」
「そうですか?」
「ええ。退屈な仕事だから、誰もやりたがらないだけです」
「では、必ずしも片桐さん一人がこなす必要は無い、と?」
「……そりゃあそうです。こんな簡単な仕事」
「じゃあ、私が片桐さんにしか出来ない仕事を頼みます」
「…………はい?」
「実は先日、渡米していた日本一の配信者である
「それが何か……」
「彼女は久しぶりに日本のダンジョンに来るわけですから、片桐さんは
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