第8話 6
<
揚陸艇程度なら余裕で五隻は並べられそうな、巨大な回廊だ。
『――確認しました! ここは<
さすが若! よっ! 神殺し!
エイトがテンション高めな早口で告げてきて――
『このまま行けば、この船の中枢――クレアちゃんのトコまで一直線です!』
その言葉に従い、俺は即座に騎体を前進させた。
そんな俺達を阻むかのように、肉質な回廊の内壁が無数に肉芽のように盛り上がったかと思うと、惑星ジャバーの原生原始生物――
まるで餌を取り合うかのように、小型ドリルのような牙を無数に生やした口腔から粘液を振りまきながら、触手達が俺達に殺到する。
「うおおぉぉ――ッ!
今こそ猛れ! <
レオ先生の叫びと共に、帝騎の背後で獅子の双眸が強く碧く輝いた。
「――
帝騎の背後で翼のように開かれていた<
「――おおおおらあああぁぁぁぁぁ――――ッ!!」
上下左右――全周から降り注ぐ触手を、勇者の拳は宙を駆けて薙ぎ飛ばしていく。
『……魔法制御によるロケットパンチ機構……久々に見ましたが、マジでイカれてますよねぇ……』
呆れ半分といった口調で、なにやらエイトが懐かしそうに呟く。
『――だからこそ! そのイカれた力を今は存分に振るいなさい! 勇者!』
そう続けたエイトの言葉に――
「――ああ! 背中はオレに任せろ!
ライル! おまえは前に進む事だけを――姫様を救う事だけを考えてくれ!」
レオ先生は力強く応じて、俺を勇気づけてくれる。
「――はいっ! 先生!
《――
帝騎の前方に三枚の魔芒陣――
「おおおぉぉぉぉ――――ッ!!」
「ダアアアァァァァ――――ッ!!」
襲いかかってくる触手はレオ先生が薙ぎ払ってくれるものの、次第に湧き出す密度が増え始め、俺は回避騎動を織り交ぜながら、さらに加速して前へ。
ともすれば内壁に向かって墜落してしまいそうな恐怖を押し殺す為に、俺はレオ先生の咆哮に負けじと咆声をあげる。
『――あぁっ、ちくしょう!? まだそんな手を!?』
と、エイトが焦った声をあげ、俺の視界に
相対距離二キロほどだろうか。
内壁から伸び上がった触手が溶け合って一体化し、駆け抜けて来た
《――後方敵性個体、さらに加速……》
<近衛>が呻くような声で報告してくる。
《二十四秒後に追いつかれます……》
『――中枢到達まで七十三秒足りない計算……』
エイトもまた苦渋の声をあげた。
俺の腕じゃあ、この回廊を触手を掻い潜りながら、なお加速するには不安ある。
頭が真っ白になりかけたその時――
「――行け! ライル!」
《――<
「――レオ先生!?」
「――止まるな!!」
そう俺に叫びながらも、レオ先生自身は騎体を元の獅子型に変形させて、その場に留まった。
「言っただろう! 背後はオレに任せろと!
――後は頼むぞ、<
『その名前で呼ぶんじゃねーですよ! ですが、請け負います!』
《
――当騎の認識性能が拡充されました!》
<近衛>が告げた通り、不意に前方から迫る触手の動きがはっきりと捉えられるようになった。
『……若、ビビってんじゃーねえですよ!
あの子を――クレアを助け出すんでしょうっ!?』
触手の群れを掻い潜る中、エイトが咆える。
『その為に……若の信念を押し通す為に、わたし達家臣は居て――』
避ける、避ける、避ける!
騎体を捻り、時にはあえて手足を触手や内壁にぶつける事で強引に軌道を捻じ曲げて、とにかく回避に専念して回廊を突き進んだ。
『そんな若だからこそ、世捨て人となっていた勇者さえもが応えた!』
――やがて。
肉質な回廊の向こうに、虹色の刻印が施された巨大な球体が見えた。
凝らした視界に反応し、騎体が球体の根本で無数の刻印と触手に絡みつかれたクレアの姿を捉える。
突入前にミレディに観せられた映像そのままに、彼女はいまだ意識を失ったままなのか、ぐったりとしていた。
「――見えた!」
思わず叫ぶ!
『――ところがそうはいかないわ』
と、クレアのすぐそばに立ったミレディが、勝ち誇った笑みと共に告げた。
――不意に。
両足に激痛が走って前進が止まる。
見下ろすと、回避したはずの触手から細い触手がさらに伸びて、騎体の両脚を縛り上げていた。
「――ここまで来て……」
自由になる両手を――クレアに向けて必死に伸ばす。
あれほど駆けて来た騎体は、しかし今は一ミリも前に進められない。
『――そうはいかないってーのは……』
「……エイト?」
『こっちのセリフなんですよっ!』
唐突に顔を覆っていた仮面が霧散し、騎体との合一が解除される。
《――騎体制御、強奪されました!》
焦ったように<近衛>が告げる間にも、帝騎は自らの胸部装甲を引き裂き、その指先で
『言ったでしょう? わたし達家臣は、若の信念を通す為に存在するんです!
――だから、行ってください、若!』
帝騎が右手で俺を振りかぶる。
『……レイア様の息子は――世界最新の神殺しは――』
視界が一気に流れ出す。
《――対急加速、耐衝撃魔法!
<近衛>が対処する間にも、両脚を拘束された帝騎に内壁から続々と湧き出した触手が殺到する。
『――一味違うと世界に思い知らせてやってくださいね……』
そう言い残して、エイトは帝騎と共に触手が織りなす肉壁の中に消えた。
「エイトォ――――ッ!!」
周囲に俺の絶叫がこだまし――
《――重力面接近! 着地に備えてください……》
沈痛な<近衛>の声が俺の耳を打った。
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