第8話 そんなママはネコちゃんなのだ。

 すると、秋桜ちゃんもネコの耳真似をした。幼児とママさんがネコ真似……ちょっとシュールすぎる光景だ。


 「秋桜も、おにーちゃんのネコちゃんにしてにゃん」


 こっちは文字通りの幼児用語的な意味らしい。


 俺は秋桜ちゃんに言った。


 「でもね。ネコちゃんの真似は、他の人にしちゃダメだよ? 男の子は勘違いしちゃうから」


 すると、その様子をみていた舞雪さんが言った。


 「秋桜ばっかりずるいニャン」


 ごろにゃんな舞雪さん。

 か、かわいい……。


 俺は思った。

 きっと、舞雪さんは誰かに甘えたいのだ。


 だから、舞雪さんの頭をナデナデした。


 「いつもお疲れ様。舞雪さんは頑張ってて、偉い」


 すると、舞雪さんは両目を擦って、本当に「えーん」と泣いてしまった。小さな子供みたいな泣き方。


 きっとこれが、年相応な等身大の舞雪さんなのだ。


 なんだか愛おしい。

 それに、舞雪さんが、きっと大変な思いをしてきたかと思うと、胸が苦しくなる。


 これは愛情?

 それとも同情?


 同情だとしたら、すごくすごく失礼なことだ。慎まやかに暮らしていたとしても、頑張って秋桜ちゃんを育てている舞雪さんは、すごくかっこいい。


 でも、俺も。

 そんな彼女が大変なときに、支えたい。


 ……学生が何言ってるの? って思われそうだけど。


 しばらくすると、舞雪さんの涙も落ち着いた。


 キスしちゃおうかな……。

 目が合うと、舞雪さんも瞼を閉じた。


 これってOKってことだよね?


 顔が近づいていく。



 「ネコちゃんはチューするにゃん?」


 そういうと、割って入った秋桜ちゃんが俺の頬に熱烈なキスをした。そして、唇を離すと、びろーんと、ヨダレだか鼻水だか分からないものが糸を引いた。


 舞雪さんは目を点にした。


 「ご、ごめんなさい。秋桜っ。きたないでしょ。だめっ」


 「何でダメなの。お口はちゃんとママに残しといたのにぃぃぃ。えーん」


 ……秋桜ちゃんは号泣した。

 俺の頬には、フレッシュな鼻水が追加で糸を引いている。


 「汚くなんてないよ? でも、お口は拭こうね」


 俺はそう言って、秋桜ちゃんの口を拭いた。

 口を拭かれながらも自己主張する幼児。


 「ママもはやくして。こすもすは、妹が欲しいです。早くしないとまた泣くからかねっ」


 秋桜ちゃんが凝視している。

 すごい集中力だ。


 舞雪さんは、真っ赤になって俯いた。

 もしかしたら、酔いが醒めてきたのかな。


 でも、俺に近づくと、耳元で囁いた。


 「こすもすが納得しないから、頬に真似だけお願いします」


 やっぱ、いつものクールな舞雪さんだ。


 舞雪さんが唇を近づけてくる。

 そして、俺の頬に息がかかるくらい近づいた時。


 チュッ。


 唇と唇が触れ合った。

 普通にキスしてしまった。


 秋桜ちゃんが、俺の顔を強引に回して押したのだ。そして、幼児は仁王立ちでいった。


 「いつもママ、隼人くん抱き枕にチューして練習してるよっっ。おにーちゃんからしてくれるかなぁ?って言ってた!! だから、チューは、おにーちゃんからしないとダメっ!! 男の子でしょっ!!」


 ……ハイ。

 おっしゃる通りです。


 ヘタレですみません。

 

 

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