第156話「ゲルハルト団長の来訪」

#第156話「ゲルハルト団長の来訪」


 戦争が終わってから一週間が経った頃、ゲルハルト団長を筆頭に王国騎士団の人達がヴェルド領にやってきた。

 父さんが中心となって出迎え、騎士団からもバルド団長をはじめとした主要な面々も並んだ。


「遠いところをよくお越しくださいました」

 父さんは深々と頭を下げ、ゲルハルト団長も礼を返した。いつも元気なゲルハルト団長が珍しくやや疲れているように見えるけど気のせいかな?


 その後、例によって風呂、そしてチーズなどをふんだんに使った食事などが用意され、長旅で疲れたゲルハルト団長や団員たちにはゆっくりと体を休めてもらった。


 食後の会談ではまずゲルハルト団長から謝罪の言葉があった。

「申し訳ない。今回の帝国の動きを、我々王都の側で十分に掴めていなかった。想定が甘すぎた。もっと早く警戒すべきだった」


 思いもよらぬ謝罪に、俺は驚いた。まさかゲルハルト団長が謝罪するとは思わなかったからだ。


「それは仕方のないことです。誰もここまでの帝国の侵攻を予想できませんでした。ただ、今後とも情報共有を密にしていただけると助かります。今後も対応は必要でしょう」と父さんは返事した。

 びっくりしているだけの俺とは違いすぐに対応できるのはさすがだ。


 それからゲルハルト団長は俺の方を見て微笑んだ。

「ルカ、今回は大活躍だったと聞いている。助かった、ありがとう」


 うわ、今日のゲルハルト団長はどうしたのだろう?素直に褒めるとか本当にらしくない。悪いものでも食べたのではなかろうか?

 いつもは「ガハハ!」とか言っている脳筋なのにのにな。俺はどぎまぎした。


「いえ、みんなで力を合わせた結果です。俺一人の力じゃありません」と答えると、


「いつものように謙虚だな」と笑われ頭をがしがしされてしまった。まあそうやって普通に笑っている方がありがたい。真面目な顔をされるとかえって緊張する。


「ああそうだ、第十王女アリシア様が君をとても心配しておられたぞ。ルカは怪我していないかとオロオロしていたぞ」


 俺は「元気にしています伝えて頂ければ」とお願いした。


 そう言えばアリシア様は先日来たばかりだ。その時にもいろいろと話したから気にかけてくれているのだろう。ありがたいことだ。

 それにしてもアリシア様がオロオロしているってどんな感じなのだろう。それはちょつと想像が付かない。



 その後、話題はやがて戦争の話から捕虜の扱いに移った。そこで俺は思い切って団長に頼みごとをした。


「捕虜の中に設計士や鍛冶師の方々がいます。彼らは即戦力ですでにうちでもの作り関係の仕事をして働いてくれています。もし可能であれば、開放と同時に正式にこの領で雇用したいです。あと彼らの家族や仲間を帝国から引き取れるならば、その交渉もお願いしたいのですが」


「設計士と鍛冶師だと? なんでそんな人間が捕虜の中にいるんだ?」と団長が眉を上げた。


「戦争で使っていた長距離兵器のメンテや細かい調整をしていたとのことです。それで命中率を上げたらしいですよ」


「なるほど、戦場で兵器の調整や修理を担当していたのか。それならば納得だ」



 おっと、帝国の設計士や鍛冶師が武器のメンテなどのために随行していたことをゲルハルト団長は知らなかったのかな?ならば好都合だ。武器がうちでも使えるとなれば賛同してくれるだろう。


「はい。すでに帝国の兵器も解体や再組み立ても進んでいるので、すぐにうちでも利用可能になります。そのためにも彼らは必要だと思います」


「でもそれは面白いな。帝国の武器は相当に強力だと聞いている。その技術をそのままこちらに取り込めるのは大きい。第二皇子エドヴィンという大物が捕虜にいるから交渉は圧倒的にうちが有利。状況にもよるがおそらくは交換条件の1つとして家族や他の設計士や鍛冶師仲間を引き取ることも可能だろう。うちの戦力が上がり、逆に帝国の戦力を削げるならば好都合だ」


「よし、それは俺に任せておけ。王や宰相に話を通そう。王国にとって都合の良い話だから、おそらくは問題ない。帝国も第二皇子エドヴィンを返してもらえるならばといくらでも交渉に乗ってくるはずだ」


 俺は深く頭を下げた。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「ならばその設計士達にも話を通しておいて欲しい。こちらに連れてきたい仲間や家族がいれば引き受けるとしてな。ただし密偵の可能性もあるからその辺りの注意は怠らないようにして欲しい」


「分かりました。確認しておきます。そして注意もします。受け入れや監視についても万全の準備をする予定です。定期的に情報も報告します」


「ああ、ならば問題はないだろう。ああでも俺もその設計士や鍛冶師には一度会っておきたいな。実際に目で見て確認したい」


 基本的には第二皇子エドヴィンは数日後に王都に送られ軍法会議で死罪相当になるらしい。

 とは言え帝国の第二皇子だ。そのまま死罪にすることもできなないので多額の賠償金などの条件を付けて帝国に引き渡すらしい。

 そして、その条件の1つに設計士や鍛冶師の家族をこちらが引き受けることを入れるという形。

 なるほどそうすればうまく進みそうだ。あとはおそらくは問題ないだろうがこちらで引き受ける人たちの監視などは当面必要だろう。もちろん大丈夫だとは思うけど念のためね。


 そして、そのままうまくいけばリシュアさんの憂いが無くなるだろう。もしかしたらカイ兄との仲に進展も見られるかもそれない。まあ、その辺りは本人同士の問題なので後は知らないけどね。

 ともかく、俺はなかなか良い仕事をしたのでは?と思っていたらリナ姉とエマ姉が大きく頷いている。良かった、俺のゲルハルト団長への依頼はうちの女性陣から見ても間違いなかったらしい。


 思えば、ほんの一週間前は戦争だった。

 でも今は捕虜の扱いや外交交渉の話をしているのだから不思議なものだ。

 戦いの余韻はまだ残っていて複雑な気持ちも残っているけど、なんだかんだ言ってもいろいろなことが良い方向に少しずつ前に進んでいる――そう感じた。


---

次回、超久し振りにリリア姉が登場?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る