第5話 真実

 流石にこのタイミングの訪問は、心臓に悪い。


 実家とはいえ、母がグループホームに入った今、家には自分しかいない。


 回覧板でも届いたのかとインターフォンのモニタに目を向けると――


「!?」


 そこには、バッツィーの姿が映っていた。


 目のあるべき場所は落ちくぼんで空洞になっており、赤い血をだらだらと流している。


 目だけではない。


 鼻からも、耳からも、口からも血が零れている。


 なんだ。


 なんだこれは。


 アイツは死んだはずだ。


 いや、仮に助かったとしても、こんなところにいるはずがない。


 誰かのいたずらか。


 いや、あり得ない。俺がこの動画を観ているなんて誰も知らない。


 何だ。何が起きている。幻覚か。


「お前……だろ……」


「!!」


 応答ボタンを押していないのに、声が聞こえて来る。


 そんなはずはない。あり得ない。


 やはり、幻覚だ。そうに違いない。


 罪の意識が、俺に幻覚を見せているんだ。


「お前が書いたんだろ……?」


「違う!! 俺じゃない!!」


「ウソをつくなァ!!!!!!!」


 玄関のドアが激しく叩かれる音がした。


 まるで車が激突したかのような衝撃で、家自体が震える。


 その勢いで、自室のドアが開き、玄関まではっきり見えた。


 何かが、玄関のドアへ狂ったように、ぶつかり続けている。


「石噛地蔵の事を書き込んだのは俺じゃない!!!」


「違うだろ。お前が書いたのは、石噛地蔵のWikiだろ!!!!!」


「!!??」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る