第27話 わたしダーリンのためにがんばるね!
「すんません。私のようなゴミが生意気を言ってすみません……」
『あ、いえいえ。謝ってもらえればこちらもそんな……』
『へのじちゃんさん、でーぶい赤ちゃんなんだ……』
いつの間にか問題が起きいつの間にか解決していた。バタバタと準備をしていた
問題はないかと判断し、やい子は配信を始めると皆に告げる。
メンバー構成は本来なら『どどんぱち』所属の二人にへのじちゃんという構成だったが、100万人達成してしまったし本人もなんか帰ろうとしないため、急遽ゲストとしてへぶんがへのじちゃん側にたって参加する事になった。
「流れとしては当初の予定通りまず最初に挨拶と知育ゲーム対決。最下位の大人には罰ゲーム配信をやってもらおうと思うんですが大丈夫ですか?」
『バッチコイです!』
『一粒で二度美味しい。むしろ負けたい……!』
「あああああの罰ゲームとかきききき聞いてないんですがぁ!?」
「そりゃお前呼んでないからな」
「はんにゃーはーらーみーたー」
最下位には罰ゲーム。その単語に目を輝かせるVライバーたちと、般若心経に逃げるへぶん。配信に対するスタンスの違いが如実に表れたと言える姿だ。
選択されたゲームは、
というのもこの順番ゲームでの敗戦によって
所属事務所『どどんぱち』にとっても初の金盾ライバーの誕生にこれも全て『へのじちゃんねる』様のお陰ですと社長が菓子折りを持って訪ねてきたのは
ここは汚名返上を兼ねて再度へのじちゃんとの対戦を、という建前でもう一回負けたらそれはそれで美味しいな、というどっちに転んでも得しかない内容であり、だったらやるしかないだろう、というのが『どどんぱち』側からの猛プッシュの内容である。
『へのじちゃんねる』側としても非常に好評だった対戦であるし、インフェルノ順番ゲームは今や大人気コンテンツの一つとなっているため数字も取りやすい。拒否する理由は特になかった。
【第一問 遮二無? ?の中身は?】
『ザッケンナコラー!』
『ばぶぅ……四字熟語とか習ってないばぶよぉ』
「え、なにこれ読めない」
「
問題は割と素で
いや、しゃくに関しては半分くらい以前の伝説に味を占めて無回答にした可能性があるが、残りの二人は本当に感じが読めなかったかもしれない。場を眺めていたりんとやい子を含むスタッフ一同は二人の様子を眺めてそう判断した。
これ計画倒れになるのでは? という不味い予感がプンプンする中、一先ずトータル正解数で判断しようという事でゲームは続行。そして流石に大人全員が赤ん坊に敗北は不味いと考えたのか、しゃくはそれ以降立て直して悲鳴を上げながら問題に正解し続け、べいびは割と本気で読めない漢字に当たったり記号問題で躓いたり何故か普通に紛れてくる英文系の問題で全ミスしながらもなんとか半分ほどの正解率を保ち、記号系と英文系が苦手なへのじちゃんとしゃくが大体同じくらいの正解率でゲームは終了する。
「…………」
『ええと。最下位は……まぁ』
『へぶんさん、歌詞とかも自分で書いてるんじゃ……?』
「
そして栄えある最下位は漢字問題を全ミスし記号問題も全ミス。英文系はむしろ点数が良かったがべいびに全体の点数差で追いつけなかったへぶんになる。
「いや、あのぉ……音で聞けば、分かるんですよ? しゃにむにとか、しくはっくとか。か、替え玉ライターなんか雇ってないですから! ほんとですって!」
言い訳のように悲鳴を上げてへぶんが弁明する。これは本当の事であり、へぶんは画数の多い漢字を覚えることが苦手で全ての文字を音で覚えている。それらを文字に起こしてメロディと合わせるのが彼女の作曲法であり、歌詞に割り当てられた漢字は世に出す際に構成を担当するスタッフ(雇われ)が読みやすいように書き換えてくれているのだ。
ただ、この手法で作っていることをへぶんは公開していないため、この記念配信が終わった後に起こった炎上でへぶんは過去の作曲した際の作詞用のノートなどを世に晒し、きったねぇ字でほぼひらがなで書かれた作詞ノートの内容で替え玉疑惑を払しょくするがもっと別の大切な何かを失う事になる。
まぁ、そんな未来の話は兎も角として、今に話を戻す。
この居た堪れない空気の中、躊躇する『どどんぱち』側のスタッフに変わり、やい子が鈴棒と木魚をへぶんの前にとん、と置く。歌え、という意思表示である。
うっそだろお前、という
その視線にぶるぶると体を震わせるへぶんを、隣で赤ちゃん椅子に座るへのじちゃんがポンポン、と腕を叩いて励ました。
「
「へのじちゃん……ううん、ダーリン! わたしダーリンのためにがんばるね!」
『えぇ……』
『へのじちゃんさん、ジゴロだ……』
へのじちゃんからの励ましの声?を聞き、へぶんはひしっとへのじちゃんに抱き着――こうとしてやい子に首根っこを掴まれる。流石に良い大人がベイビーをダーリン呼びして抱き着くのは見過ごせなかったのだろう。その様子を眺めていた
だがへぶんはそんな周囲の視線に心を貫かれてもくじけないし顧みない。愛しのダーリンからの激励を胸に、彼女は全力で『読経ロック』を歌い上げた。その歌声は本当に素晴らしいもので、聴くもの全ての心に確かな愛と勇気を気付かせてくれるものであった。
0歳児に知育ゲームで完敗した後0歳児に愛を叫ぶ歌い手という不名誉すぎる称号を得て伝説の歌い手となったへぶんは、もちろんこの後しばらくの間炎上する事になる。0歳児にダーリン呼びはいろいろ不味かったのだろう。
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