第5話 師匠

「ただいまぁ…」


 気の入らない声が玄関に響く…

 今日は大変だったな...主に苑夏のせいで...

 私はだいたいあんなことしたくなかったんだ...だって私ほんのちょっと人見知りだし、人に見られるのがすごく苦手...誰かに見られてるって思うと考えがまとまらないし声もでない...

 そんな私に不特定多数に見られているという経験は少し刺激が強すぎる...

 明日苑夏にあったら絶対文句言ってやる!

 そう意気込み部屋に向かう...


「あれ?電気ついてる?ガチャ──うわっ煙たっ!」


 部屋を開けるとリビングの扉を開けると物凄い量のヤニ臭い煙がもくもくと向かってくる。

 煙で少し視認性は落ちているがソファーに誰かが座っている。

 感情の読めない虚ろな目、銀髪でボサボサな長い髪、目の下には濃いクマができており若干猫背で不健康そうな見た目、だがそれでも綺麗に見えるのはこの人の素材がいいせいだろう...


「師匠帰ってきてたんですか!?来たなら連絡してくださいよ!あと煙草はやめてください!いくら超越者でも肺は悪くなるんですから!」


「んぅ〜?あぁ涼奈か...」


「酒臭ッ!師匠お酒も煙草も辞めてくださいとあれ程...って隠そうとしても無駄ですよ!」


 私に怒鳴られてしれっと酒と煙草を自身の【領域・・】に隠そうとした師匠から奪い取ろうとダッシュして手が...届いた!


「甘い...」


「へ?...ガッシャーン」


 酒の瓶を掴んだと思ったらそのまま腕を掴まれ柔道の要領で床に投げ飛ばされる...


「痛っつー...何するんですか師匠!」


「私から『生きがい《酒と煙草》』を奪おうとしたお前が悪い...」


 無表情で抑揚のない声で言っているがどこか不機嫌そうなのは伝わってきた。

 とりあえず話題を変えよう...その隙に没収してしまおう、そうしよう。


「それはそうと師匠いつ帰って来たんですか?今回は長くなるって言ってたのに...」


 師匠がこの家にいる時間は短い...基本は仕事(※どんな仕事か以前聞いたけど答えてくれなかった)に出かけていて早くて三日長い時は半年周期でしか帰ってこない、この前出ていった時は「今回は長引く...」とだけ言って出かけて行ったがまだ半月しか経ってない...

 私の問いかけに師匠は少し間を置いたあとバツが悪そうに語り出した...


「今回は海外だった...でも日本酒を持って行くのを忘れていた...」


 人生の汚点とでも言いたげに苦々しく師匠は言葉を吐く(と言っても言葉には相変わらず感情の機微は感じられないが)

 少し無口でわかりずらい師匠の言葉を訳すと「今回の仕事は海外だったけど私としたことが日本酒を持っていくのを忘れていた...だから飲みに帰ってきた」ちょっと私の推測が入ってるけどだいたい合ってるはずである...

 師匠はお酒が大好きなのである。酔っているところを見たことはないがほぼずっと飲んでるんじゃないかってぐらいには...だけどその中でも日本酒は本人の中では別格らしく一日に最低でもボトル三本分は飲まないと体調が悪くなるらしい...私としてはお酒を飲んで欲しくないのだが...


「...ところで配信はどうだった?」


「ブフゥー...な、なんで師匠知ってるんですか!」


 飲もうとしていた水を盛大に吹き出してしまった...だが今のはそんなことはどうでもいい!

 世間の情報に疎い師匠が何故私が配信したことを知っている!?


「苑夏から送られてきた...」


「...‪💢」


 あいつ明日あったら覚悟しておけよぉ...

 静かな怒りに震えながら床と机に飛び散った水を拭く...


「あれは続けておけ...」


「へ?」


 突然言われた師匠からの予想外の言葉に一瞬私以外の時間が止まったようにすら感じた...


「師匠本気ですか?冗談なら怒っちゃいますよ...‪💢」


「お前はちょっと対人コミュニケーションがおそ松すぎる、少しは人に慣れろ」


「むぅ...」


 ぐうの音も出ない...が私は絶ッ対にしたくない。

 第一私にメリットが少なすぎる...人と関わらないでも死にはしないし別段問題はないと思うし、何より私に対人コミュニケーションというのは高等技術すぎる...


「私のメリットは...?」


「もしかしたら私が煙草をやめるかもしれない...あ、もう仕事の時間...行ってくる」


「ちょっ...師匠!」


 師匠はそういうと窓の方へ走って行きそのままあっという間に夜の闇に消えてしまった...

 あそこに酒を入れないところはちゃっかりしてるし、しかも絶対に守る気はないな...


「そういえば師匠って本当にどこで働いてるんだろう?...あっ没収するの忘れてた!」


 〜〜〜


 銀髪の女が一人建物のエレベーターに乗り込むそしてボタンを手馴れた手つきで順番に推していく...


『IDを確認...成功ようこそNo.0様』


 無機質なシステム音と共にエレベーターが到着する。

 開くとそこは大きな丸机に椅子が20数個置かれており全員ではないがまばらに人が座っている...

 そのうちの1人のどこかヤのつくイメージがする男が立ち上がり女に話しかける。


「よぉ英雄様?化物様子はどうだったか?やっぱり殺した方がいいんじゃねぇのか?」


 男はそう言いながら自身の右親指で首を掻っ切るジェスチャーをする。

 女はそれに対し特にこれといった反応も見せないまま言葉を連ねる...


「彼女は【特異点イレギュラー】だ今すぐ殺すことはできない」


「はっ!そうかい?俺はてっきりあんたがあの化物に情が湧いちまったとでも思ってたんだがなぁ?」


 女の返答に男は納得がいかないとでもいうように言葉を被せる。


「そんなわけが無いだろう?私が望むのは今でも昔もこの世界の安寧それだけだ。それに【特異点イレギュラー】は必要になる」


「ケッどいつもこいつも【特異点】、【特異点】...化物なんてさっさっと殺しちまえばいいものを...」


 男の呟きに対して初めて女の顔が少し険しくなる...


「彼女が暴走した場合は私が斬るそう中央議会で議決されたはずだそれ以上の言葉は慎め」


「ウッ...」


 言葉と共に女からとてつもない圧力が放たれる、これには男も膝をつき立ち上がることができない...


「ストーップ!リーダーそこまでにしてね?ここにはリーダーの威圧に耐えれる人も多くないんだから」


「...No.7か...すまない意識していなかった」


「別にいいのいいの悪いのはそこの14なんだから」


 仲裁に入った長身の男のおかげでその空間の威圧感は消え去った...

 それと同時に動けるようになった男は大きく舌打ちをしてそのまま円卓の席へと戻って行った...

 女と仲裁に入った男もそのまま席に向かう...


「これより議会を開始する!」


 数十分後に円卓に大きな声が響き渡った...


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 読んでいただきありがとうございます!

 師匠出す予定だったので早く出せて良かったです(*^^*)










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