第5話 ガーデニング
「ここがマーガレットの屋敷か…」
ユーリス第一王子は屋敷を見ては目を輝かせている。
王家の人間ならもっと素敵なお屋敷なはずなのに、この屋敷にそこまで目を輝かせなくても…なんて思ったけど、どこか嬉しかった…
私は派手なものが好きじゃない。
ただただ私は静かな暮らしがしたいの。
この屋敷を広い庭のところに建ててもらったのもそのため。誰にも邪魔されず、静かに、そして平和に暮らしたいだけ。
「マーガレット様!苗たちはどうしますか…?」
「そうね…一度さっき買った食料は屋敷に運びましょう。運び終われば、植えていきましょ!」
「承知いたしました!」
今日の夕食のために色々食料を買ったからすごい量の荷物。レイスはそれを一人で運ぶと言ってたけど、五袋もある荷物を一人で運ぶのは良くないと私が言えば渋々袋を渡してくれた。
「マーガレット。俺が運ぶよ。」
なんてユーリス第一王子に言われたけど、第一王子にそんなことをさせる令嬢がどこにいる…当たり前だけどすぐに断った。ユーリス第一王子殿下は私の後ろをついて来てこの屋敷へ入る。屋敷は外観も内観も全てをシンプルにした。もちろん、家具も全て。それを見たユーリス第一王子は素敵だと言ってくれた。
(褒めてくれた…)
屋敷を褒められただけなのにまるで自分が褒められたかのように嬉しく思ってしまう。本当にこの王子は冷たいと噂されている本人なのか…そうとは思えないぐらい積極的にきてる気がする…
「マーガレット様!植えにいきますか?」
「そうね!食料も片付けたし、植えにいきましょうか!」
軍手を用意し、汚れてもいいような軽装のドレスにフリルのエプロン、そして麦わら帽子を被り、庭に向かう。
「レイス!ここの花壇にバラの苗を植えてちょうだい!それが終わったら、野菜の方をお願い!」
「承知いたしました!」
「マーガレット。俺も手伝うよ。」
「いえ!大丈夫です!」
「…どうして…」
「汚れてしまいますし、それにユーリス第一王子殿下にそのようなことをさせるわけにはいきませんので…」
さっきもだけど、本当に第一王子にこんなことをしてもらうのは良くない。だけど、ユーリス第一王子も引かなくて…
「マーガレット。大丈夫だから。貸してくれないか?」
…そんな真っ直ぐな目で見られても…
でも、本人がそう言うなら…
「分かりました…では、チューリップを植えていただけますか?」
私がチューリップの球根と軍手を渡せば嬉しそうに満面の笑みで花壇に向かって行った。
(なんだろう…この感じ…)
なぜか胸が高鳴り、顔が熱くなるのが分かった。
でも、その理由を考えないようにした。
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