第4話 ユリの花言葉

街へ到着するとそこは賑やかで、みんなが幸せそうにしている。スタルツィアでは見たことがなかった光景だ。この国ではみんなが本当に幸せそうにしている。裕福すぎるわけではないけど、みんながそれぞれ助け合っているように見えた。


「マーガレット。何かを買うのか?」


「はい!野菜の苗とお花の種を!」


市場の一角に、沢山の植物の種と苗が売られている露店を見つけるとどれを買うのかすごく迷う。


「マリーゴールド…パンジー…チューリップ…レタス…かぼちゃ…トマト…」


どれもいい…どれくらい買おう…


「レイス。どれがいい?」


「え!?僕ですか…?」


「そうよ!レイス、一つ選んでちょうだい!」


「…そうですね…あ!これなんかどうですか??」


そう言ってレイスに渡されたのはユリの球根だった。


「ユリね!すごくいいじゃない!」


ユリの花。ユリはさまざまな色がある。

そして、咲く色によって意味が違う。

白なら「純潔」「無垢」

ピンクと赤なら「虚栄心」

黄色なら「陽気」

オレンジなら「華麗」

どの色が咲くのかは育っていくまでは分からない。

だけど、どの色が咲いても綺麗なのは間違いない。


「マーガレット様。他は何を買われますか?」


花をもう少し買いたいし、野菜の方も買いたい…

んー…迷う…なんなら全て買いたいぐらい。

でも、全てを見れるわけでもないから…どうしよう…


「店主。ここにあるマリーゴールドとパンジー、チューリップ、レタス、かぼちゃ、トマトの種と苗をくれ。」


「え!?」


「ユーリス第一王子殿下!かしこまりました!」


そんなに沢山…どうして…


「マーガレット。さっき君が悩むように言ってただろ?」


…確かに…私が口に出していたのは今、ユーリス第一王子が頼んだ物だった…


「聞こえていたのですか…?」


「当たり前だよ。」


完全な独り言だと思ってたし、ブツブツ言ってたのに…地獄耳なの?この人…


「こちらです!どうぞ!」


そうやって受け取ったのはユーリス第一王子が頼んだ種と球根、苗たち。ユーリス第一王子はそれをレイスに渡した。


「あ、お嬢さん!ちょっと!」


「あ、はい!」


店主の方が私を呼ぶと渡してきたのは一つの苗だった。


「あの…この苗は一体…?」


「バラの苗だよ!どの色が咲くのかはお楽しみだ。」


「おいくらでしょうか…?」


「いや、いいんだ!初めてきてくれたんだろ?だからサービスだ!」


「いや、でも…」


「マーガレット。店主もこう言ってるんだ。受け取ってあげてくれ。」


「…ありがとうございます…!大切に育てます…!」


「へへっ!綺麗に咲いたらまた教えてくれ!」


「はい!」


店主の方…なんで優しい人なんだろう…

店主の方には植え方まで丁寧に教えてもらったから帰ったら忘れないうちに植えないとね。


この街で夕食の食料も買って私たちは馬車に乗った。


「ところで、ユーリス第一王子殿下。本気で屋敷へするのですか…?」


「ああ、そうだよ!だって、君にやっと会えたんだ…」


当たり前のように馬車に乗るから聞いてみたけど、その答えはちょっと怖い…本当に…なんか、ゾクッとした…


「では出してください…」


私の声を聞いて馬車は動き出す。

馬車の中はすごく静かだったけど、ユーリス第一王子が私の方をずっと見ていて緊張した。


「マーガレット…かわいいなぁ…」


「なっ…!」


「あははっ…」


突然そんなことを言い出すから驚くじゃない…!

なんなのこの人…一度会って挨拶を交わしただけなのに、愛する人だと言うし、私を黙ってじっと見つめるから何なのかと思ったら急にかわいいって言い出すし…何を考えてるの…この人…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る