第14話 勝利の代償



砦の広間に、静寂が戻った。


黒牙の盟、首領ガルドンは、呻くこともなく床に崩れ落ちた。その巨体が地響きを立てるたび、土煙が舞い上がる。


「……勝った、のか」


ルディアは、肩で息をしながら剣をゆっくりと下ろした。

その頬には、血と汗が入り混じり、赤茶の髪が乱れている。


「ふぅ……本当に、しぶとかったね」


エメリアも、杖を支えに立ち尽くす。白い肌がうっすらと紅潮し、袖の裂け目から覗く肩口が震えていた。


「ルディア、エメリア……!」


ユウマは、二人のもとへ駆け寄った。

彼自身は傷一つない。だが、その瞳は、ほんのわずかに金色の輝きを残していることに、誰も気づかなかった。


「大丈夫……でも、ギリギリだったよ」

ルディアがかすかに笑って見せる。

「最後の一撃、なんか身体が軽くなった気がした。……あんた、また何かやった?」


「え? ぼくは……ただ、祈ってただけで……」


ユウマは困惑し、目を逸らした。

確かに、戦いの最中、二人の力が爆発的に跳ね上がった瞬間があった。

だが、自分が何をしたのか、分からない。


「ふふ……やっぱり、君、変わってる」


エメリアが、柔らかな声でそう言った。

湖のような青い瞳が、じっとユウマを見つめている。


「まぁ、それは後でゆっくり話そうよ」

ルディアが手をひらひらと振った。

「とにかく、これで黒牙の盟は壊滅。村の人たちも、これで安心できるはずだよ」


「うん……!」


ユウマは、二人の無事に胸を撫で下ろしながら、砦の奥へと目を向けた。


だが――


「……!」


エメリアが、ふいに表情を曇らせた。


「……ガルドンの身体、黒く……」


彼女の指さす先で、倒れたガルドンの肉体が、じわりと黒い瘴気に包まれ、ゆっくりと消えつつあった。


「これ……普通の盗賊、じゃないよね……」


ユウマがつぶやく。

ルディアも、嫌な予感に眉をひそめた。


「なんか、気持ち悪い。……どういうことなんだろう、これ」


エメリアは、じっと瘴気の残滓を見つめたまま、小さく首を振った。


「……まだ、わからない。でも、変だよ」


「うん……でも、今は……まず、帰ろう」


ユウマはそう言って、二人に手を差し出した。

ルディアはにやりと笑い、エメリアは小さくうなずいて、その手を取る。


砦の外では、夕陽が赤く沈もうとしていた。

新たな旅路が、また始まろうとしている。


だが、彼らはまだ知らなかった。

黒牙の盟の背後に、さらに巨大な影が蠢いていることを――


***


こうして、ユウマたちは初めての大きな勝利を手にし、

しかし同時に、冒険の幕が新たに開かれるのだった。




__________________



ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

この作品はひとまず第1章で区切りとさせていただきます。

今後は別作品に挑戦する予定ですが、また続きを書きたくなったら第2章でお会いしましょう。

本当にありがとうございました!

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覚醒率1000%の俺、レベル1なのに仲間全員SSSランクにして世界最強パーティ爆誕 裏伊助 @izu515

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