6話

この日の訓練中、俺はシリルの視線がうっとうしくてしょうがなかった。


「よし!本日の訓練はここまでとする!」


よくやったぞ!がははは!!!


今日の訓練担当の爺ちゃんが訓練の終了を言い渡した。


「うーーん!!っしゃ!飯食って昼寝に行くぜー」


「レオン」


「だめ」


「ちょっといいかい?」


「いや、ダメって言ったよね?話聞いてた?」


まずい、このままこいつに喋らせてはいけない!絶対面倒なことを言うぞ!


「僕と魔法ありで試合をしてほしい」


ほらきた、まぁ、なんとなく分かってたよ?

だったお前、俺と姉さんの試合の後から熱量半端なかったもん

でもさぁ...


「やだ、めんどくさい」


「僕に負けるのが怖いのかい?」


ムッカ!?

いや!待て!ここで乗っては奴の思うツボだ!

それに俺ももう6歳だ、何時までもこんな下手な挑発に乗ってるわけにはいかない!


「あまり強い言葉を使うなよ――弱く見えるぞ」


うん、無理でした。そんなすぐに人って変われないんだよ

それに...こいつには負けたくない


「がはははは!元気があった良いのう!!わしが審判をしてやろう!!」


「ありがとうございます。バルドル様」


はぁこうなっちまったら本気でやるしかないな。


「……ついにこの時が来たか、シリル。貴様を完膚なきまでに叩き潰してくれる」


「悪いけど、僕は負けるわけにはいかないんだっ!」


「ふっ、よかろう……ならばこの地で決着をつけよう。わたしか、貴様か!――勝つのはどちなのか!」


「行くよ、レオン……僕の名にかけて!」


「この二人、やけに壮大な掛け合いをしているわね...」

クラリス姉さんが外野で何か言っているが俺達には今そんなことはどうでもいい!


「―――はじめ!!」



「「うおおおおおおおおお!」」


俺達は瞬時に身体強化を接近した


カキン


「はぁ!」「くっ」


俺の身体強化はスピードも胆力も上がるが、あいつの身体強化――風属性の身体強化は速さは上がるが、胆力にはあまり補正がかからない。

俺はそのままシリルを吹き飛ばした


「やっぱり、力では叶わないか...」


シリルは初撃以降その機動力を活かし、こちらの攻撃を避けまくる


「そんなに避けてばかりじゃ、勝てねぇぞ!」


「...っ当たらなければ...どうということは.......ない!!」


!?こいつ!

俺の人生で言ってみたい名言リストのセリフを!?


パァン!


「何に気を取られたのか知らないけど、集中しないとすぐ終わっちゃうよ?」


「うるさい!!」


あぶない、今はそれどころじゃない、

それにしてもあいつはいったい何を狙っているんだ?

考えろ...考えろ!


チッ!


うっとうしい!


ブン


「貰ったよ」


こいつ俺の懐に!でもこの間合いでは剣なんて振れな――


「《ウィンドボール》!!」


ドカーン


「ぐぁ...」


いてぇ...今のバリアが間に合わなければ腹に穴空いてたんじゃないのか?

しかし魔法の同時発動か、通常1つの魔法を使用しながら他の魔法を使うには、かなりのセンスと努力が必要になる。もちろん俺もできるが、まさかあいつもできるとは...

しっかし、あの至近距離のウィンドボール、まるでどこかの落ちこぼれ忍者の技みたいだったな...羨ましい。


「やっぱり、これを防ぐんだね」


「ふん、ここまでは想定内とでも言いたげだな」


「まぁね、ここからは出し惜しみなしだ!」


「はぁ!!《ウィンドスラッシュ》」


くっ シリルのやつ、さっきの素早い動きに加え、魔法を織り交ぜてきやがった...!


攻撃はバリアで防げる、だが、こちらの攻撃が当たらない!


どうする、この均衡を崩すには一か八か、勝負に出るしかない


どうやら勝負に出るタイミングは同じだったらしい、俺はバリアを捨て身体強化1本に全力を注ぎ、シリルは風の身体強化をしたまま、剣に光属性を纏わせやがった!

なんだ...すげー魔力じゃないか!!

その剣、正面から受けてやるぜ!!!


「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」」


「そこまでッ!」


「おぉ!!」


「うわぁ」


「あんたたち、それ以上は軽傷では済まないよ?」


...確かに、あのまま続けてたらお互い大怪我を―――


「でも!僕はまだ――」


「大丈夫よ!お互いこのままでは消化不良でしょ!

ここから先は私が相手をしてあげる!二人で掛かってくるといいわ!」


いや!!姉さんめっちゃいい笑顔で何言ってんだよ!

しかも、最初から火の身体強化使ってるし....


俺とシリルは顔を見合わせる。


こうして俺たちは魔王に挑む勇者のごとく覚悟を決め立ち向かっていった



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