第14話 横浜ナイト・クルーズ〜炎上〜
登場人物
藤堂リュウジ(19):元・不良高校生。現在は港町・横浜の雑用チンピラ。喧嘩っ早く、昔の仲間との絆を重んじる。
桐谷アユム(18):藤堂の後輩。今も在学中の高校生で、街の抗争に巻き込まれていく。
尾形龍次(22):藤堂の因縁の相手。今は新興暴走族「RAGING DOGS」のリーダー。
御園かおる(20):藤堂のかつての恋人。今は港のスナックで働いている。
夜の横浜、赤レンガ倉庫の向こうで火の手が上がった。
それは、かつてリュウジが通っていた「港南工業高校」の校舎だった。
「……まさか、尾形のヤロウ」
バー「ブルーヘヴン」のテレビに映るニュース映像を見ながら、リュウジは静かに立ち上がった。港南工業は、横浜の中でも“伝説”と言われる喧嘩校。リュウジが三年の時、全関東制覇を目指して暴れていた過去の舞台だった。
今、その母校が襲撃され、暴走族のマークが壁に残されていたという。
「リュウジさん!アユムっす!学校がヤバいっす!」
息を切らして現れたのは、かつての後輩・アユム。肩には血が滲み、制服はボロボロだった。
「俺たち、やられました。尾形の奴らに……!」
リュウジの中で、何かが燃え上がる。
「懐かしいな、この感じ……。あいつらにケジメつけに行くか」
横浜の夜が、再び熱を帯びる――。
バー「ブルーヘヴン」を後にしたリュウジは、港の風を受けながらゆっくりと歩き出した。アユムは無言でその背中を追う。かつて、仲間と共に闘い、泣き、笑ったあの路地裏を抜けるたび、リュウジの心の奥底で何かが目を覚ましていく。
「尾形……てめぇ、どこまで調子に乗ってんだ」
赤レンガ倉庫の裏手に差し掛かったとき、リュウジは足を止めた。そこには数人のチンピラ風の若者たちが集まり、焚き火を囲んでいた。全員、「RAGING DOGS」の刺繍入りジャンパーを着ている。
「おい。港南工業に火をつけたのはお前らか?」
リュウジの声に、若者たちは一瞬たじろいだが、すぐに笑い始めた。
「なんだおっさん、昔の武勇伝でも語りにきたのか?」
一人が踏み出して挑発する。だが、次の瞬間にはそいつの顎が跳ね上がり、鈍い音を立てて地面に転がった。
「……喧嘩のやり方、忘れてねぇよ」
リュウジの瞳に宿る狂気と覚悟。残った連中は腰を引きながら散っていく。
「アユム、行くぞ。尾形に伝えろ。“リュウジが帰ってきた”ってな」
その夜、横浜の裏社会に静かな震えが走った。港南工業が焼かれた報復として、リュウジが再び動き出したという噂が、暴走族たちの間でささやかれ始める。
一方その頃――
尾形龍次は、バイクのエンジン音が鳴り響く倉庫街の奥で、仲間たちと次の“計画”を練っていた。手元には、港の地図と、ある一軒のスナックの写真。
「次は……“あの女”を狙う」
写真には、スナックで働く御園かおるの姿が写っていた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます