第17話 最高のエンタメ
雪くんと共に藍女という名前の子の元に向かう。
「藍女〜。」
「藍女〜?ここにいないの?いるなら出てきてよー。」
「……。」
雪くんと藍女ちゃんの関係性はよく分からないけどでもその子がいたおかげであんな面白いものが見れてんだからちょっとは感謝だよねぇー。
「藍女ー、藍っ…。」
「ばあっ。」
雪くんの声が止まった。そして、誰かの驚かす声が聞こえてきて考え事をやめて雪くんの方を見る。
「!!」
雪くんの目の前に女の子が浮いている…。というより、女の子が逆さに浮いて雪くんと顔を合わせている。
「……。」
「雪ちゃん顔が怖いわぁ。うふふっ、ちょっとふざけただけじゃない。」
「俺それ嫌いって言った。」
「あら、何年前かしら?最近物忘れが酷くて酷くて…。」
「嘘つき。760年前のことまで覚えてるのが唯一の長所でしょ。」
「あーら、酷ぉい。
「そこまで言ってないでしょ、別に俺そこまで馬鹿にしてないし。」
「うふふっ、かわいー。」
藍女ちゃんとやらと雪くんはなんだかいがみ合いの会話をしているように見えて自然体の会話をしていて、親しいことがよく分かる。
「えーっと、割って入ってもよろし?」
とにかく間に入らねば気まずいと思い、タイミングを見計らった。我ながらいいとこじゃないか?
「あら、昨日の方とは違うわね。雪ちゃん?」
「うん、昨日は鈴だけど今日は凜だよ。」
「凜さん?そうなの。」
「うん、私は間久凜。君の名前聞いてもいい?」
くるりと藍女ちゃんは空を舞って、色気を振りまいた。
「おそらく知っていらっしゃるでしょう?
「長っ!そんなに長いとお互いのこといっぱい知ってそー。」
「まぁねぇ。
「ふふふ。」
否定するわけにもいかないから上っ面だけの笑みを浮かべる。
「うふふ。」
それに呼応するように藍女ちゃんも笑った。多分あっちも上辺だけ。
「あのさ!俺頼み事しに来たんだけど。」
「あぁ、そんな気はしたわよ。雪ちゃん、何を望んでいるの?」
藍女ちゃんはすぅっと近づいて雪くんの目線の高さで浮いたまま横になり雪くんの顎に手をやる。当の雪くんは迷惑そうだけど振り払いもしなかった。
「……あのさ、怪物役してくれない?」
「…。」
藍女ちゃんは軽く顔を顰めすぅっと離れた。少し離れて藍女ちゃんは腕を組み足を組み、隠しきれない不満を顕にした。
「なんで
「ちょっと諸事情があって、その…。」
「嫌よ。」
藍女ちゃんはそのままどこかに行こうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ!まだ話は終わってない!」
「……あなたと話なんかしていませんわ。
「ゆ、雪くーん!」
雪くんは何を考えているかも分からない真剣な目付きでどこかを見据えていた。
「藍女ちゃん!話をしよ!」
「…どういうお話です?」
さっきまでの甘い声色から一転、少しドスの利いた声を向けられた。
「…!私達とある神社の神様に頼み事されたの。」
「…」。」
「信仰を取り戻してって言われて、色々考えて考えついたのが縁日でパフォーマンスの一環でヒーロショー的なのをするっていう、それを達成できなきゃ私達、大邪様に祟られるかも…。」
〘ちょっとマリー?!〙
小声で雪くんは突っ込んできた、でも私は止まれない。
「そしたら、雪くんも無事じゃないかもしれないね。この仕事は私達全員で引き受けたものだから。」
「…そう。」
来たか…!?
「雪ちゃんがねぇ…。」
まだか…?
「それなら…協力したげる。でも条件として…」
「何でしょう…?」
「雪ちゃんをあなた達のような人間から放していただけます?」
「…え?」
「雪くんも短命で愚かな人間たちと共にいると悲しいことばかりですわ。だからこそ、」
「やだ。」
「雪ちゃん」
「確かに、鈴や凛はすぐ死んじゃうし、一緒に居てもいいことばかりじゃないかもしれないけど、今まで一緒に居たからこそわかる、楽しいことはこれからもいっぱいあるんだってこと。だから藍の条件は飲めない。その条件ありきで協力するのなら俺はもう藍には頼まない。」
「…雪ちゃん…。」
少しの沈黙のあと、藍女ちゃんは儚く笑いかけて答えた。
「わかりましたの。あなた達に無条件で協力しますわ。」
「…!いいの?」
「ええ、私の一番の望みは雪ちゃんの平穏ですの。そーれーに…」
藍女ちゃんは艶めかしい手つきで雪くんにすり寄った、というより浮き寄った?
「
「…別に。」
「うふふふっ、そういう意地っ張りなところもカワイー。」
「うっさい。」
藍女ちゃんは雪くんに笑いかけたあと、少しハッとしたような顔をした。
「そういえば、あちらの方は大丈夫ですの?」
「あちらの方?」
「藍どういうこと?」
「…!!」
雪くんはまだピンときていないようだが私は気付いた。
「雪くん行くよ!レイが待ってる!!」
「え、あ、え?うん?」
「またね藍女ちゃん!!」
雪くんの手を思いっきり引いてレイの元へ駆け出す。
「ま、また日程とか色々言うから!!またね、藍!!」
「うふふ…賑やかで楽しそうね…。」
レイの元に向かっていると遠くでしゃがんでいる女の子が見えた。
「勝手にすればいいのよ…もう…。」
「結局その考えなの。」
「うん、こんなに遅いってことは逢引でもしてんでしょ。ばか…。」
「あいびきってなあに?」
レイとウナだ…。
「なにいってんのレイ。」
私の声を聞いて顔上げたレイの顔は目がちょっと赤くて、不機嫌な顔をしていた。
「何怒ってんの。」
「怒ってないよ。」
雪くんがデリカシーのない質問をしたから、レイはそっぽ向いて立ち上がりながら不機嫌そうに答えた。
何この痴話喧嘩…。
「怒んないでよ。ちゃんと協力してもらえたんだから。」
「あっそ。良かったじゃん。」
〘ねぇ、ウナずっとこの調子?〙
〘うん、何言ってもなおんないの。〙
〘そ…。〙
私は深呼吸をして二人の仲を取り持つことにした。
「ね、ねぇレイなんかあまいもの食べたくない?」
「食べたくない。」
「あ…えっと、じゃあさじゃあさ!競争しよ!先に商店街抜けた方の勝ち!みたいな…。」
レイの顔色は変わることなく、これ以上何言っても無駄だってことを表していた。
「…ごめん。」
「え?」
レイが不意に謝った。レイの表情はさっきとは違って、不機嫌の中に悲しさが混じっていた。
「めんどくさくてごめん。」
「…なんだ、そんなこと?」
「そんなことって何!」
少し笑い混じりに言うとレイは涙ぐみながら、反論してきた。
「あはは、そういうのは持ちつ持たれつ。時にそんな気持ちになってとて、私は何も文句ないよ。私がそんな状況になっても笑顔で対応してくれるならね。」
「…。」
「それに…雪くんはレイの思っている以上に信用できる相手なんだから。あーと!嫉妬深いのも乙女の魅力だよ☆」
ウィンクしながら言うとレイは目をぱちくりさせたあと笑った。
「あっははは、マリーウィンク下手くそ〜!」
「なっ!私のこの完璧な名言にときめいた訳でもなくウィンクに笑うなんて!」
「だって、だって!ふふふっ、ほぼ瞬きだったんだもん!」
「も〜!!…っははは!!」
二人して笑いあった。これにて平穏が訪れた。そう思いたい…。
とにかく家に戻って、これからのことをちょっと考えていこうということになった。この先のことを考えるとちょっと不安要素が残るし、これからも私が空気を取り持つことになるのかと思うと荷が重くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます