第14話 困りごと
「九条さん、そこをなんとか⋯!」
九条さんは、はっきりいってしまうと頭のお硬い方で、ジョークなども言わないような人だ。
「そんなこと言わずに、いいじゃあありませんか、若い芽を摘むもんじゃありませんよ。」
話していると店の奥から奥さんの華さんが出て来てくれた。
「華⋯でもなぁ、若気の至りっていうのは怖いもんだ。なんでも出来るように感じて無理なことでもやろうとするんだ。」
「まぁまぁ。」
華さんがなだめても九条さんは止まらない。
「じゃあもし、売上が振るわなかったら?もしも事故かなにか起きてみなさい、どうするつもりなんだ。」
「それは⋯」
あたしが返答に詰まっていると雪がすっと前に出てきて、頭を下げた。
「もし、売上が振るわなかったその時は僕が働いて返します。事故が起きないように妖術で見回り、起きる前に対処します。だからお願いします、縁日に協力していただけませんか。」
「⋯雪。」
その姿を見てあたしもいてもたってもいられなくて口が動いた。
「あたしも!あたしも、雪と一緒に働きます。雪と一緒に監視員を努めます。ですのでお願いします!!」
「わ、私からも!お願いします!!」
「おねがいします!!」
マリーもウナちゃんも頭を下げた。九条さんはすこし間を置いてため息をついた。
「分かった、そこまで言うなら協力しよう。」
「「「「!!」」」」
「若者っていうのは怖いもんだな。なんでも出来そうだ。」
苦笑いをしながら九条さんは言った。そしてこう続けた。
「まぁそこまでしたんだし、何があったって恨みっこなしだ。」
「⋯ということは⋯?」
「売上が振るわなくても雪くんや鈴ちゃんらが働かなくたっていいってことだよ。」
「!!」
「ありがとうございます!!」
あたしは全力で頭を下げた。他のみんなも頭を下げて精一杯の感謝を伝えた。
「若いもんっていいねぇ、華。」
「ええ、活気があって⋯羨ましい限りだわ。」
「はははははっ。」
九条さんという関門を突破したあとは残り一軒。ここの地主のような位置にいる染谷さんだ。反対するような人ではないが、少し気難しい人なので少し警戒はしている。
「染谷さん、だっけ?次行くの。」
「うん、染谷さんはいい人なんだけど、計画の問題点の解決策とかにつまったら成功の確率はグッと下がるかも…。」
「俺、色々考えとくよ。」
「お〜?雪くんカッコいーじゃーん!」
「別に。」
雪はマリーに褒められそっけない態度を取るけど、それでもまんざらではなさそうだ。
「こんにちは、あの…染谷さん、お願い事聞いていただけませんか?」
「うん、いいよ。鈴ちゃん、凛ちゃん、雪くん、ウナちゃん、勢揃いでもしや大きな頼み事かな?」
「はい、そのとおりなんですけど…。」
「何でも言ってみな。言うだけならタダだよ。」
染谷さんに反対をされてしまってはこれまでの苦労が水の泡となってしまう。それだけは避けたく、口が重くなる。
「その…地域活性化プロジェクトとして…えっと、縁日をしようかと…思い、まして。」
「ふぅーん?」
染谷さんはあたしの言葉を聞いて少し吟味するようにあたしたちを眺めた。
そして口を開いた。戦いの火蓋が切って落とされた。
「Q.開催場所は?」
「A.蛇代神社です。」
「ふむ…蛇代神社ってアレだよね、山の中の。」
「はい。」
「Q.そんな立地の悪いところで集客効果は得られるのかな。」
「そ、れは…。」
考えが至らなかった。しまった…。
「A.俺の妖力で移動手段を作ります。」
「移動手段?へー。」
「Q.例えばどんな?」
「A.…白い狐と尻尾型のふわふわバルーン…って感じで…。」
多分雪名称とか考えてなかったんだろうなぁ…。
「うんうん、今小さい模型みたいなの出せる?」
「はい、少し時間をいただければ。」
「もちろん待つけど、」
「Q.それ安全面は大丈夫なの?」
「…おそらく、暴れたりしなければ、落ちることはないかと…。」
雪は質問に答えつつ小さな白い狐とふわふわの尻尾バルーンを作っていた。
「どうぞ。」
作り終えた雪は染谷さんに手渡した。
「んー、いい感じだね。ふわふわしてるし座り心地は良さそう。」
「Q.サイズ感は?それでこれをどうするの?」
「A.サイズ感は…どちらも横が3mほどで高さ5m程を想定しています。これは臨機応変に山の移動手段として提供します。」
「んー…うんうん。つまりはバスみたいなもんだね。」
「そんな感じです。」
「Q.でも外にこれ漏れちゃって大丈夫なのかな?」
「A.…それは…。」
確かに、街の方には知らない人もいっぱいいる…当然話題にもなるし、良くないか…?
「A.おそらく大丈夫かと。」
「凛ちゃん…。」
「Q.どうして?」
「A.妖なんて人にとっては危害を加えるか加えないかの二種類の存在です。その日一日の危害を加えない謎生物なんか気にする人はいません。…多分。」
マリーはそう断言したが、文末についた”多分”のせいで信憑性が薄まった…。
「…。」
染谷さんはすこしかたい顔をしてしばらく考えていた。それでもふわっと微笑んで、
「いっぱい考えてくれてたんだね。有り難う雪くん、たくさん答えてくれて。凛ちゃんもね。」
「…あ!もちろん鈴ちゃんとウナちゃんも色々考えてくれてたんだよね、有り難う。」
「はい…ありがとう…ございます。」
「まぁ、地域活性化プロジェクトと言うことだし、私も責任者として現場監督も務めてみようかな。」
「ということは…縁日、協力してくれくれるってこと、ですか!」
「うん、なんかめんどくさくてゴメンね。」
「い、いえいえ!大切なことなのでありがとうございます!!」
深々と頭を下げる。そしたらみんなも頭を下げた。
「でも、主な企画計画を作るのはキミたちだからね。もちろ手助けはするよ。でもあんまり依存しないことよ。」
「わかりました!!」
これで人員の不安、企画の推進が終わった。
「ねー、レイ誰に頼む?」
「え?」
「怪物役だよ、カイブツ。」
「…藍女ちゃんでいいんじゃない。」
「あいめ?」
マリーが目をぱちくりさせていると雪が気だるげに溜め息混じりに言った。
「えー…俺やだって頼むの。」
「???」
「いいんじゃないの。あの子と親しげにしてたじゃない。」
「それとこれとは違うの〜…。」
「…。」
マリーはなにかを察したようにニヤリと笑った。
そしてあたしに背を向け、雪にコソコソと話しかけた。
「ねねね、藍女ちゃんってどんな子?」
「ただの友達。」
「昨日も会ったの?」
「…うん。」
「え〜!!それでそれで?」
「ただ話しただけだよ。」
「どんな話?」
「適当な話。」
「ふーん…。」
「ねぇ、なんで藍女ちゃんに頼むのやなの?別に親しいんでしょ?もしかして頼み事絶対断ってくるの?それとも見返りがエグいとか?」
「そういうんじゃない。今回のはギリわかんないけど。」
「じゃーなんで?」
「…鈴が不機嫌なるから…。」
「…。」
「きゃーーー!!かわいい!」
マリーたちが話している間あたしは耳も貸さずもやっていた。
「レイ、フキゲンなの?」
「ん?…別にそういうわけじゃ…」
半笑いをしてやんわり否定していると、
「ウナにはレイ辛そうに見えるよ?」
「…んーん、ちょっと疲れが出ちゃっただけなの。修行ばっかして、買い物とかも頻繁に行ってたから。」
「そういうことにしたげるよ。」
「…何処目線なの、ソレ…」
「んーウナ目線。」
少し威張りつつウナちゃんは答える。モヤモヤする心に隙間風が吹いたような気がした。
「レイ!私と雪くんで藍女ちゃんに会いに行ってくるよ。」
「ふーん。」
「大丈夫!ちゃんと私が見張ってるから。」
「別にそんなのいらないってば。」
「じゃあ、レイとウナはそこで待ってて!すぐ戻る!」
あたしたちはそう言って走り出したマリーと雪の後ろ姿を見送った。
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