風俗、行くのか無悪


「あれ、そんなに売れたんだ」


硬直している無悪善吉を無視して竜ヶ峰リゥユは聞いた。

呉白蘭は紫煙を吐き出しながら言う。


「ええ、基本的に鴉から回収する禍遺物って、等級が高いのが多いのよね」


禍憑を打ち消す様な禍遺物を装備する者が居れば、特定の禍遺物を使用する為にその呪いを打ち消す様な禍遺物を装備する鴉も居る。


等級が高ければ、効力も期待が高まる。

なので、多くの禍遺物を装備する鴉も居た。


「驚きなのが、販売した瞬間に売れた事よ、よっぽど体重を軽くしたかった鴉が居たのね」


冗談交じりで呉白蘭が言うと、竜ヶ峰リゥユは彼女のスタイルを見ながら言う。


「店長こそ必要なんじゃない?」


その言葉と共に、早歩きで竜ヶ峰リゥユに近付いた呉白蘭は、彼女の頭の天辺に向けて素早く拳を振り下ろし、拳骨を浴びせた。


「その点、リゥユは必要なさそうね、重たそうな部分が無いもの」


頭を抑えながら、涙目を浮かべるリゥユは牙を剥いて怒りの声を出した。


「悪口言うなら殴るの必要無いじゃんッ!!ババア!!」


ぎゃあぎゃあと罵倒を口にする二人に、ようやく着替えが終わった幽谷りりすは遠目で見ていた。


(仲が良いなぁ……)


そうして、硬直している無悪善吉に近付く幽谷りりすは、彼の傍に立つと少し緊張して、心臓を高鳴らせた。

顔を紅潮とさせながら、無悪善吉に話しかける。


「ねえ、ゼンちゃん、そのお金で何をするの?」


未だに硬直していた無悪善吉は、やっと我に返った。


「……はっ、ヤベぇ、これがありゃ……あれが買えるぜッ」


無悪善吉は、両手で札束を持ったまま、そのまま部屋を飛び出した。

彼の慌てぶりに、喧嘩をしていた二人は彼の後ろ姿を見ていた。


「なに?なんか欲しいものでもあったの?」


「……善吉、風俗はまだダメよ、未成年ですものッ」


「なッ、ぜ、ゼンちゃん、そんな場所、行っちゃだめだからッ!!」


勝手に無悪善吉は風俗へ繰り出した事にされていた。





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