第26話 先輩と後輩の交流②

《最近のクレーンゲームってのはな、景品を直接掴むんじゃなくてだな……》


 花菜に基本的なことを教えたら、後は実際にプレイしながら追加で説明していく。


《花菜、アームは景品の重心より少し奥を狙って、ずらす感じで……》


《そう、ちょっとずつ寄せて……》


《よし、そこの飛び出てる部分をアームの爪で軽く突くんだ》


 花菜は、俺のアドバイスをスポンジのように吸収し、鳥のぬいぐるみが、景品口のギリギリのところまで寄せてきた。


 あと一押しでいけそうだ。

 そんな時、花菜は幸子のほうを振り返る。


「幸子ちゃん、最後、一緒にやってみない?」


 花菜が、興奮気味に幸子を誘う。


「えっ? 私がですか? やったことないのに……」


「大丈夫、私と一緒に操作して取ろう?」


 二人は息を合わせ、慎重にアームを操作する。


 そして……!


 コトンッ!


 見事、鳥のぬいぐるみが、景品口に落ちた!


「わぁ……すごいです! 取れました! 花菜先輩、蒼人さん、ありがとうございます!」


 幸子はぬいぐるみを大事そうに抱きしめ、満面の笑みを浮かべている。


「この子、私の宝物にします!」


「ふふ、大事にしてあげね?」


 幸子の真っ直ぐな笑顔とお礼に照れながらも、花菜は嬉しそう微笑んでいた。


 ▽▽▽


 クレーンゲームで盛り上がった後、俺たちはゲームセンターの出口に向かっていた。


 その途中、プリクラコーナーの前を通りかかる。

 ブースの前には、楽しそうに写真を撮ったり、シールに落書きしたりしている女の子たちが集まっていた。


「あれは何ですか?」


 幸子が興味津々に尋ねる。


「プリクラよ。写真を撮ってシールにする機械。……でも、私も撮ったことはないのよね……。さすがにプリクラは、ちょっと恥ずかしいかも……」


 優等生の彼女には、少しハードルが高いのかもしれない。


 しかし、幸子はキラキラした瞳で花菜の手を取った。


「撮ってみたいです! 花菜先輩、一緒にお願いします!」


 その純粋な勢いに、花菜も「う、うん……」と頷くしかない。


 結局、幸子と花菜と俺で、プリクラのブースに入ることになった。

 狭いブースの中で、流れてくるアナウンスに四苦八苦しながら、なんとかポーズを決めて撮影完了。


 ……いや、待てよ? 魔法少女の姿とかは一般人に認知されないシステムらしいが、このプリクラの機械……カメラにはどう映るんだ? まさか俺だけ写ってないとか、変なノイズになるとか……? それはそれで気まずいぞ……。


 俺は世界のシステムについて、妙な心配をしていた。


 撮影後の落書きタイム。

 花菜と幸子は、キャッキャ言いながら、楽しそうにタッチペンを走らせている。


 俺が、う~ん……と頭を悩ませている間に落書きタイムは終わっており、気づいたら完成したプリクラシールが出てきていた。


 そこには……可愛い笑顔の花菜と幸子、そして……二人の間に、スタンプやキラキラでこれでもかと過剰にデコレーションされ、もはや原型を留めていない「なんか変な鳥」と化した俺の姿があった。


《おい! なんだこれ!? 誰だよこのファンシーすぎる鳥は! 俺の顔どこ行った!?》


 俺は思わず全力でツッコミを入れた!


「「あはは! ごめんなさーい!」」


 二人は悪戯がバレた子供のように笑っている。


「ここまで盛るつもりなかったんだけど、ごめんね……!」


「つい楽しくて、いっぱいデコっちゃいました!」


《まあ、面白いから許すけど……。まったく……》


 俺もつられて笑ってしまった。


 ▽▽▽


 ゲームセンターからの帰り道。


 幸子は鳥のぬいぐるみと、あの変な俺が写ったプリクラを大事そうに抱えている。


「花菜先輩、蒼人さん、今日は本当にありがとうございました! すっごく楽しかったです!」


 幸子が満面の笑みでお礼を言ってくれる。

 その笑顔は、今日の出来事が彼女にとって本当に特別な思い出になったことを物語っていた。


 花菜も嬉しそうに微笑む。


「ふふ、私も楽しかったわ。幸子ちゃんの笑顔が見られて良かった。ねえ、今度はみんな……芽衣亜ちゃんや美々歌ちゃん、里織先輩も誘って、また来ましょうよ!」


「はい! 絶対行きましょうね!」


 幸子が力強く快諾した。


 ▽▽▽


 翌日の学校、昼休み。


 幸子は、自分の席で昨日撮ったプリクラを芽衣亜と美々歌に見せていた。


「なによこれ! あんたたちだけでずるいじゃない! あたしも誘いなさいよ!」


 芽衣亜がプリクラを覗き込みながら文句を言っている。


「……ふふっ、蒼人さん、本当に変な鳥になってますね。これは傑作です」


「ご、ごめんなさい! 今度は絶対、みんなで行きましょうね!」


 幸子が改めて二人を誘う。


「もちろん!」


「……いきましょう」


 芽衣亜と美々歌が頷いた。


 賑やかで楽しい少女たちの日常は、少しずつ、確実に広がっている……。

 そんな予感がした、ある春の日の出来事だった。

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