工場見学。α


 すまむる、すまむる、工場見学。


 アルファは研究者。スマホマムルのスマホ部分が、専門だ。

 今日は、すまむるの生まれる工場へ、見学にやってきた。

 スマホとは関係ないように思えるが、専門にばかり終始しないのが、よい研究者というものだ。


「こんにちは」

 案内の人に、工場を案内してもらう。きれいで、白くて、ほこりひとつない通路だ。

 通路の左右には大きな窓があって、そこからすまむるの生まれる様子が見られるようだ。

 アルファは、じーっとラインを見つめた。

 工場は全自動で、ロボット・アームが一糸乱れず、部品を組み立てている。基盤に電源、メモリにCPU。できあがった中身をプラスチック・ケースでパチンと挟めば、

「すまむるー」

 すまむるが生まれる。みんな知っていることだ。


 アルファはそれから、工場のすまむるについて、案内の人にいろんな質問をした。ロボット・アームやメモリについて、とおりいっぺんの質問のあと、アルファは気になったことを聞いた。

「なぜ、メモリとCPUとプラスチックから、すまむるが生まれるんですか?」

 案内の人は、笑って言った。

「それは、地球がなぜ回ってるんですかと同じくらい、難しい質問ですね」


 工場を辞したあとも、アルファはずっと首をひねっていた。

 あの組み立てのラインの先に、何かあった気がするのだ。すまむるでない、何か。


「おきかえられた、がいねん」

 アルファのすまむるは、かってにしゃべっている。


 すまむる、すまむる。

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