第9話「“あたたかい場所”は、たぶん人のなかにあった」

支援団体の施設に着いたとき、

ワイ、思わず小声で「ホテルか?」って言ってもうた。


屋根ある。

暖房ある。

テーブルとイスある。

「好きなだけお茶飲んでいいですよ」って言われて、涙腺バグった。



兄ちゃん「まずは生活保護の申請からですね」

ワイ「いや…ワイ、働ける気が……」

兄ちゃん「“働けるか”より、“生きられるか”ですよ」


この一言で、ワイの中の何かがじわ~って溶けた。

まるで春先の雪かよ。



数日後、個室に通された。

ワイ専用の布団、コンセント、照明スイッチ。

全部“ワイ用”。

この部屋、**世界でいちばん“ワイに割り当てられた空間”**やった。



ふと、窓の外見たら桜が咲いてた。

ベンチに座ってた頃、見上げる余裕なんてなかったあれ。

今は、ちゃんと“自分の居場所”から見えてる。



心の中で、誰かが言うた気がした。


「おかえり」



ワイ、返した。


「ただいま」

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