第五章 新たなる目覚め

#49 行こうよ!職技センター!

駅前で会話をしていると派手でデカい古い自動車がポンスコ鳴らしながらやってきた。

あれは間違いなく、っすさんの自動車だ。

いつも都合よく現れるなあの人。


「ネオ殿ー!」


助手席にはガルさんの姿が。

シートベルトをしていないと思ったけど、そもそもついてないぞこれ。

神界では交通ルールは無いのか?


「マタタビ殿が迎えに来てくれたであるぞ!」


(っすの人の名前マタタビさんだと判明したー!)


「神界に来てるみたいなんで会いに来たっすよ」

「久しぶり、でもないっすね」


「ちょっと大変なことになったんで救いに来ました!」


「それは心強いっすね」←軽い

「ここで話すのもなんだし落ち着ける場所に移動するっすよ」


「救世主様!世界を頼みますね!」


「俺に任せろ!」


「それじゃ、僕は異世界に遊びに行くのでこれで!」


車椅子の少年はそう言って去っていった。

異世界に遊びに行くって、どういう意味なのかわからないけど、

神族の言うことは自由すぎる場合が多いし深く考えるのはやめとこう。


俺はマタタビさんの車に乗って、ソレユさんは自力で飛んで、

駅前から割と離れた小高い山の中腹にある休憩所と呼ばれている場所にやってきた。

駐車場に展望台、それと妙にツヤツヤしたログハウス風の建物があって、

飲み物の自販機が置いてあるだけの場所だった。

たしかに落ち着くかも?

そこで神界を割ってしまったこと、アビリティをどうにかしたいことをマタタビさんに説明した。


「あれっすよね」

「イベントバトルで超必殺技を閃くとか」

「ギリギリの所で真の力に目覚めるやつっすよね?」


「そうそう、それですそれ!」


「ちょっとご都合主義が過ぎるんじゃないっすかねぇ…」

「現実見た方がいいっすよ?」


「そこは神界の危機なんだからノリを同じくして下さいよ!」


カチャリカチャリ、ズドン。

ガルさんが自販機に小銭を入れてジュースを買っている音がする。


「おお!久しぶりの炭酸飲料は気分爽快である!」


「ご都合主義で解決しないなら、どうしたらいいんですか!」


「そう都合良くはいかないという意味ですの?」


「そうっすよ」

「何事もやり方というものがあるっす」

「やっと明らかになったチート能力だから最後に役立つはずだとか思わないことっす」


「そ、そんなぁ…」


「マタタビ殿、やり方があるというのは言葉通りの意味であるか?」


「そうっすよ」

「アビリティの問題なら、アビリティの問題を解決する既存の方法を試すのが先っす」


「アビリティの問題を解決する既存の方法?」←根尾とガルさんが同時

「であるか?」


「それはつまり、スキルツリーとかアビリティの強化とか」

「システム的な方法でいじれるってことですか?」


「そうっすね」

「まぁほとんどの場合スキルツリーは全部取ればいいだけだし」

「二者択一でもどっちかが強くて一択みたいな意味ないの多いっすけどね」


「なんの話なのそれ!」


「こっちの話っすよ」


「おお!マタタビ殿もそっちの話をするであるか!」

「ソレガシもそっちの話をしに、そっちの世界へ行ってみたいのである」


「場合によっては行けるかもしれないっすね」


「それで、その問題はどう解決いたしますの?」

「こんな所でアブラとやらを売っている場合じゃありませんことよ」


「ああ、話を戻すっすね」

「職業技術センターっていうのがあるんすよ」


「何その街の行政施設みたいなやつ!」


「そこへ赴けばアビリティの効果を変えられますの?」


「割とできるっすよ」

「本当はオンラインで手続きできるんすけど」


「オンライン手続き可能なのー!…ふぅ」←ツッコミが多くて疲れてきた


「ガラケーからじゃ無理なんで直接行くっすよ」


マタタビさんは俺がガラケーを持っていることをなぜ知っているのか?

それはそれで疑問ではあったけど問題にはならないから考えないことにした。


「…全員で行きます?」

「そのナントカセンターってところ」


「せっかくなんでオイラの車でいくっすかね」

「ドライブと洒落込むっすよ」


「おお!ドライブであるな!」


特に残りたい人も居なかったので、

俺達は4人でゾロゾロとマタタビさんの車に乗った。

ソレユさんはシートではなくトランクに腰掛けている。

一人だけ車外に乗るパターンのやつだ。


「こういう無駄な移動手段もオモムキというものがあるのでしょうね」


「走るのと大差はないであるが乗っているのは面白いであるぞ!」


(感想が辛辣だ…)


「じゃー出発するっすよ」


少々エンジンがかかるのに手間取ったけど、

俺達を乗せた車はポンスコと勢い良く走り出した。

なんとかセンターって、やっぱ街の一角にあるんだろうな。


「なんだか色々あって(主にツッコミ所が多くて)疲れたのでちょっと休憩しますね」


「うむ!そうするといい!」


シートにもたれ掛かって休む体勢になると、

ガチャガチャと何かを漁る音が聞こえてきた。

その後でバチンという音がしたかと思うと、大音量で音楽が流れ出す。


ずんちゃか!ずんちゃか!


「フォーウ!」←マタタビさん


「フォーウ!」←ガルさん


(や、休まらない…)

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