#48 集いし想い

ソレユさんに掴まれながら空中で静止して神界を見渡し状況を確認している。

円盤状の神界は大小様々な大きさで7つに割れちゃってるけど、

町に被害は無さそうな感じに見える。


「割れただけなら問題ありませんわね」


「このまま全ての破片が同じ速度で地上界と魔界の上を周回するならいいのだが」


「破片の大きさが違うから周回速度に変化が出そうってことですか?」


「うむ、そうなると一日中どれかの破片に照らされて夜がなくなってしまうかもしれん」


「夜というのも地上人にとって必要なものですの?」


「昼と夜を基準にして生きているのであるからして」

「それの入れ替わりは地上界の全ての生き物にとって重要なのである」


「私は地上界の生物を皆殺しにしてしまったのですね…」


「ま、まだそこまでは行ってないので皆でなんとかしましょう!」


「はい…申し訳ございません」

「私、初めて罪の意識というものを感じましたわ」


「ともあれ近場に降りて何者かに話を聞いてみようではないか」


割と残酷な発言が何度かあったから魔族の感情について謎だったんだけど、

罪の意識を持つなんて、人間らしい心が魔族にもあるのかもしれないな。

いつになく落ち込んだ様子のソレユさんを見てそんなことを思いながら、

近くに見えた町の駅近くへ俺達は降りた。


「この町は静山長しずやまながというそうであるぞ」←駅の看板で知って前フリをしてるガルさん


「ここが静山長でござるか〜!」


「久しぶりに聞けて満足である!」


「海賊島を観察してる時も言ったじゃないですかー」


「ソレガシは周囲を探索してくるのである!」←そんなことより周囲に興味が湧いた


「あはい、一応気をつけて下さい」


「この建物はなんですの?」


「これは駅といって移動する為の乗り物に乗る場所ですよ」


「駅…乗り物…移動…?」


よくわかってないソレユさんを尻目に、

来たことないのに、どこか懐かしい感じのする田舎駅に俺はちょっとテンションが上がっていた。

神界の町並みは誰かの想いから作られているので、

どこを見てもなんとなく絵になっているのが楽しい。


「あなたが救世主様ですね!」


背後から急に話しかけられたので驚きながら振り返ると、

そこには車椅子に乗った見知らぬ少年が居た。


「この方はネオ様といって救世主ではなくて異世界から来た凡人ですのよ」


「き、キタコレ!」

「ついにそういう展開きちゃった!」


「救世主様ではないのですか?」


車椅子の少年は不思議そうに俺の顔を見ている。

少年の憂いを晴らさなければなるまい。


「俺の名前はネオ!」

「君たちの世界を救いに来たんだ!」←カッコつけてるつもり


「やっぱりそうでしたか!」

「特徴的な剣を持った方が降りてこられるのが見えたので挨拶に来ました!」


「ネオ様は救世主様でしたの?」


「絶対そうですよ!」

「だって世界に崩壊の危機が迫った時、神剣を携えし救世主が現れるって!」


「そういう伝説があるのだな」←ガルさんじゃなくてカッコつけてるつもりの根尾


「もっぱらの噂です!」


「噂レベルなの!」

「それに神剣はこのダサいのじゃなくて、こっちだからね!」


俺は裁縫道具になっている神剣を剣にして見せた。


「ぼくはダサくありませんからね!」

「いじめはやめてください!」←上半身だけ犬モードになって喋ってるチャーリー


「わあ!喋る犬!」


(彼は神剣より犬に興味があるようだ…)


「なにやらよくわかりませんが」

「ネオ様が救世主なら話しは早いですわ」

「さっさと神界を修復してください」


「取り急ぎお願いします!」

「破片の一部が地上界に落下し始めているのです救世主様!」


「え?あー…落下?周回速度がとかじゃなくて、落下?」


「はい!人的被害が出る前に早く対応してもらえると助かります!」


「え、えーと、ちょーっと待って…」

「なんだ、あれだ」

「世界を救うのには俺のアビリティを反転させる必要がある!」


「反転?」


「反転ですの?」


全く意味不明といった顔で2人に見つめられている。

でも俺は苦し紛れに言い訳を捻り出したんじゃぁない!

俺はずっと考えていたのだ。

ワールドエンドは世界を終わらせるアビリティ、

ならそれを逆の効果に変えられれば!

世界を救うアビリティになるはずだ!


そう、ばあちゃんが言っていた。

「想いは叶う」と!


「ふっ、よく聞いてくれ!」

「世界を救うには俺と、みんなの想いを俺に集める必要があるのだ!」


「どんな想いですの?」


「もしかして今は救えないってことですか?」


「ぼくは散歩にいきたいです!」


「わ、わかんないかなぁ…」

「なんか、あるでしょ?そういうやつ!」


もう限界ギリギリみたいな状態になって突破口が開くやつを俺は狙っている。

そうなればアビリティの変化系統とやらが発動して、

ワールドエンドが神界を救えるアビリティに変化するんじゃない?


ガルさんとソレユさんが神界を救って俺は何もせず帰るなんて、

そんなこと…そんなことはさせない!

最終章の俺は一味違うぜ!

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