空を取り戻す者
犬柿りょーじ
プロローグ
昔々、空は青く、太陽という明るく光り輝く星が見えたそう。
昔々、空は黒いのに、キラキラとした点がたくさん見えたそう。
昔々、空に輝く、月というきれいな星が見えたそう。
――夜、母艦の一室。幼い少女の声が響く。
「ほら、アン、もう寝なさい」
「ママー! 私もきれいなの見たい!」
「そうね……私も見てみたいわ。ほら、もう寝なさい」
「うん! おやすみ! ママ」
母の目が、娘の後ろ姿をそっと見つめる。
目を閉じると、その奥にある覚悟を静かに噛みしめた。
「アン、私達があなたに、人類に太陽を、月を、星を……そして希望を……
見せてあげるわ……必ず」
「……行くわよ。ゼト、動ける人を集めなさい」
「わかりました。」
――司令室
「第一番隊から第五番隊、直ちに作戦本部に集合せよ!」
隊員たちが走り出す。緊迫した空気の中、ゼトが問う。
「ゼト……アンを頼んだよ」
「ユラ様はどちらに」
「なにいってんのさ……私もいかなきゃでしょ」
「あなた! 何を言ってるのかわかってるのですか!? あなたは人類の希望ですよ?
それを……それなのに!」
「……あいつらにだけ……あいつらを突撃させて! 私はそれを見てろっていうのかい?
そんなのはもうごめんだね。私も行くよ。あんたは残りなさい」
「しかし……」
「これは、最後の命令よ。黙って従いなさい」
「…………」
「ユラ様……必ず戻ってきてくださいよ」
――作戦本部。各部隊が集合した。
「第一番隊に次ぐ、防御隊形で構え、私の指示に従うように」
「第二番隊、第三番隊、あんたたちは母艦の護衛だよ。作戦通りにね」
「第四番隊、第五番隊、遊撃隊はあんたたちにしかできないね。任せたよ」
「ユラ様! 私達救護班はどうすればいいですか?」
「あんたたちは母艦に残って、護衛隊が怪我したときよろしくね」
「ではユラ様達は……」
「私達は守るもんないんだから、攻撃なんてよければいいだろ?」
「わかったなら、持ち場につきなさい」
「では、用意ができ次第発着ゲートNo.3に集合!」
「イエッサー!」
――発着ゲートNo.3。出撃の時。
「全軍、作戦を決行する。ただいまより母艦内での全指揮はゼトがすべてを引き継ぐ」
「出撃!」
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