第33話 私と心先生とりんご

 実家からりんごが届いた。

 何を隠そう、私の出身地は豪雪地帯・青森、そこにある津軽平野。

 バッチバチに雪が積もるのだ。

 雪に憧れる先生をいつか連れて行ってあげたいと思っている。

 私と一緒なら、埋もれる心配もしなくていいだろうし。

「先生、りんごどうぞ」

 というわけで、早速先生にもおすそ分け。

 うちの両親、親戚からもらったりんごをこれでもかと私に送って来るので、こうして職場内で配布するのが恒例となっている。

 りんごってみかんよりも長持ちするけど、かと言って、ポンポンと食べられるものでもないのでこうして分けるのが一番。

「ありがとー! 千夏の親戚のりんご、美味しくて好きなんだよね」

 先生はニッコニコで受け取ってくれた。

 ちなみに、先生には20個渡す。

 冷蔵庫で保管すれば一か月もつにしても、一人暮らしには明らかに多い量だ。

 けれど、先生はそんな心配をよそに、全てを食べきってくれる。

 勉強しながらそのまま齧るのが好きらしく、『手がべっとべとになるけど、丸齧りおいしいし集中力高まるからやめられない』と言っていた。

 先生の口の小ささを考えると、どうにもハムスター的な妄想が捗ってしまうのは致し方ないこと。

 一度でいいから見てみたい。

 先生がりんごを齧るとこ。

 なんてことを考えながら、先生の家へと一緒に歩く。

 さすにが、りんご20個を小柄な先生に持たせて帰らせるほど鬼ではない。

「いつもありがとねー」

 先生は、私の持つそれよりも少なく入れたりんごの紙袋を両腕で抱きかかえている。

 そこに添えられた笑顔には

「いえいえ、こちらこそ食べてもらって助かってます」

「青森っていいよねー。雪も降るし、りんごも獲れるし、弘前市内にはアップルパイのお店も多いし、りんご公園? なんてものもあるんだよね? あー、弘前公園の桜祭りも行きたいなー。もちろん、雪の降る季節にも行きたい!」

「……なぜにそんな詳しいんですか?」

 先生に青森情報はりんごというブツしか与えていないはず。

 どうして……。

「え、いつか千夏が連れて行ってくれるかなって思って、予習しているの。他の死だろうなー。千夏と青森旅行」

「な……! ま……!」

「ダメ?」

「……いや、ダメじゃないですよ。全然。いつか連れていきますね」

「やった! 楽しみにしてるね!」

 先生の足取りはりんごを持っているのに軽くなる。

 私は、そんな先生よりも少しだけ速度を落とし、りんごよりも赤くなっているであろう顔をなんとか見られないようにしながら、先生への家までの道を歩いた。

 たまに鋭いの、困る。

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