その25 ロリコンなので
「あ、僕はロリコンなので」
それが彼の口癖だった。
普通なら隠すことだろうが、彼は職場で公言していた。
もっとも、勤務態度に問題があったことは一度としてなかった。それどころか、他の男性社員よりもよく働いていたぐらいだ。
同じ職場で働く私は、同世代の彼に好意を寄せていた。
しかし、彼はロリコン。私に興味を抱くとは思えない。
実際に、女性社員が言い寄って断られたという噂を何度も聞いた。
もちろん、その時の理由も「ロリコンなので」の一言だった。
ただ、彼がどうそうなのかは誰も知らなかった。
会社の付き合いでそっち系のアニメやゲームの話をしたこともなく、所持品にもその気配は感じられなかった。
それでもたまたま女性社員だけになると、きっと彼の自宅は美少女アニメのポスターとかが貼ってあるんだろうと噂し合った。全く根拠はなかったが、それに嫌悪感を示す者も少なくなかった。
彼の家に行ってみたい。彼は独り暮らしだと聞いていたが、実際にそうなのか確かめてみたかった。
ある日、会社の飲み会で私は酔った振りをしてとうとう彼の自宅に上がり込んだ。
そこはすぐ近くのアパートだったから、口実にはちょうど良かった。
だが、上がり込むと違和感を覚えた。
あまりに簡素な部屋だった。
イメージしていたロリコンのオタクにありがちな美少女アニメのポスターやフィギュアなどは一切なかった。
「とりあえず、水をどうぞ」
彼が差し出した水を、私は一気に飲んだ。
どういうことだろう? ロリコンだと聞いたのにその気配は一片もない。
「ロリコンだというのは、本当なの?」
私は思わず聞いた。酒のせいかまぶたが重い。私はその場に倒れ込んだ。
「そうでも言っておかないと、あなたみたいな人が寄ってくるので我慢できなくなるんですよ。自分でも悪い癖だと思うけど、抑えられなくて……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます