《黎明の剣魔》〜最強魔剣士は人類の敵を討つ〜

麻宮 栞

第一章 第1話:「目覚め、そして選ばれし力」

まばゆい光に包まれる感覚が、ユウマの全身を貫いた。時間も空間も感覚も溶け合い、彼の意識は浮遊していた。


——次の瞬間、彼は地面に倒れ込んでいた。


ひんやりとした湿気が肌に触れ、土と草の強い匂いが鼻を突く。重たいまぶたを上げると、広がっていたのは深い緑の森だった。


「っ……は……ここは……?」


身体を起こし、辺りを見回す。空は青く澄み、風に揺れる枝葉が心地よい音を奏でている。しかし、見慣れない光景が、彼の本能に異常を告げていた。


制服はなくなり、代わりに身につけているのは黒を基調とした軽装の戦闘服。材質は不明だが、動きやすく、それでいて防御性も感じる。足元には革のブーツ。腰には二本の短刀が納められている。


「俺……死んだんじゃなかったのか?」


記憶がぼんやりと浮かび上がる。駅のホーム。線路に落ちた少女。突き飛ばされた感覚。そして、迫る電車のライト——


「……ああ、そうか」


呟いた瞬間、頭に直接響く声があった。


『ようこそ、新たなる世界へ。ユウマ。君は選ばれし者、すべての属性に適性を持つ者——“均衡を破る者”である』


声は天からでも地からでもない、内なる存在のようだった。次の瞬間、彼の脳内に大量の情報が流れ込んでくる。


この世界の名前は《アウルム》。

魔法と剣が支配する中世的世界。

魔法は大きく六つに分類される。


基礎属性:火、水、土、風


特殊属性:光(治癒・聖性)、闇(重力・引力)


さらに、基礎属性の組み合わせによって応用属性が形成される。例えば、火+風で《爆炎》、水+風で《氷結》、土+火で《熔岩》など。


ユウマはそのすべてに最上級の適性を持つ、“全属性適応者”だった。しかも、通常は一人に一つしか扱えないはずの特殊属性——光と闇——を同時に持つ存在。


『君には使命がある。この世界に巣食う“人類の闇”を討て』


声が消えると同時に、ユウマの胸の内に強い熱が宿った。


「使命、か……まったく。勝手に転生させて、勝手に選んだってわけか。でも……」


彼は腰の短刀に手をかけた。白銀に輝く刃には、精密な魔法陣が刻まれていた。握った瞬間、脳裏に戦闘技術が流れ込んでくる。


「面白いじゃねぇか。やってやるよ」


そのとき、茂みの奥から唸り声が聞こえた。現れたのは、猪のような魔獣ゴア・ボア。体長は2メートルを超え、牙は槍のように鋭い。


「……来るか!」


ユウマは跳ねるように前へ出た。魔獣が突進してくるのに合わせ、彼は重力魔法を発動した。


「《グラビティ・フィールド》!」


重力場が発生し、魔獣の足取りが鈍る。ユウマは一気に間合いを詰め、短刀を振るった。光魔法を纏わせた刃が、正確に魔獣の喉元を裂いた。


「ふう……っ。反応は……できるな」


死闘というよりも、動作確認のようだった。戦いが終わると同時に、彼の傷に光の粒子が集まり、癒えていく。


「自己回復まであるとはな……とんでもないチートだ」


冷静に戦果を見定めながら、ユウマは空腹を感じた。森を抜け、人の気配を探そうと歩き始める。


——この世界で、彼の物語が静かに始まった。

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